イケてる航空総合研究所

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ボーイングが計画しているNMAの開発はもうないと思う幾つかの理由。

737MAX生産停止の裏で

先日(2019年12月16日)、Boeingが737MAXの生産を一時停止するという発表をしました。ライオンエア(インドネシア)、エチオピア航空の事故を受け、2019年の3月から運航を停止し、航空会社への引き渡しも停止している737MAXですが、ついに在庫を抱え過ぎてしまい、生産を停止するに至りました。


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(737MAXを生産するボーイング・レントン工場の様子)

当初は年内にも運航再開と言われていましたが、予想以上に運航再開への承認が長引いており、現在400機以上の未受領の737MAXが地上に置かれています。これ以上の在庫リスクは抱えたくない、キャッシュフローの悪化は止めなければ、と言ったところが決断の背景でしょう。

というMAX騒動の裏で、実はボーイングはもう1つ大きな問題を内部で抱えています。そう、NMA(New Midsize Airplane)と呼ばれる新型機の開発です。MAX騒動の収拾に追われる中、ずっとこのNMAの開発のGOが延期されています。(NMAはBoeing797とも言われています)

米UAがA321XLRを発注

去る2019年12月3日、ユナイテッド航空がA321XLRを50機発注しました。2019年6月のパリエアショーでアメリカン航空A321XLRを発注しましたが、それに次ぐ米三大エアラインからのA321XLRの発注です。最近、ボーイングの苦境を尻目にエアバス機の攻勢が激しいですね。

米エアラインからのXLRの相次ぐ発注とは一体何を意味するんでしょうか?

ダイレクトにその意味を解釈するならば、757の代替ということでしょう。単通路機である757はアメリカの国内線の主力機、かつ大西洋線の低需要線の主力機。この757がもうかなり古くて引退時期が来ているんです。それで購入に踏み切ったというのが今回のユナイテッドであり、アメリカンであります。

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A321XLRはA321のeXtra Long Rangeバージョン。普通のA321よりもうんと遠くまで飛べるよう中央の燃料タンクを増やしたタイプです。10時間くらいのフライトまでならばギリギリ可能です。757の航続性能を凌ぐ性能を持っており、アメリカ国内線は余裕も余裕。大西洋線だってかなりの余裕を持って飛ぶことができます。757の代替を探しているエアラインにとっては、まさに渡りに船状態な機体なんです。サイズ的にもほぼ同等かやや小さい程度。リプレイスにはピッタリの機体です。

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JALが国内線用787を導入

もう1つ僕が気になるニュースがあります。それはJALが国内線仕様の787を飛ばし始めたことです。運航開始は2019年の10月末、発注はもっと前でしたが、実際に運航を開始したというニュースを見て、やっと実感し「そういうことか」と妙に納得してしまいました。


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(ボーイング・エバレット工場で製造中のJAL787国内線仕様機)

JALはこれまで787を国内線用には使っていませんでした。なぜなら787を国内線で飛ばすにはもったいなさ過ぎるからです。元々787はその燃費の良さから長距離路線に向いた機材です。そんな遠くまで飛べる高性能の飛行機をJALはあえて国内線には入れてきませんでした。

787を国内線からデビューさせ、国内線でも活躍しているANAとは全く異なる思想です。787のコンセプトからすればJALの思想の方が正しいでしょう。787を1~2時間程度の国内線に入れるなんて宝の持ち腐れとしか思えません。国内線で飛ばす場合、787の「キャパシティ」と「性能」のうち、「性能」は捨てているも同然なのですから。

そんなJALが国内線に787を投入したとは一体どういうことなんでしょうか?

つまり767の代替です(多分)。前述の757は767と同時開発された機体で、こちらも古くてガタが来ています。JALでは787の開発遅れの際に導入した新しい767も飛んでいるのですが、古い767をリプレイスしないことにはどうにもやっていけないんですよね。

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757の767の後継がいない

これまで述べた、ユナイテッドの757の後継としてのA321XLR、JALの767の後継としての787、これら両方ともボーイングにはジャストサイズの後継機がありません


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(デルタ航空の757)


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(JALの767)

この757、767後継機市場は薄い状態が続いています。座席数で言えば200~300席の間の市場です。ここに入り込もうとしているのがまだ姿形もないNMA(Boeing797)です。


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(ネット上でのBoeing797想像図)

標準型が220席、ストレッチ型が270席と言われ、ズバリ757(220席程度)や767(270席程度)の後継となる位置付けです。胴体は767と同じセミワイド、座席配列は2-3-2ではないかと噂されています。

しかしボーイングは、このNMA計画の発表を延期しています。737MAXの事故がなければきっと今年(2019年)には発表していたはずですが、現在BoeingではMAX以外にも777Xの初飛行延期など諸問題を抱えており、NMAの開発に着手できません。

MAX問題が終息に向かうと思いきや年内の運航再開はなくなり、来年のいつ運航再開できるのか見通せない状態が続いています。そんな中でボーイングは新機種の開発にGOを掛けられずにいるのです。

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遅れれば遅れるほど不利

新機種の開発は遅れれば遅れるほど不利です。それは競合他社が新機種を出してくるからです。まさにエアバスのA321の長距離バージョンです。

また、A321クラスとなるとLCCからの需要もあります。757のリプレイス需要ではなく、勢いのあるLCCが市場に攻め込むための機種としての機種です。従ってNMAの計画発表の遅れはLCCからの新規需要の取りこぼしにも繋がります。

一方の767にはまだ完全なる対抗馬はいませんので、ボーイングは早いところNMAを発表すればまだ挽回できるかも知れません。日米のエアライは特に767をたくさん保有しているため、狙い目はそこなんですよ。

特にデルタはNMAを欲しがっていると言われており大口顧客になり得ます。もちろんユナイテッドやアメリカンも大口顧客となるでしょう。JALの787国内線仕様もNMAがなかなか出てこないために採った苦肉の策にも思えます。JALはとりあえず4機を国内線仕様としていますが、今後の動向によってはもっと増やすかも知れません。

しかし遅れれば遅れるほど、767の代替需要も逃してしまいます。

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LCCはNMAを導入するか

さて、ここで考えたいのが成長著しいLCC。LCCはNMAを導入するのかについて。ここのマーケットの読みを間違えると、ボーイングはまたまた失敗作を作ることになってしまいます。

757、767のリプレイスと言えども実は数は限られていて、実際に大きなリプレイス需要としてあるのは日米のメガキャリアしかありません。旅客型の767をたくさん持っているのは今やほぼ日米のエアライン(ANA、JAL、ユナイテッド、アメリカン、デルタ)くらいですから。

となると成功の鍵を握るのがLCC勢となるんですが、これは非常に難しい市場と言えるでしょう。中型機を保有するLCCは限られているからです。例えばアジア地域ならば、エアアアジア、ライオンエアなどがA330、スクート、ジェットスターなどが787を運航しています。これらの比較的少数のエアラインが導入するかどうかが鍵になってくるわけです。

NMAはA330や787よりも小さいですが似ています。なるべく機種を少なくしたいLCCからすれば若干中途半端なサイズになります。

LCCが何故A330や787に偏るかって、それはLCCやFSCが皆その機材を導入しているからです。LCCには流動性のある機体が好まれるってことなんですよ。欲しい時に借りて要らなくなったら手放せる機体であることが必須条件です。A330や787は中型機の売れ筋であり、リーズ会社もこぞって買っている機体です。パイロットの採用、整備士の採用だって、人気のある機種の方がやりやすいですし。

LCCがNMAを導入するかと言う議論は、NMAがたくさん売れればLCCが導入しますが、LCCが導入しなければたくさん売れないという「卵が先かにわとりが先か」という議論になるんです。実績のある機体とは違うブランニューな機体は、ある意味賭けでもあります。

今のボーイングがそんな賭けに出られるでしょうか?確実に売れる保証がない限り、つまりローンチ前に「欲しい、欲しい」と群がる顧客が相当数いない限り、そんなリスクは取れないと思うわけです。

結局737MAX後継を作るのか

ここ最近、巷で騒がれているのがNMAの計画は白紙にして、737MAXの後継機を作るというもの。サイズが737と同じになるのかどうかは知りませんが、ここ1年のボーイングの苦境を考えると、NMAという全く新しい機体に賭けるのではなく、737MAXをやめて新しい737を作った方が確実かと思われます。767サイズの機体よりも737サイズの機体の方が、今も今後も需要が非常に大きいわけですから。

そんなわけで、今のボーイングからはきっとNMAは出てこないと思うわけです。その代りにBoeing797と名付けられるかどうかはわかりませんが、737みたいな機体が出てくるのではないか?と考えています。

2019年はボーイングにとって非常に悪い年となってしまった感がありますが、会社が潰れない限り新しい機体は絶対に出てきますので、その時を気長に待ちたいと思います。

(本記事はかなりの主観と想像が入っています。誰もまだNMA計画がなくなったとは言っておりませんのでご注意下さい。)

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