イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

日本の航空機産業の未来を大胆にも占ってみる

航空機産業の中心は中部地方

中部地方は日本の中でも特に航空機産業が発達している地方です。旅客機で言えばMRJの開発・製造拠点が小牧(県営名古屋空港隣接)にあり、787のコンポーネント(主翼、胴体などの部品)は三菱重工、川崎重工などの中部地方のメーカーで製造されてセントレアから出荷されています。軍用機で言えば、三菱重工が小牧でF-35の部分生産を行い、国産ステルス機の実証機X-2のを試作を行っています。また、川崎重工が岐阜基地に隣接する工場でP-1哨戒機やC-2輸送機を製造しています。そんな風に中部地方には日本の航空機産業が集中しているんですよね。

また、航空機産業への興味を深めてもらおうと博物館や展示施設の建設が最近急に活発になってきました。2017年の末に「あいち航空ミュージアム」がオープンしました。そして2018年の夏にセントレアに787を展示した複合施設「Flight Of Dreams」オープンします。それらの施設には、中部地方の子供たちに航空機産業への関心を持ってもらい、将来航空機産業へ進んでもらおうという狙いがあります。

これから航空機産業を目指す皆さんへ

世間ではセンター試験も終わり、受験シーズン真っ盛り。中学生は高校受験、高校生は大学受験、そして大学生は就職活動が始まりますね。飛行機が好きで将来、航空機を造る仕事に就いてみたいと考えている方々にとっては、将来希望する道に進めるかどうかが決まる重要な時期です。

僕のブログの読者の方々にどれだけ若い方がいらっしゃるかわかりませんが、今回は日本の航空機産業の未来を占う上で必要な日本の航空機産業の構造と、日本の航空機産業の未来の展望を書いてみたいと思います。

もちろん大人の方にも読み物として楽しんで頂ける内容ですよ。

世界の航空機産業は右肩上がり

ハッキリ申し上げておきます。航空機はこれからどんどん売れて行きます。未来は明るいです。このデータを見て下さい。


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(Boeing Current Market Outlook 2017-2036より)

これからいかに航空機が必要となるかよくわかります。新しい需要(Growth部分)があり、古くなった機体のリプレイス(Replacement部分)もあります。完全に右肩上がりです。


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(Boeing Current Market Outlook 2017-2036より)

これはアジアだけの予測ですが、サイズごとに見てみるとSingle Aisle(ナローボディ機と呼ぶ)がダントツで伸びることが予測されています(どの地域もほぼ同じ)。ナローボディ機とはボーイングで言えば737シリーズ、エアバスで言えばA320ファミリーを指します。大体120席から180席くらいのクラスの航空機のことです。

これを見ると日本の航空機産業もとても明るいんじゃないかと思いますよね。

それはちょっと違います。

ナローボディ機に弱い日本メーカー

日本の航空機産業にはある特徴があります。それは、日本の航空機メーカーである三菱重工、川崎重工、スバルなどが特にボーイングの大型機の部品供給に特化しているという点です。これらの会社は古くは767から、777、787とワイドボディ機の部品(胴体、翼などの構造部材)を米ボーイング社に提供してきました。一方で先ほど述べた737の主要部品は日本ではほとんど製造されていません。

つまり、日本の航空機メーカーはこれから需要がある機種の部品を全くと言っていいほど作っていないのです。金額ベースで考えるとナローボディ機の部品はたくさん作っても1機当たりが安く、ワイドボディ機は1機当たりが高いため、ワイドディ機は機数が少なくても儲かるという見方もできますが、それを考慮してもこれから主流となるナローボディ機のシェアには及びません。

しかも国内航空機メーカーの参加比率は787の35%という数字をピークとしてそれ以上上がる様子は見られません。部品供給の観点からは、将来売れる機数が少ない上に参加比率も少ないという状態が現在の構造です。次にボーイング社が開発する757後継機の797(NMA:New Midsize Airplane)の日本の参加比率をどれだけ取れるかにも懸かっています。

とにかく売れない日本の航空機

日本には航空機1機丸ごと作る実力があります。しかし仮に作ったとしても、売れなければ航空機産業は潤いませんので、日本で作った飛行機を輸出する必要があります。輸出です。日本国内で売るだけではだめです。海外に売らなければ儲かりません。

民間機で言えばMRJが輸出の筆頭となる機体ですが、ご存知の通り、安全性の認証(型式証明)という問題でかなりつまずいている状態です。MRJの開発の初期段階ではポンポンポンと受注が入り、あっと言う間にオプションを含め400機の受注を獲得しましたが、開発が完了しないことには売ることはできません。度重なる遅れは発注のキャンセルを促します。オプション分は容易に取り消せますので、発注機数が半分の200機程度に減ってしまう危険性をはらんでいます。さらにここ数年はほとんど受注が取れていない状況です。

また軍用機に目を移すと、川崎重工がP-1、C-2という海上自衛隊向け哨戒機、航空自衛隊向け輸送機の2機種を同時開発しました。また新明和工業もUS-2という飛行艇(救難艇)を海上自衛隊向けに開発しています。ただし軍用機は全て防衛省向け。日本国内で完結してしまうため製造機数は自ずと限られてきます。

日本は軍用機を海外には売った実績がないため、その実績を作るために、2014年に航空機を含む武器の輸出を実質禁止する「武器輸出三原則」が見直されました。その代りに「防衛装備移転三原則」なるものが策定され、軍用機の輸出が実質解禁されました。

この見直しにより川崎重工のP-1、C-2、新明和のUS-2を海外に輸出しようという動きが見られますが、新聞やネットニュースなどでポジティブに報じられている割には、受注獲得の話が一切出てきません。引き合いはあるものの、まだ1機も契約にこぎつけていないようです。

日本は小型の航空機でも大型の航空機でも1機丸ごと作る実力はあるのですが、なかなか海外に売れないというのが今の実情です。

やがて中国が世界を席巻する

ここで日本を離れお隣中国の事情をお話ししましょう。中国の航空機産業は今、本当に熱いです。

エアバス機が中国から出荷される時代

日本が部品すら作っていないナローボディ機ですが中国は真逆の状態です。中国にはエアバスのナローボディ機であるA320機の最終組み立て工場があります。さらに中国ではワイドボディ機であるA330の客室装備、塗装、飛行試験、引き渡しなど最終工程を担うデリバリーセンターも稼働しています。エアバス機が中国から出荷される時代になったんですね。

日本は航空機を1機丸ごと作る実力があるため、ナローボディ機でもワイドボディ機でも最終組み立てくらいは十分に可能ですが、コスト的な問題から中国には勝てないでしょう。そんな日本を尻目に中国はどんどん実力をつけていっています。

中国の国産航空機が羽ばたく日

先述の通り、中国は既に航空機メーカーの最終組み立て工場の地位を獲得しています。それだけではありません。中国では遂に自国でジェット旅客機を開発・製造する能力を手に入れました。ARJ21というリージョナルジェット機が2016年に就航しましたが、これは中国初の純国産ジェット旅客機です。僕も就航直後に乗りに行きました。

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勝手に想像していた時代遅れの航空機という感覚は全くありませんでした。とても標準的な航空機でした。そこが一番脅威を感じたところです。中国は既に世界標準の航空機を開発できる実力を持っているんです。

さらに今でA320や737と同サイズであるC919という航空機の開発を進めています。


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(C919/COMAC HPより)

進捗状況は思わしくないようですが、完成したあかつきにはこれまで世界を独占してきたボーイングとエアバスの牙城を崩すことになります。安さを武器に最もナローボディ機の需要の強いアジア市場に食い込んでいくことは間違いないでしょう。

将来が見通せない日本の航空機産業

本記事の前半に書いた通り、現在の日本の航空機産業には大きく2つの顔あります。1つ目は787に代表されるように部品メーカーとして顔です。2つ目は完成機を設計・製造できる航空機メーカーとしての顔です。残念ながらどちらの顔でも将来が見通せない状況です。

具体的に、部品メーカーとしては需要が非常に強いナローボディ機の部品を製造していないという点、航空機メーカーとしては完成機が売れないという点です。世界の航空機産業の未来は明るいというのに、日本の航空機メーカーの未来は意外や意外、暗いんですよね。個人的には、日本がやりたかった仕事を全て中国に奪われてしまった感覚を持ちます。

日本の航空機産業に必要なことは、部品メーカーとしての地位を保ち続け、かつ航空機メーカーとしての地位も保ち続けることです。もしくは航空機メーカーとしての地位を捨て、部品メーカーとして細々と生きていくかです。

エアバスはかつて欧州の弱小企業でした。しかし今では出荷機でボーイングを上回るようになりました。日本も航空機メーカーとしての地位を保ちたいのなら、それくらいのミラクルを起こすまで地道に頑張るしかありません。エアバスがかつてやったように日本政府によるトップ外交も必要でしょう。長年赤字を垂れ流す経営も必要でしょう。もしかしたら、航空機メーカーを日本で1社のみとし、ノウハウや資源をそこに集中させることが必要かも知れません。

部品メーカーとして生きて行く場合は、もう本当に、衰退は免れないでしょうね。

神風は吹くか

あとは神風に期待するしかありません。将来はナローボディ機の需要が強いと予想されていますが、もしかしたら航空需要が高まり過ぎて、ナローボディ機では過密状態となり、それぞれの地域内でもワイドボディ機をバンバン飛ばすような世界になるかも知れません。そうすれば大型機に特化した日本の部品メーカーとしての地位がは保てます。

また、MRJが大成功し、中国の航空機産業が転落すれば、日本にもチャンスが巡ってくることでしょう。MRJで得たノウハウを生かしてより大型の航空機を開発するのです。さらに軍用機の輸出が好調で、日本の軍用機が世界標準になれば、民間機、軍用機ともに日本の航空機メーカーとしての地位は急激に上がることでしょう。

しかしそれらの期待はやはり神風レベルですよね。「なにバカなこと言ってんだ」と一蹴されておしまいなビックリ予想の範疇です。

とにかく負けないように努力を

そんな冗談を言っているヒマはありませんよ。さあさあ、中国製はダメとかそういう先入観を捨てて、皆さんとにかく勉強して下さい。日本の航空機産業の未来は若い皆さんに懸かっているんですから!!!


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