イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

個室化したビジネスクラスが乗客同士の良質なコミュニケーションを奪う。

個室化が進むビジネスクラス

最近はビジネスクラスで個室化が進んでいます。個室化のパターンは2つ、スタッガードと呼ばれる互い違いのパターンヘリンボーンと呼ばれる斜めに配置するパターンです。


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(エティハド航空787のスタッガード配置)

どちらもプライベート感が非常に強く、そもそも隣に人がない(いても仕切られている)仕様になっています。

今回僕が乗ったのが羽田=金浦のアシアナ航空便。機材はA330、ビジネスクラスとは言え旧式の仕様で2-2-2という座席配置を採っている機材でした。その機材に乗って気付いたことがあります。


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一昔前まではビジネスクラスでも必ず隣の座席というものが存在しており、それがそのまま残っている機材です。時代遅れと言えば時代遅れの機材です。

隣に人がいないのが当たり前となったのはここ10年くらいの話。10年前はまだ隣のいるビジネスクラスが主流だったんですよね。

僕は自身のブログで毎回のように「隣に人が来ないといい」とか「隣に人が来たから狭かった」とか言っています。隣に人がいないということは、個人の旅行者にとっては隣の人に気を使わなくてもいいという点で非常に快適なんですが、今回「そうでもないときもあるな」と思ったので、一つの記事にしてみました。


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ピビンバのツウの食べ方を伝授される

先回お送りしたアシアナ航空のビジネスクラスの搭乗記の中での出来事です。

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僕が出されたピビンバをかき混ぜていると、隣の席のオジサマが突然僕に話し掛けてきました。初めは日本人だと思っていたのですが、バリバリの韓国人のオジサマでした。


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「あのー、すみません。ひとつだけ申し上げてよろしいですか?」

と非常に丁寧な日本語。

「ツウはスプーンでかき混ぜるんじゃなくて、箸を使ってかき混ぜるんですよ。」

「スプーンで混ぜるとご飯が潰れちゃうでしょ。箸だと時間が掛かって面倒なんですけどね…。」

と僕の「えっ!」というリアクションをよそに、オジサマはマイペースに話を続けてきます。初めビックリしたんですが、「あ、こういうのって素敵だな」と思い直しました。僕の食べ方を見かね、そして韓国人として正しい食べ方を教えてあげようと思い、僕に話し掛けてくれたんです。

僕は直ちに状況を理解し、「なるほど、確かに」と納得しました。僕はご飯を潰しながら混ぜていました。僕はすかさず持っていたスプーンを置いて箸に取り換えました。そしてご飯を食べながら談笑が始まりました。

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何者?韓国人オジサマ

突然話しかけてきたオジサマですが、僕が「オジサン」じゃなくて「オジサマ」とするのは、その人がとても紳士的で、ダンディで、知的で、物腰やわらかく、そして感じが良かったからです。

どうやらオジサマは日本で長年の駐在経験があるそうで日本語が超堪能。ほぼネイティブ並みの発音で、話し方にもほとんど違和感がありません。相当長く日本で暮らしていた様子が言葉遣いから読み取れました。

オジサマ曰く、日本に住んでいる間に辛いものが苦手になってしまったようで、「コチュジャンを少し入れただけでも汗が出ちゃって、ダメなんですよー」と笑います。なんと可愛らしいオジサマだこと…。

一通りピビンバの話やお互いの自己紹介が終わると、オジサマは僕に気を許したのか、ペラペラと話を始めます。

いきなり「韓国の政治家は本当に恥ずかしいですね」と慰安婦問題の話題を振ってきました。いきなりその問題は正直キツかったですね。日本でも批判的に報じられている慰安婦への賠償金だか謝罪金だかの問題に対して、日本人である僕に気を遣ってくれているように思えるんですが、逆に僕が気を遣っちゃって慎重に言葉を選んでしまいます。気を許したからって最初から慰安婦問題はちょっと反則ですよね(汗)。

挙句の果てには「金大中政権からの教育が悪い」とか言い出し、自国への批判を強めてくるから困ったもんです。僕、そんなに韓国の政治や歴史を知らないので、こればかりは「あ、そうですかー」くらいしか返答できませんでした。でも全く知らない韓国の内情を聞けたのはいい機会でした。

僕も話題を変えたかったので、「あ、そうだ」と思い出したように金浦から向かうウルサン(蔚山)という街について聞いてみました。「ウルサンってどんな街なんですか?」と。オジサマは「ウルサンは工場が多いですねぇ。確か、、、海沿いにたくさん工場がありましてね…」と言います。「ウルサンはソウルよりも所得が高いなんじゃないかなぁ、、、(水商売の)女の子たちはみんなウルサンに出稼ぎに行くくらいですから(笑)。」なんて話まで飛び出しました。

実際にその後ウルサンまで飛んでみて「オジサマの言うことは正しかった」と納得しました。アプローチコースの真下は数キロに渡って石油コンビナート、そして市街地には高層マンションが林立していましたから…。そして家に帰りWikipediaで確認するとオジサマの言う通りでした。

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今になって思うことは「オジサマはどこか有名企業の重役クラスの人なんじゃないかな?」ということです。「大韓航空のファーストクラスによく乗る」なんて言っていましたから普通のレベルの人ではないことは確かです。話の内容も非常にしっかりとした内容だったので、その辺の「酔ったオヤジ」とは絶対に違うはずです。名刺を交換するわけでもなく、雑談を小一時間しただけですが、僕が感じたのはハイクラスな人物と話ができるのは、「隣同士の座席配置」のビジネスクラスの特権だということです。

エコノミークラスでは当たり前のこと

せっかくなんでもう一つ話題を挙げておきましょう。以前、中部=台北でジェットスターに乗ったときの話です。

通路を挟んで隣の女性(50代くらい)に話掛けられました。一番後ろの座席が空いていたので、クルーに「後ろの座席に移っていいか?」と聞いた直後のこと、「実は私も後ろの席に移りたいなぁって思ってたんです」と。その女性とは「台北にはよく行かれるんですか?」とか当たり障りのない話を数分しただけだったんですが、隣同士の座席配置だと何かと話掛ける/話掛けられるというシチュエーションがあるわけです。

同じくタイガーエア台湾に乗ったときも僕が隣の台湾人に話し掛けて、少しだけ話をしたことがあります。エコノミークラスに座れば絶対に誰かと隣同士になりますので、必ず隣の人と話す機会があるわけです。

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個室化が奪う乗客同士の会話

そう考えると、隣同士の座席配置は機内でコミュニケーションをとるのに必須な配置なんですよ。エコノミークラスではそれが自然にできあがっていますが、ビジネスクラスでは、特に最近は、それが非常に難しくなっているような気がします。

アシアナ航空の機内で出会ったオジサマのような出会いって、本当はもっとたくさんあると思うんです。特にビジネスクラスの隣同士ならば、エコノミークラスの隣同士よりも良質なコミュニケーションを取れる可能性が高いんですよね。最近の個室化したビジネスクラスってその可能性をゼロにしてしまっているような気がします。

「昔は良かった」なんてことを言うつもりはありませんが、座席が今よりも快適ではく、個人スペースという概念すらなかった時代には、その時代なりの良さが確実にあったんですよね。

町内会や子供会にも入らない時代

最近は地域のコミュニティなどでも個人主義が強い気がします。昔って町内会や子供会とかって暗黙の了解で入会必須でしたよね。入らないなんて「村八分」同然だったじゃないですか。しかし最近は町内会にも子供会にも入る家庭の方が少ないみたいです。必然的にご近所さんとコミュニケーションをとる機会も減っていきます。

個人主義の時代、心温まる出来事だった

個人主義、実はとても楽なんですが、失うものもある。いや、得られるはずのものを得られないと言った方が適切ですかね?この旅では改めてそれに気付かされました。

今回、2-2-2という旧式のビジネスクラスに乗って、古き良き時代にタイムスリップして「そうか、これが乗客同士のコミュニケーションというものなんだ」と言うことを思い出しました。最後にオジサマに「色々とお話が聞けて楽しかったです」と言うと、「いやー、僕もアナタとお話しできて楽しかったですよ。」なんて言ってもらえました。個人主義のこんな時代に、なんだかとても心が温かくなった出来事でした。


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