イケてる航空総合研究所

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ANA787のTrent1000エンジントラブルよる大量欠航は念には念を入れた措置

トラブル続出のTrent1000

ANAの787に搭載されているTrent(トレント)1000というエンジンの問題で、多数の欠航便が出るという話、ANAにとっては「ロールスロイスさん、もう勘弁してよー」という感じでしょう。


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(Trent1000を搭載したANAの787-9)


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これが問題のTrent1000ですが、このエンジンは、結構トラブルの多いエンジンでして、毎度毎度ロールスロイス社から出される不具合の報告に、ANAは頭を悩まされていることでしょう。


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同じ787でも、JALはGE社のGEnxというエンジンを使用していますので、今回の不具合の件とは無関係。JALの787による運航便が一切欠航しないのはこのためです。もちろんGEnxにも問題があったことがありますが、ANAのTrent1000よりは随分とマシな気がします。

エンジンはどれくらい危険な状態なのか

今回の欠航便の多発は、787に搭載されているTrent1000のパッケージCと呼ばれるエンジンだけの問題だったのが、パッケージBと呼ばれるエンジンにも波及して、どうにもこうにも機材繰りが付かなくなったことが原因です。


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(エンジンが取り外されたANAの787-8)

FAA(Federal Aviation Administration:連邦航空局)やEASA(European Aviation Safety Agency:欧州航空安全機関)が出したAD(Airworthiness Directive:耐空性改善通報)を斜め読みすると、「まぁまぁ、無茶しなきゃ大丈夫なんでしょ」というのが読み取れて、エンジンの安全性に対し念には念を入れているんだなぁというのがよくわかります。

まずはこの問題に対して4月にFAAが出したAD(耐空性改善通報)から。

(FAAのAD2018-08-03の要約部分)

SUMMARY: We are adopting a new airworthiness directive (AD) for The Boeing Company Model 787-8 and 787-9 airplanes powered by Rolls-Royce plc (RR) Trent 1000-A2, Trent 1000-AE2, Trent 1000-C2, Trent 1000-CE2, Trent 1000-D2, Trent 1000-E2, Trent 1000-G2, Trent 1000-H2, Trent 1000-J2, Trent 1000-K2, and Trent 1000-L2 turbofan engines. This AD requires revising the airplane flight manual to limit extended operations (ETOPS). This AD was prompted by a report from the engine manufacturer indicating that after an engine failure, prolonged operation at high thrust settings on the remaining engine during an ETOPS diversion may result in failure of the remaining engine before the diversion can be safely completed. We are issuing this AD to address the unsafe condition on these products.

4月にEASAがTrent1000のパッケージCと呼ばれるエンジンに対してADを出しました。その後に出されたのがこのFAAのADです。

そして6月にEASAから出されたのが、今度はパッケージBと呼ばれるエンジンに対するADです。これを受け787を点検する過程で、亀裂が発生したエンジンが意外にも沢山見つかったためANAは欠航を余儀なくされているのだと思われます。

問題は中圧タービンブレードと呼ばれる部位。普通に飛んでいる分にはいいんですが、一発のエンジンが停止した時が問題のようです。飛行機は片発が停止しても問題なく飛行できるように設計されています。しかし片発が停止すると、もう片発の推力を上げないと飛べません。その継続時間がを制限するのが上記ADです。

最近の飛行機にはETOPSと言って、片発が停止した場合に飛行を継続できる時間が定められています。787のETOPSは最大で330時間ですが、Trent1000の問題を受け、FAAのADでは片発停止時の高推力の運転は140分に制限することを要求しています。しかし逆に言えば、「片発停止時に140分以上飛行すると、もしかしたらもう片方のエンジンも壊れてしまうかもよ」というレベルの問題なのです。

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ただ、6月に出たパッケージBに対するADは、4月に出されたものとは異なりますが、該当部位が中圧タービンブレードである点がパッケージCに対するADと全く同じため、同一レベルの不具合だと思われます。

若干の想像が入りますが、FAAのADを読む限り、Trent1000エンジンに直ちに安全性に問題があるというわけではなく、片発飛行時に2時間以上飛行したら危ないかも知れない、というレベルだということが読み取れます。

どうですか?この安全性の徹底ぶり。ひとたび不具合が発生すれば、飛行機はここまで徹底して不具合の処置を行うのです。飛行機は利便性よりも圧倒的に安全性重視。発生確率がかなり低いと思われる事象に対しても安全性を優先しています。

性善説の新幹線、性悪説の飛行機

唐突に新幹線の話題に移りますが、一見すると新幹線は安全性よりも利便性が優先されているように感じます。

台車の亀裂事故でも、異臭、異音に気付いていながらも走行を継続させました。また、車内での凶悪犯罪に対する防止策は実質なされていないというのが実態です。乗客全員の保安検査は現実的ではないですが、日本の同頻度の走行間隔で運行する中国の高速鉄道ではちゃんと手荷物検査をしており(ちゃんと見ているかは別問題として)、中国では利用者数の割に利便性を後回しにしている印象を受けます。

新幹線の場合は「事件や事故は起きない」という性善説に基づいている気がしてなりません。一方の飛行機の場合は「万が一でも事故は必ず起きる」という性悪説に基づいています。

もちろん、いざとなったら数秒、数分で停止できる新幹線と、いざとなっても何時間も飛び続けて安全に着陸しなければいけない飛行機を比較するのはナンセンスかも知れませんが、安全性に対する考え方にはまさに天と地の差があると思わされます。もちろん飛行機の場合は規則が厳しいため、万が一の事象に強制的に対応せざるを得ないという事情はありますが…。

繁忙期を控えた航空会社、利用者にとっては非常に困る問題なのかも知れませんが、今回のエンジンの一件は、ある意味、陸と空の安全性への考え方の違いというものを見せつけてくれた一件だと僕は考えます。

車のリコールと同じ

くどいかも知れませんが、今回のTrent1000による欠航便の多発は、ANAの航空機の安全管理体制に問題があるという話ではありません。ANAはFAAやEASAから出るADに基き(正確には航空局の耐空性改善通報に基づき)、ETOPSの制限や部品の交換を行っているだけです。簡単に言えば車のリコールと同じ。「無理な運転はするな、部品を交換しろ」とメーカーに言われたためにやっている処置に過ぎません。


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エンジンメーカーに言われたから、念には念を入れて安全に対する対策を施す。これが今起こっていることです。文句があるならロールスロイスに言って下さいね(笑)。


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