GoToキャンペーンの是非
東京を中心に新型コロナ感染が拡大している状況の中、政府が進めようとしていたGoToトラベルキャンペーンは東京発着が除外となりました。当初の政府の強引な方針に対し、「#GoToキャンペーンを中止してください」というハッシュタグがトレンド入りしましたが、やっと民意が届いた結果になりました。僕も旅行好きでありながら、不安な気持ちは非常によくわかります。「政府は旅行に行って下さいとは言うけれど、今はそんな状況じゃないし」という意見は至極まっとうだと思います。感染の状況を見ながらというよりも、とにかく7月の4連休前には開始したいという「実施ありき」で動いていたことは否めません。
ただ、僕は政府の方針をある程度理解しているつもりです。いや、旅行が好きだからそう言っているわけじゃななくてですね、、、仮にあのまま強引にGoToキャンペーンを進めていたとしても、あまり感染は広がらないんじゃないかと考えています。旅行よりもむしろお盆の帰省の方がヤバいんじゃないか?というくらいです。
何故か。今回はその辺りを独自の分析で解説したいと思います。
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政府がアクセルを踏む理由
GW前にはあれだけ外出自粛を叫んだ政府が、なぜ緊急事態宣言を解除した後から180度方針を転換したのか。「緊急事態宣言の再開も選択肢としてあり得る」と言いつつも、経済再開の手を緩めないのは何故か。まずはその理由から考えたいと思います。僕は、政府が強引なのは、政府が実行した実験の第一段階が終わったからだと思っています。どういうことかと言うと、「ある一定の自粛」を実行すれば感染者が激減するという実験が成功したということです。
政府は「暴走する車でもブレーキを踏めば止まる」ことを証明して見せました。それが緊急事態宣言だったわけですが、今でも政府はすぐにブレーキを踏める状態にあります。「じゃあ今度はアクセルを踏んでみよう」というのが今のフェーズだと思うのです。
そろりそろりアクセルを踏むと車はゆっくりと進みます。ブレーキを踏めば止まることを知っているので、あえてブレーキは踏みません。よし、じゃあもう少しアクセルを踏んでみよう。そんな風に経済との両立を目指して恐る恐るやっているのが今の日本政府だと思います。
次の夏は来るのか
航空業界、旅行業界という大きな産業がある以上、いつまでも移動自粛はしていられません。少しでもそういった業界に稼いでもらうのは国として必要なことだと思います。そして最も旅行の需要が高いのが夏なんです。この夏にGoToキャンペーンをやりたい理由も非常によく理解できます。直接的に航空業界、旅行業界に関わっていない人達は、「コロナ怖い」で済むんですが、そう言った産業に身を置いている人達からすれば、いつまでも「コロナ怖い」なんて言っていられません。だからこの夏に期待をするのです。この夏しかないんですよ。夏が過ぎればもう枯れるだけです。この夏がダメだと次の夏が来るかどうかわからない人がたくさんいるのです。
ちなみに下の写真は7月14日(火)に撮影した新千歳空港のANA FESTA(お土産屋さん)の様子です。
どうです?ここに一度でも行ったことがある人はわかるかと思いますが、平日でもこの店はレジ待ちが数人いるようなお店です。ましてやシーズンには店の外までレジ待ちの行列ができます。それがこの有り様。いかに旅行客が少ないかがわかります。
この光景を見た時、
夏の北海道は壊滅的だ
と危機感を覚えました。7月半ばであれば既に観光客で混雑する時期だからです。
あれだけ賑わいを見せていた新千歳空港、やばいですよね…。
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コロナ禍中の旅行は安定系
ここで一つ新しい考え方を提唱したいと思います。コロナ禍中に旅行をすることをシステムでとらえるとどうなるかです。システムには安定系と不安定系があります。
安定系とは釣り合いの状態から少しずらしたときに、元に戻ろうとするシステム、不安定系とは釣り合いの状態から少しずらしたときに、元の位置からどんどん離れていくシステム表します。
簡単に描くとこんな絵のような感じです。
ここで、コロナ禍の中旅行をすることが何故安定系なのかですが、今回の一件のように旅行に行こうとすると、今回のGoToキャンペーン反対運動のように、世論から「行ってはいけない」とブレーキを掛けられます。仮にGoToキャンペーンがなかったとしても、感染者が増えれば「県外移動は慎重に」となり旅行需要は下がります。すなわち感染者が増えると旅行客が減るという安定系だと言っているわけです。(感染者増→旅行客減→感染者減)
それでも旅行に出かける旅行者も、反対されていることを自覚しているため、現地での人々との接触を大きく避けることになります。
コロナ禍中の旅行派そもそもの旅行者が減るという安定と、旅行者の行動が抑制されるという二重の安定により、GoToキャンペーンをやってもあまり感染者は増えないと思うのです。
一方、不安定系というのはトイレットペーパー騒動を思い出すといいでしょう。感染者が増えると店が閉まる、外出できなくなる、など色々な思いが生まれ、一部の人達がスーパーやドラッグストアに押し寄せ、買いだめに走りました。すると、それまで傍観していた人たちまでもが買いだめに走ります。感染者が増えるとお店に人が増えます。
また、自粛期間に起きたのがスーパーやホームセンターの混雑。行くところがないために、人々は身近な施設を訪れます。それらがまさに不安定系です。(感染者増→来客増→感染者増)
ちなみに飛行機は基本的に安定系です。突風が吹いて機首が上がると機首を下げる方向に力が働き、元の状態に戻ろうとします。横に傾けば傾きを戻す方向に力が働き、水平な姿勢を保とうとします。そういう風に設計されているからです。
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お盆の帰省が怖い理由
僕が夏休みの旅行よりも怖いと思っているのはお盆の帰省です。GWに帰省を控えた人も多いと思いますので、この夏こそはと帰省を計画している人も多いのではないでしょうか。都市部から地方へ人が帰省すると、地方では確実に感染が広がります。そして家族でソーシャルディスタンスを保っているところは少ないと思いますので、帰省先の実家は、適度に距離を保つ旅行客とは比べ物にならないくらいの感染力をもつクラスターと化すわけなんですよ。
家族だから安心とか、家族だからマスクを取っていいとか、そんな変な話はありませんが、皆さん、家に帰るとマスクを外しますよね。「ふぅ、やれやれだ」と。
もしかしたら地方への帰省は不安定系なのかも知れません。都市部で感染が広がれば地方へ帰りたい人が増えます。ロックダウンされる直前、欧米の都市から人々が逃げ出したのはまさにそんな心理からでしたよね。
僕は「旅行はいいから帰省はやめて」と言いたいです。
また、自治体の長が「GoToキャンペーン反対」を口にするのも支持率上昇という裏の意図があるかも知れない点に注意が必要かと思います。さらに、帰省する人々による感染拡大を「GoToキャンペーンのせい」にすり替えようとしている可能性だってあるのです。ちょっとひねくれ過ぎかも知れませんけど。
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都合のいいスケープゴート
こういう不安が広がる社会風潮の中では「誰かを悪者にしたい」という欲求が無意識のうちに醸造されます。コロナが不安だ。日々感染が広がる中で一体この不安をどう解消したらいいのか。私はごく普通に日常生活を送っているだけなのに、気を付けているはずなのに、感染経路不明の感染がどんどん増えてくる。誰のせい?何が悪いの?
そこに現れたのが「GoToキャンペーン」です。「こんなに感染者が増えている状況下で旅行なんてけしからん」、「しかも国がそれを後押しするなんてなおさらけしからん」、「感染が広がるのは国のせいだ、国が全て悪い、叩け―!」と。
社会の安定には悪者が必要。
いつの時代も同じであることは歴史が語っています。
こういうのをスケープゴートというんですが、スケープゴートは強い相手であるほどよく、国に対して批判を行うのは最高に都合がよいのです。
旅行に行く人は結局行く
東京が除外されたことで、若干限定的なキャンペーンになりそうですが、基本的に国の方針としては、さきほど書いた通り「アクセルを踏み続ける」ことなので、GoToキャンペーン自体がなくなることはないと思っています。1泊4万円が半額になるのなら行かない理由がないですから(当初は半額ではないですが)。地方への感染に対する警戒感が広がる中、ガラガラの飛行機で飛び、空港からレンタカーを借り、部屋に露天風呂があるような旅館に泊まる。そんな旅行なら、地元の繁華街に行くよりも感染リスクは低いはずなので、僕は強くお勧めをします。
人がスケープゴートを作り出し批判を行う中、賢い旅行者はコッソリ動くんです。キャンペーン対象外となった東京都民の方々も、割引にならずとも旅行に行く人は結局行くんですよ。感染は広がるかも知れませんが、前述の通り旅行者よりも帰省者の方が感染を広げる危険性が高い。そんな構図はシステムの安定性を考えれば明らかなわけです。
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