イケてる航空総合研究所

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政府専用機とは一体どんな飛行機なのか。即位礼で羽田空港に飛来した特別機を解説する。

政府専用機の種類

先日から連載でお送りしている天皇陛下の即位礼で羽田にやってきた特別機(VIP機)たち。速報版ではとりあえず飛んできたものを順に掲載しただけですが、まともに解説できていませんでしたので、ここで何がすごいのか見どころは何なのか、そして政府専用機とはどんな飛行機なのかなどを詳しく解説したいと思います。

まずは政府系の特別機の種類について。直前まで「政府専用機」と呼んでいましたが、ここだけは「政府系の特別機」と呼ばせて下さい。それは必ずしも全ての国が政府専用機を持っているとは限らないからです。一概に政府系の特別機といっても色々と種類がありまして、それは以下の3つのどれかに当てはまるはずです。

  • ちゃんとした政府専用機
  • エアラインカラーの専用機
  • ビジネスジェットのャーター

では、解説をしていきたいと思います。

ちゃんとした政府専用機

「ちゃんとした政府専用機」というのは日本の政府専用機のようなもので、10月21日に飛来した特別機の中ではアラブ首長国連邦(UAE)の機体が代表的な例です。


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UAEには国内メガキャリアとしてエミレーツ航空とエティハド航空がありますが、それらの機体では来ず、ちゃんとした政府専用機で羽田に来ました。

UEAはお金持ちの国ということで、747や787を専用機として持っています。そして777も持っています(実は知りませんでした)。かなりたくさんの種類を持っている国だということでUAEは何で来るのか非常に楽しみな国でもありますね。


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UEAの777は塗装がいかにも政府専用機って感じがしていいですよね。窓に入る赤のライン。これをチトーラインと呼びますが、このチトーラインがすごく政府専用機っぽいんですよ。最近窓の部分に線を描くエアラインはほとんどありません。しかしUAEの777はあえて窓の部分に赤線。この昔ながらの塗装がマニア心をくすぐるわけです。

ヤバいです。

エアラインカラーの専用機

続いて政府専用機であるも関わらずエアラインカラーの機体があります。これはそのエアラインが国営の場合によくあるパターンです。


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カタールはカタール航空の747-8で飛来しました。カタール航空が国営のためです。カタール航空は中東御三家の1つと言われるかなり大きなエアラインですが、民間旅客用としては747-8を運航していません(貨物機の-8Fはあり)。

大型機としてはA380、次に777-300ERです。カタール航空自体は羽田でも見られますが、カタール航空塗装の747-8は特別な時でないと見られません。だからこそこの747-8が萌えるのです。(カタール政府はQatar Airways Amiri FlightでQ4という2レターを持ち、カタール航空QRとは別のものとなっています。)


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そんなカタールがプッシュバック。747-8はこれまでの747よりも胴体が長く、翼端のウィングレットを廃し、レイクドウィングチップにしているのが特徴です。そして747の最新型でありながら、1世代前の747-400より圧倒的に機数が少ないのもポイントですよね。元々レア度が高い747-8がカタール航空の塗装をまとっているときたら、それだけで垂涎モノなのです。

どうせなら、カタール航空塗装ではないもう1機の747-8(A7-HBJ)が来てくれても良かったんですが、贅沢を言ってはいけません。カタール航空塗装の747-8だって十分にイケてるのです。


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インドもエアラインカラーの747-400で来ました。エアインディアが国営であることに起因していると思われます。ただし、エアインディアは747-400を4機持っており、そのうち2機は普通の民間便として飛んでいる(と思われる)ため、むちゃくちゃレアな機体と言うわけではありません。

しかし、この時の便名がAI1。エアフォースワンならぬエアインディアワン。無線を聞いていなかったので、「ゼロゼロワン」なのか単に「ワン」なのかわかりませんが、見た目ではわからない便名を知ってしまうとこれまた「萌え」なわけです。「後から萌え」ですね。


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普通の747ではありますが、

まじで最高です。

ビジネスジェットのチャーター

最後に、今回意外と多かったのがこれ。よくよく考えてみると、どこの政府も政府専用機を持っているわけではありません。最近流行りのシェアリングをしているわけですよ。飛行機にも貸し出しサービスがありますので、政府の要人がそれなりに豪華な機体で遠くに出掛けたければ、そういう機体を借りればいいんです。飛行機ではこれをチャーターと呼びます。


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こちらは737-700BBJ(Boeing Business Jet)ですが、T7-PALという登録記号はサンマリノ籍。そしてオペレーターはArab Wingsという会社。で、乗っていた人はパレスチナ自治政府のアッバス議長というのですから、機体を見ただけでは国も分からず誰が乗っているのかもわかりませんよね。

チャーター機と言いつつ登録記号下三桁の「PAL」と尾翼に書かれた「PAL FLIGHT」という文字のがパレスチナ専用機かな?なんて疑いを持ってしまうのですが、調べると世界各地でパレスチナのアッバス議長が乗っている機体だという写真が見つかりますのでその可能性は高いです。

逆に、この辺りのよくわからない機体は、登録記号であれこれ想像するのが楽しいと言うこともできます。「政府専用機は謎めいていた方が萌える」という人は多いのではないでしょうか?


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こちらはHB-JJJという登録記号のA319。スイス/リヒテンシュタインの国籍です。塗装がいかにもビジネスジェットという感じです。アフリカのベナンがチャーターしたようです。なんとアフリカの小国となるとこのクラスの飛行機をチャーターして来るんですね。そういう運航形態は全く知りませんでしたので非常に勉強になりました。

というところまでが政府系の飛行機の種類です。それぞれに萌えポイントがあるわけです。そしてこの辺りは個人個人で好みがわかれるところでもあります。僕はやっぱり「ちゃんとした政府専用機」が好きですね。

さて、次はちょっと技術的な話に移りましょう。

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みんな胴が短くて足が長い

胴体が長くて足が短いという意味の「胴長短足(どうながたんそく)」という言葉がありますが、政府系の飛行機の場合はその言葉の逆、「胴短長足」(読み方わかりません)という言葉がしっくりきます。


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ニジェールの政府専用機のマーキングがニジェールの国旗の色で萌えるぜ!というマニアの戯言は置いておいて、ちょっと真面目な話をすると、この機体、ボーイングのベストセラー機737という機体なのですが、700型という短いタイプです。


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こちらはA318と言って、エアバスのベストセラー機A320ファミリーの最も短いバージョンです。

政府専用機では胴体が短い機体が多いです。どうしてかって?それは胴体が短い飛行機ほど遠くまで飛べるからです。軽い分、航続距離が長いんですね。これが「胴短長足」と言った理由です。(足が長い=遠くまで飛べる)

ボーイングは737-700をBBJ(Boeing Business Jet)と名付け、エアバスはA319やA318をACJ(Airbus Corporate Jet)と名付け、ビジネスジェットとして売っています。世界のどこへでもなるべく早く行きたい人達に求められるのはキャパシティよりも航続距離ですので、胴体が短い機体が政府専用機に選ばれるわけです。

最近の大型機は燃費が良くなったおかげで航続距離が飛躍的に伸びましたので、短い機体は珍しくなりましたが、一昔前は大型機でも政府専用機は胴体が短い機体が選ばれていました。短いジャンボ747SPはその最たる例ですよね。(僕は見ることができませんでしたが、即位礼の目玉飛来機としてオマーン政府の747SPが話題になっていました。)


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ちなみに中型機でも同じことが言えまして、スペインがA310(スリーテン)を飛ばしてきました。元祖エアバス機A300の胴体を短くして、ついでに翼型を変更したのがA310です。こちらも胴体が短い分、遠くまで飛べるため当時はVIP機として採用する国がたくさんありました。しかし今となってはかなりレアな部類。そのためこの機体はとても貴重なのです。

ダメ押しですが、↓こちらはブラジルの政府専用機。


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この機体はVC-1Aと言う特別な名前が付いています。でもわかる人が見れば単なるA319ACJです。最大離陸重量(MTOW)で8,500kmを飛べます。このサイズの機体にしては圧倒的な後続距離です。さすがにブラジルから日本だとワンストップでも厳しいかも知れませんが、このサイズの機体としてはよく飛べる方なので、ツーストップで日本まで飛んで来られれば上出来でしょう。

通常のエアラインであれば、最近は特にたくさんの乗客を詰め込むために、航続距離を犠牲してでも胴長の機体を選ぶ傾向にありますが、政府専用機はお金儲けをするための機体ではなく、可能な限りノンストップで目的地へ行きたい機体ということで、航続距離が長い機体が選ばれる傾向にあります。政府はエアラインとは真逆の発想で機体を選んでいるわけです。

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圧倒的に4発機が多い

また、政府専用機は圧倒的に4発機が多いです。カタールインドのように4発機の747を使用しているのもそうですし、ドイツだって4発機のA340、サウジアラビアだって同じくA340で飛んできています。21日には来ませんでしたがTwitter上ではクウェートのA340も話題になっていました。

さすがに小型機で4発機というのはほとんどないので、どうしても双発機になってしまいますが、大型機では4発機で飛ばしてくる国が多いです。


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これには確固とした理由があります。4発機は安全性に優れているからです。双発機で1発エンジンが故障したとすると、残りは1発。それで目的地まで飛行するのは不可能ですので、どこかに緊急着陸をしなければなりません。鳥衝突などで2発同時停止という事態もあり得ます。

一方4発機では、1発が故障しても残りが3発も残っているため、運航規程にもよりますが、設計上そして確率的には安全に飛行を続けることができます。エンジン数が多いことはそれだけで安全性が高いのです。

従って、何が何でも目的地に定刻で着かなければいけない政府専用機には、多くの国で4発機である747やA340が選ばれています。ただ、最近ではエンジンの信頼性がかなり向上しているため、双発機が政府専用機に選ばれることが多くなりました。

日本の新しい政府専用機は双発の777-300ERを選定しましたよね。UAEだって777で来ました。現状、4発機を運航する国は多いですが、これまで常識だった「政府専用機と言えば4発機」という通説は崩れつつあります。

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即位礼前日の羽田空港

さて、ここで即位礼前日の羽田空港の様子をご紹介しましょう。ピリピリした雰囲気かな?と思っていたんですが意外と平穏でした。


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ターミナル2の中の様子。


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ニュースで見る羽田空港より平和な感じがしました。


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しかし外では警備が厳しかったです。トヨタレンタカーの送迎者に警察が寄ってたかって何かをしていました。怪しいものを積んでいないか検査しているようでした。


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驚いたのは、ゴミ箱が封鎖されていたこと。どこにもゴミを捨てられないんですよ。どうやって捨てようかと困っていると、「ゴミ箱を封鎖しているので、カートを持った係員が巡回しております」と放送が入りました。なるほど、人間が混み箱を運べば不審物は排除できると考えたわけですね。


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というゴミカートはすぐに見つけることができ、僕もごみを捨てさせてもらいました。

もう一つ、前回も書きましたが、21日にはかなりの数の特別機が飛来するため、サテライトターミナルを閉鎖してVIPターミナルとして利用していました。


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サテライト行きのバスが発着するところは閉鎖されていました。

そしてターミナル2では51番、52番も閉鎖していたため、5つも使えないスポットがあったわけです。そのため、21日は計画運休を行っていました。スポットの数が足りないですし、特別機が離着陸するときはそちらが優先になりますから、通常通り運航すると遅れまくってどうにも回らなくなるからです。

羽田空港全体で36便が計画的に欠航。特別機の飛来頻度からすると仕方がない措置だと思いました。おかげで意外とスムーズに運んだのではないでしょうか?

僕が乗った中部発のフライトも、中部行きのフライトも完全なる定時運航。ラウンジからブログ書いていたので「頼むから遅れてくれ」と思ったんですが、全く遅れずに出発したので焦りました。ギリギリまでラウンジにいたためゲートまでダッシュ。乗り込んだ時にはほとんど最後の乗客でした。

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地方もおこぼれがもらえる

最後に。羽田に到着した特別機は羽田に停めておくのかって疑問が湧きませんか?そんなに停めるスペースあったっけ?と。答えは、そんな場所はないのでどこかに飛んで行くしかありません。その行き先が関空であったり、新千歳であったり、セントレアであったりしたんです。

中部発羽田行きの飛行機に乗る前にセントレアのスカイデッキから撮影したのがこちら↓


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オーストラリア空軍の737-700スロベキアのA319がいました。みんな停めておけるところにフェリー(回航)されるんです。なので、東京で行われる即位礼と言えども地方の空港はそのおこぼれをもらえる格好になります。僕が上で貴重だと書いたスペインのA310は、あの後セントレアに飛んで行ったみたいです。

しかもセントレアには南アフリカ航空のA340が。


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しかも-600というまたまた萌えるタイプです。4タイプあるA340の中でも最も胴体が長いタイプで、スラッと美しい姿にファンが多い飛行機です。これは今回の即位礼とは関係なくラグビーワールドカップの特別機だったようで…。

一般の人向けに

実は羽田に行った当日にアップした速報版のはてブコメントで、「こんな楽しみ方があるなんて知らなかった」とか「なにがどう違うのか」とかといった内容のコメントをたくさん頂いたんですよ。「そうか、一般の人には意味も価値もわからないのか。」と当たり前のことに気が付いたんです。

↓速報版はこちらの記事です。

flyfromrjgg.hatenablog.com

ですので精一杯、政府専用機と言うものの萌えるポイントや、機体の特徴を解説してみました。

飛行機のことをほとんど知らない方に向けた説明は非常に難しいですが、少しでも魅力を伝えることができたら嬉しいです。これを機に飛行機好きになってもらえればこれ以上の幸せはありません。

たくさん「はてブ」やRT(リツイート)をしてもらったお陰で、即位礼の前後では信じられないくらい多くの人に速報版を見てもらい、あの日羽田空港に行って本当に良かったと思っています。今回は各国の政府専用機がテーマとなっていますが、それだけではなく広く旅客機の魅力、そして旅客機に乗ることの魅力をもっともっとこのブログで発信していけたらいいと思いました。

これにて即位礼の特集はおしまいです。お付き合い頂きありがとうございました。

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