魅惑のロイヤルヨルダン
ロイヤルヨルダン航空と聞いて、パッと機体の塗装を想像できたなら、きっとアナタはマニアです。ロイヤルヨルダンはその名の通りヨルダンの航空会社なんですが、日本には定期便が飛んでいないので、知らない人も多いんじゃないでしょうか?僕とロイヤルヨルダンとの出会いは名古屋空港時代に遡ります。中学生の頃(25年くらい前)、ロイヤルヨルダンの飛行機がチャーター便として名古屋空港に飛んで来ていたんですよ。
あれ?それはガルーダとロイヤルヨルダンのハイブリッド塗装でしたっけ?なんだか記憶が曖昧ですね。まぁいいや。
当時の機材はL-1011トライスターでした。しかも短胴型の500。滅多に見られないロイヤルヨルダンがトライスターの500を飛ばしてきたとなれば、中学生の僕が興奮しまくらないわけがありません。当時の写真はどこかに行ってしまいましたが、大人になってもロイヤルヨルダンへの憧れだけは持ち続けていました。
もうひとつ、ロイヤルヨルダンの飛行機を東南アジアや北米の空港で幾度となく見かけたことがあります。それ以来、僕は「ロイヤルヨルダンに絶対乗りたい!」と強く思っていました。僕にとってロイヤルヨルダンは魅惑のエアラインだったんです。
そんなロイヤルヨルダンに乗ってきました。乗った路線はクアラルンプール(KUL)からバンコク(BKK)です。
ヨルダンと全然関係なくない?
って思いますよね。おっしゃる通りなんですが、そう言うこともあるんです。わざわざヨルダンまで行かなくても乗れるんです。
以遠権フライトってなあに?
こういうのを以遠権フライトなんて呼びます。本来なら自分の国(ヨルダン)と相手国の間で飛ぶ、つまりアンマン-バンコクで飛ぶんですが、バンコクから先、マレーシアのクアラルンプールまで足を伸ばしているんです。このバンコク-クアラルンプールが以遠権区間になります。こういうのは日本でもありますよね。デルタやユナイテッドがやっています。北米から成田を経由して上海までとかバンコクまでとかまで飛んでいるヤツです。成田-上海や成田-バンコクがまさに以遠権区間にあたります。相手国を経由して第三国まで飛ぶ区間のことを指します。
バンコクからはKLと香港に飛べる
ちなみにロイヤルヨルダンはバンコクを経由してクアラルンプールにも飛んでいますし、香港へも飛んでいます。曜日でクアラルンプールに飛ぶか香港に飛ぶかが変わります。しかも両路線とも機種は最新鋭の787。どちらの路線で乗ろうか迷ってしまいますよね。バンコク-クアラルンプールは2時間10分のフライトで2万円弱、バンコク-香港は2時間50分のフライトで3万円強です。
調べた範囲でのビジネスクラス最安値をそれぞれ書いておきますと、、、
BKK(16:55)-KUL(20:05):約3万1千円
KUL(22:10)-BKK(23:20):約1万8千円
BKK(16:15)-HKG(20:05):約3万3千円
HKG(21:35)-BKK(23:25):約3万6千円
といった感じになります。僕が乗ったクアラルンプール-バンコクが一番お得ですね。(これよりも安い場合がある可能性があります。)
冗談はよしてくれ
クアラルンプール発の時刻は22時10分、バンコク着は23時20分です。KUL発の便はかなり遅いです。ロイヤルヨルダンって基本的に黒い飛行機なので、夜の撮影はかなり困難を極めます。
特別な撮影機材を持っていないので、どうしても室内の反射が入ってしまうんですよね。
機体のベース塗装は正確には濃いグレー、そこに金色と赤色の帯が入っています。帯の雰囲気が何となくシンガポール航空に近い気がしませんか?やっぱ、よるだんから(夜だから)わかりませんかね?
ジョーダン(Jordan)よしてよー!
なんてダブルで冗談を言いたくなりますよねー。「ロイヤルヨルダン=冗談王国」ですからね。
これひとつ言いたいがために、色々と悩みました(恥)。
壁がなくて広いキャビン
「室内の光が反射してどーにもなんないー!」と搭乗口から遠く離れて写真を撮っていたら、一番に乗り込むことができませんでした。仕方なく諦めてのんびり搭乗。ボーディングブリッジがL2に付けられていたので、L2から機内に入りました。じゃじゃーん!ロイヤルヨルダン787の機内です。
むっちゃ広くないですか?
イスラム圏の写真撮影ルールがよくわからないのでぼかしてありますが、この広さ、感じて頂けますか?
ドアを入ると普通は左右に壁があって、通路を入るとキャビンがあるのですが、ロイヤルヨルダンの787では、左側(ビジネスクラス)に壁がなくいきなりキャビンが現れるんですよ。あと、真ん中にオーバーヘッドストウェッジがないんです。それもあってものすごくキャビンが広く感じます。
最初入ったとき、うっそ、ひろっ!って思わずボソッと言っちゃったほどです。
僕の席は3A。2-2-2の配置なんですが微妙に左右の位置がずれているタイプですね。タイ航空の787も同じ仕様になっています。この2-2-2の座席配置だと、隣に人が来ても普通の2-2-2より幾分かマシなんですよ。左右がずれている分、プライベート感が若干上がります。
早速フラットにしてみましょう。上空ではフラットにするチャンスが訪れないかも知れませんからね。(事実、フライト中にフラットにするタイミングを逃してしまいました。)
2-2-2でありながらフルフラット。最近では当たり前になりましたが、一昔前だったら2-2-2の場合はライフラットという斜め180度のシートでした。
時代は変わりましたね。今や隣がいる席でもフルフラットは常識です。ライフラットのままにしておいたらお客さんが「シートが古い」とか言って離れて行ってしまいそうです。
隣ともずれていますし、2-2-2のひとかたまりの2もずれていますので、2-2-2でもプライベート感があります。ホントこの2-2-2はよく考えたと思います。
ビジネスクラスの客は半分以下の搭乗率でした。隣が来ない2-2-2っては最高です。1人の占有スペースが他のタイプのシートよりも広くなりますからね。
自席から人が写らないように撮ってみました。中東のエアラインにはあまり乗ったことがないので、よく事情を知らないんですが、人って写してもいいんでしょうかね?なんだかすごく気を遣いました。
搭乗時にもっとたくさん写真を撮りたかったんですが、機内ではオジサンたちがみんな立ち話をしているんですよね。後ろからキャビンを撮ろうにも、前を向いて座ってくれないと写真に写ってしまうのですごく困りました。
あと整備の人と交代のクルー?が座席に座って話し込んでいたりもして、機内は混沌とした状態になっていました。搭乗時に機内の様子を撮るのが他のエアラインよりもうんと難しかったです。
ベッドになるとここに足を潜り込ませるわけですが、さすがにちょっと狭いです。
座ってみると何だか窓の位置が少し高い気がしました。
配られたイヤホンケースにもロイヤルヨルダンの王冠ロゴが付いています。
お姉さんが親切過ぎた
ウェルカムドリンクを持って僕の座席にやってきたのはこのお姉さん。カメラを向けると素晴らしい笑顔を見せてくれました。なんだかこちらが嬉しくなっちゃいます。
ロイヤルヨルダンには赤いスーツのクルーと、ピンクと黒の民族衣装を着ているクルーの両方がいます。民族衣装の方は写真撮影禁止らしくて、撮ったらダメと言われましたが、このお姉さんには「撮ってもいいよ」と言われました。
そしてロイヤルヨルダンでは普通のウェルカムドリンクに引き続き、こんなサービスをしてくれます。
アラビックコーヒー!
さすがアラブ諸国のエアラインですよね。
アラビックコーヒーと普通のコーヒーは何が違うかって?アラビックコーヒーは簡単に言うと、コーヒーにスパイスが入ってます。調べてみるとカルダモンが主流のようなので、簡単に言えばカレー味なんですよ。
香りの強い飲み物としてはジンジャーティーが近い気もしますが、ジンジャーよりもより香りが強い感じですかね?嫌いな人は嫌いかも知れません。でも慣れるとこれがまた美味しいんです。
一口飲んだらアラブ世界にワープしちゃう感じですよ。
うぉー!ヨルダンだぜー!
って感じです。
世界標準の中にもアラブらしさが
エミレーツ、エティハド、カタールが中東御三家なんて言われてますけど、この3つはアラブのエアラインだと言っても、世界中どこへでも飛んで行っているので、あんまりアラブのエアラインっぽくないんですよね。完全にグローバル化された標準的なエアラインになりつつあります。その点ヨルダンはまだアラブ色の強いエアラインです。路線展開がまだまだローカルですから。
そのことはモニターを見ているとすごく良くわかります。
アラブのエアラインの特徴は帽子ですけど、まだまだそんなにアラブっぽくないです。
セーフティビデオは3Dアニメで出来ていまして、最近流行りのコミカルなヤツでした。この辺りまではアラブっぽくないです。グローバル流れを汲んでいます。
ここまで来るとかなりアラブっぽいです。セーフティービデオに続いて離陸までの間にヨルダンの観光ビデオが流れるんですが、これがまたすんごくいいんですよね。むちゃくちゃヨルダンに行きたくなる。ホント良くできたビデオだったと思います。
何というか、中東御三家エアライン(UAEとカタール)とは違って、ヨルダンには「人工的に造られていない」観光資源が豊富にありますので、それがウリなになるんですよ。「なんでこんなにローカル色を強くできるんだろう?」と思っていましたが、それは自国に歴史ある観光スポットがたくさんあるからなんですよね。
機内エンタメプログラムの中には普通に映画もあります。この辺りは特にアラブっぽくはありません。
これはむっちゃアラブですね(笑)。言語選択でアラビア語を選んでいるだけなんですけどね。
ってなわけで、ロイヤルヨルダンはグローバルなサービスの中にすんごく強いローカル色を込めたエアラインなんですね。世界標準的でありながらアラブの世界を詰め込んだって感じがします。
ビジネスクラスのお食事は野菜メイン
ブロックタイムは2時間10分ありますが、実質の飛行時間は1時間半しかありません。ベルトサインが消えると早速お食事が始まります。ビジネスクラスの食事はこれ一皿です。ちょっと少ない気がしますが、フライト時間が1時間半しかないのならば仕方がないですよね。
イスラム圏のエアラインだからということなのか野菜中心のヘルシーな食事でした。サーモンの塩辛さが、疲れた体に染みわたりました。
こちらは食後のコーヒー。アラビックコーヒーではない普通のコーヒーですよ。アラビックコーヒーのように特に癖もなく、ごく普通のコーヒーでした。
クルーのホスピタリティに感動
搭乗時にアラビックコーヒーをもらったときに、その写真を何度も撮らせてくれたんですが、機内が暗くて僕が何度も失敗していたので、気を遣ってくれたのか、食事が終わった後にクルーが僕のところまで来てくれました。「写真撮られますか?」
と。
「いやーすいませんすいません」、と明るい場所を探して撮りまくってました。でもご飯の後の方が搭乗時よりも機内が暗くて撮りにくいんですよね。結局自席の読書灯が一番明るいという結論になって自席(の隣)で撮らせてもらいました。
上手く撮れたのがこれ。ポットが小さいのですぐに満タンになってしまうんですよ。でも、あえてカップを2つ持って来てくれているんです。一個満タンになったら次のカップという風にやってくれるわけですよ。
「そこまでサービスしてくれるんだー。」って凄く嬉しかったです。乗りヒコたちの心を鷲掴みにするサービスに、ロイヤルヨルダンの大ファンになってしまいました。短いフライトなのに、クルーのホスピタリティをいっぱい感じられたんです。
正直なところ、ロイヤルヨルダンは中東御三家よりも格下だと思っていたのですが、そんなことはなく、むしろ上なんじゃないかって思ったくらいです。
もっと楽しみたかった
クアラルンプールからバンコクまではホントにすぐ。名古屋-札幌くらいの感覚です。すぐに着いてしまいます。こんなに短いんですから。
キャビンも暗くされてしまうので、キャビンの写真を撮りたかったら搭乗時を逃すと他にはタイミングはありません。
やはり広いですよねー。
ドアのところに壁がないので、何だかモックアップを撮影したような構図が出来上がってしまいます。天井が高いのはオーバーヘッドストウェッジがないからですよね。787のビジネスクラスキャビンならではの光景です。
なんてやっている間にフルフラットにするのを忘れてしまってベルトサインが点灯してしまいました。寝転ぶことも出来ず仕舞いです。
まもなくバンコク、左手遠くにバンコクの街が煌々と輝いていました。
オレンジ色の中に吸い込まれて行くように、静かにスワンナプーム空港に着陸。
終始色んなことに構ってくれたお姉さんにお礼を言って、名残惜しく降機したわけですが、本当はもう少し乗っていたかったですね。1時間半のフライトじゃ全然物足りないです。
クルーのサービスが一番印象に残った
さて、今回ロイヤルヨルダンに乗って一番に感じたことは、クルーのホスピタリティの高さ、優しさでした。ウェルカムドリンクを持って来てくれたときからお姉さんの笑顔にくぎ付けでした。その後も、ことあるごとに笑顔で話し掛けてもらって、なんだかすごくいい気分で乗っていられました。極めつけは、食後にアラビックコーヒーを持って来てくれた「写真撮られますか?」事件。こんな素晴らしいサービスをしてもらったのは過去を振り返ってみてもほとんどありません。
印象は製品ではなく人で決まる
ということを強く感じさせるフライトでした。プロダクト(製品/座席)が良くてもサービスが悪ければ、印象はガタ落ち、もちろんロイヤルヨルダンのプロダクトは良いですよ。2-2-2でも最新のシートを入れていますので座席に対して文句はありません。ロイヤルヨルダンはプロダクトもいいし、サービスもいいしで、文句のつけどころがありませんでした。
いや、ジョーダン抜きで本当です。ロイヤルヨルダンは本当に素晴らしいエアラインです。
香港まで行けば乗れますので、皆さんも是非是非その魅力を体験してみて下さい。ビジネスクラスに3万円台で乗れますので、もちろんビジネスクラスに乗って下さいよー。
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