イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

旅客機に貨物機に引っ張りだこ。素晴らしい人生を送るボーイング767という航空機。

旅客機の生き残り方

一般的に飛行機というものは車と違って、20年~30年と飛んでスクラップになるというのが通例です。車だと10年くらい、いやもう少し早いサイクルで乗り捨ててしまう傾向にありますが、飛行機は車に比べても非常に高い安全基準の下に運航・整備を行っているので、過酷な条件で運航されている割に車よりもうんと長持ちします。

飛行機はウン10億円、ウン100億の高い買い物ですから丁寧に長く使うんですよね。嫌元々、飛行機は丁寧に使わないと飛べません。耐空証明、車で言うところの車検が厳しいので航空機の品質は国によって若干差はあれど、基本的にどの国でもかなりの高水準に保たれています。

MRO会社の存在

旅客型として古くなった機体は貨物機に改修するという用途があります。中古市場で旅客型の機体を買い、貨物機へと改修(コンバート)して使うのです。もちろん貨物機として人気のない機種もありますが、旅客型としては古すぎて使うのに耐えがたい古い機体でも貨物機としては十分に使い道があります。旅客型として30年生きた選手が貨物機に改修されて40年選手になることすらあります。


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↑の写真はバニラエアで台北から那覇へ飛ぶときに窓の外から見た景色です。台湾は世界的に見ても航空産業ではかなり高度な技術を持つ国です。航空機製造となると少し弱いですが、航空機改修となるとその実力を発揮します。シンガポールなんかも同じような国ですね。

ペイントを剥がされた767がいますね。窓があるので旅客型です。しかし前方の窓が一部ない部分がありますよね。そこにカーゴ扉を付けて貨物機に改修しているのです。こういうのをコンバートフレイターと呼びます。

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この改修は台湾のEvergreen(長栄)グループのEvergreen Aviation Technology(EGAT)という会社がやっています。Evergreen(長栄)グループはエバー航空の親会社です。こういう会社のことをMRO会社といいます。MROとはMaintenance Repair Overhaulの頭文字。文字通り、整備、修理、オーバーホールをする会社です。このような専門業者が危うく命を落としそうになった旅客機を改修して貨物機として世に送り出しています。(命を拾うのは中古機の改修を発注する航空会社ですけど…。)


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ハンガーの反対側に行くとオーストリア航空とANAカーゴの767がいました。飛行機の中から見えた3機とも767です。このEGATのハンガーでは767の貨物機改修を専門的に行っているものと思われます。

ちなみにですが、787の主翼や胴体を運んでいるドリームリフターもここ台北のEGATで改修されました。


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これ、愛称はドリームリフターですが、正式には747BCFと言いますBCFとはBoeing Converted Freighter。あの巨体は実は台北で改修されていたんですね。古い機体はこうやって第二の人生を全うするのです。

さらにちなみになんですが、こちらがEGATの出している将来の貨物機需要予測です。


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(参照) https://www.mro-network.com/airframe/boeing-767-market-strong-due-freighter-conversions

2037年の貨物機需要予測を見ていると新しい機体よりも改修された(Converted)機体の方が多くなっているのがわかりますよね。特に767は貨物機として余生を送るものが多いですね。

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今でも新品の767が生まれる

先ほどから出てくる767という飛行機ですが、この飛行機がまたいい人生を送っているんですよね。


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(旅客型のANA767-300)

この初号機の初飛行は1981年とものすごく古く、発注も伸び悩んだ機体なんですが、ここへ来て貨物機としての需要がじゃんじゃん入ってきているんです。


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(FEDEXの767F/BoeingのHPより)


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(UPSの767F/BoeingのHPより)

上の2つは初めから貨物機として生まれる767なんですが、ここへ来て米貨物航空大手のFEDEXやUPSが何十単位で発注してくれるもんだから、新たに生まれる767の貨物型も好調なんですよ。

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そして極めつけはKC-46という名の米軍の空中給油機


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(空中給油中のKC-46/BoeingのHPより)

この空中給油機が767をベースにしているのですよね。米軍がこの機体を200機弱購入する予定なので、767の生産ラインはまだまだ続く予定です。


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エバレット工場にずらりと並んだ767ベースのKC-46。FOD(異物)が機内に混入していたとかで、米軍が受け取りを拒否しているとあって、ホントたくさんの作りかけのKC-46が駐機されていました。

素晴らしい好循環モデル

このように旅客機というものは旅客型が最初にできて、古くなったら旅客型から貨物型へコンバートして、さらに運がいいと、貨物型の発注がバンバン入るという好循環に入ることができるんです。

こんな素晴らしい発注のサイクルを持っているのは767以外にありません。


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747の最新型である747-8がそれに近い気もしますが、さすがに大きな機体とあって767のように何十機単位で発注が入るというわけには行かないようです。ただしこの-8という派生型は旅客型に先んじて貨物型からデリバリーされたという点が貨物機需要の高さを物語ります。

A380も貨物機としての計画がありましたが結局実現しませんでした。747もいい線まで行ったんですがやはりダメでした。やはり大きな飛行機は貨物機としてのリスクが大きいですね。しかし787くらいの大きさになると随分と市場が厚くなります。787の貨物型はありませんが、それを767が補っている格好でしょう。

旅客機としては737クラスが圧倒的な販売数を誇りますが、貨物機としては767くらいがちょうどいいサイズでよく売れるのかも知れませんね。

台北で見かけた改修中の767を見て、「767って息が長いなー」と感じたので貨物機についてまとめてみました。

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