与えられた時間は6時間
今回は日帰り屋久島旅行のダイジェスト版をお送りしたい。11時10分に屋久島空港に到着してレンタカーを借りるともう12時少し前だ。帰りのフライトは19時発。18時にレンタカー屋は閉まると言っていたので、18時前には車を返さないといけない。つまり僕に与えられた時間は6時間。さぁ屋久島をどう回るか。
前日の23時から調べた約1時間とセントレアで調べた約20分の知識しか持ち合わせていないので、ほとんど行き当たりばったりという感じだった。
しかし最低限見たいものは頭の中にあった。まずは屋久杉、そして滝、あとはガジュマルだ。この3つが見られればヨシとしよう。そう思って挑んだ。
今回訪問した場所は以下の地図の通りだ。
遠くに行くと移動だけで時間を取られるので、比較的空港から近いところに限定して見ようと思った。
ヤクスギランド
とりあえず屋久杉を見ないことには屋久島に来たことにはならない。と、前日に調べていた白谷雲水峡(シラタニウンスイキョウ)に行こうと思ったのだが、朝、セントレアで休園中(道路封鎖のため)と知った。ということで次に屋久杉が見られそうな「ヤクスギランド」に行くことにした。一応、レンタカー屋のオニイサンにも白谷雲水峡には行けないことと、屋久杉を見るとしたらヤクスギランドが良いということだけは確認して向かった(折れた弥生杉は白谷雲水峡にあるらしい)。
ヤクスギランドへの道のりはしんどかった、海岸線あたりの平地を走っている時は良かったのだが、山道に入ると急カーブの連続。登るにつれ道幅が狭いところが多くなり、対向車が来ないかどうか常にヒヤヒヤしながらの運転だった。しかも下は晴れていたのに山に入った瞬間から大雨。とにかく気の抜けない30分だった。(山道を30分くらい運転する)
ところどころ、すれ違えないくらいの狭い道で対向車に出会い急ブレーキ。こちらがバックしたり、あちらがバックしたりと譲り合いながらの行き帰りだった。前日にレンタカーがワゴンタイプしか空いておらず、当日朝、鹿児島空港から電話をして軽自動車に変えてくれるよう交渉したからよかったのだが、そのままワゴンタイプだったらかなり厳しい道のりになっていただろう。屋久島観光は極力小さい車をおススメする。
ヤクスギランドは屋久杉を見るために整備された公園だ。コース別に遊歩道が設置されており、特にトレッキングの装備をすることなく気軽に屋久杉が見られる。30分コースと1時間コースまでは遊歩道があるが、その先の難易度の高いコースに行くと遊歩道がないらしかった。僕は時間がなかったので30分コースで帰ってきた。
これが一つの見どころである千年杉。細く見えるのは上の方を撮っているから。根本はかなり太く、縄文杉までは行かないもののなかなかの立派な杉だった。ヤクスギランドだけは別章を立ててレポートしようと思っているが、どうしよう、とりあえず今回はここまで。
猿川のガジュマル
次に向かったのはガジュマルが見られるところ。ガジュマルとは熱帯に独特の、根なのか茎なのかよくわからないグネグネしたものが絡まった木のことだ。僕はマングローブとかガジュマルとか熱帯雨林が好きで、西表島に行ったときにもホテルと近くのマングローブ林を探して見に行ったほどだ。猿川のガジュマルはあまり有名なところではないらしく、入口前の道端に「こちら」という看板があるのみ。駐車場というよりも入口前の少し開けた草むらに停める感じだった。1組先客がいたので「ここだ」と自信が持てたが、誰もいなかったら不安で入れなかったかも知れない。
↑の写真は入口から少し入ったところだが、まるでジャングル。一人で進むのは勇気が必要だった。中には何がいるのかわからない。変な動物に出くわしたり、蛇にかまれたりしないか不安だった。目的のガジュマルへは数分で着くのだが、帰って来られなかったらどうしようとかなり心細かった。一応道があるのでとりあえず進むしかなかった。
不安に駆られながら歩いて行くと、目の前に広がったのは学校の教室1つ分くらいと思われるガジュマル林。「これだけ?」と言えばこれだけだがこれぞ手つかずのガジュマルという感じでゾクゾクした。写真だけ撮って「なかなかのものだなー」と感嘆しつつ、ものの10分くらいで戻ってきた。
猿川のガジュマルは入口すぐの所がいきなり急な下り斜面となっておりなかなか敷居が高い。入って行けたとしても、森の中は基本的に湿っていてグチャグチャな部分もあるし、蛇が群衆になっているようにも見える木の根に足を引っかけることもあるので気を付けて行った方がいい。また、草を踏みつけると虫が飛んできたりもするので、極度の虫嫌いの方は避けた方がいいだろう。僕も虫が嫌いで「短パンで行けるか?」と怖かったが「ここまで来たら行くしかない」と前に進んだ。
ただ、このガジュマルに自分一人というのはある意味とても贅沢で開放的な体験だったと思う。
千尋の滝
続いて近くにある滝へ。山道を15分くらい登ると大きな駐車場がある(ここは整備されていて売店やトイレがある)。そこから千尋(せんぴろ)の滝までは歩いて数分だ。展望台のようなところから滝を見下ろすわけだが、この滝の景観は圧巻と言ってよい。花崗岩の岩の上を駆け降りる滝として独特の風景を作り出しており、屋久島が花崗岩の塊でできていることがよくわかる場所でもある。滝そのものの壮大な風景もさることながら、脇の山の斜面を形成する岩盤も魅力的である。
そして300m先に吊り橋があるというので降りて行ってみた。
吊り橋から見られるのはこの景色だ。滝の水の勢いと音、吊り橋の高さに圧倒され、思わず足がすくんだ。ちなみに、ここにいるのも僕一人。さっきの展望台には少ないながら人が来るが、こちらは行き帰り共に誰にも会わなかった。
ひとつ注意を書いておくと、ここへは覚悟して行った方がいい。とにかく高低差が大きいのだ。往路は急な階段をひたすら降りていく。帰りは相当しんどいだろうなと思いながらもなんとか降りた。案の定、帰りはとてもしんどかった。足の弱い人や、汗だくになりたくない人は絶対にやめた方がいいだろう。
千尋の滝の駐車場には海に面した別の展望台が作られており、海と山の景色が両方見られるのも魅力的だ。こう見ると屋久島がいかに山がちな地形かが分かると思う。平地は少なく海岸線からいきなり深い森が広がっている。
大山神社
段々時間がなくなってきた。近くのカフェでスムージーを買い向かった先は小さな神社。前日に屋久島の観光地を調べた時、何故かグッと来たのがここだった。「気味が悪いが美しい」、そんな印象を持った神社だ。大山神社と呼ばれるこの神社は森の中にひっそりと佇むとても神秘的な場所だ。駐車場もなくナビで行っても通り過ぎてしまいそうなところだった。路肩というか入口の前にある草むらに適当に車を止めて鳥居の写真だけを撮ってきた。誰もいなかったし、奥は本当に気味が悪かったので行っていない。「雨でカメラが濡れるし」と恐怖感を誤魔化した。
クリスタル岬
最後は空港近くで時間調整。「そう言えば海のダイナミズムを感じていない」と思ったので最後に海の見える景色を探してここにやってきた。ここも「どこに車を止めたらいいのか?」と迷う場所で、もうこれ以上車で行けそうにないというところまで行き、適当に草むらに駐車。そこから歩いて向かった。
ちょうど災害復旧車だったか、そんな車が来ており、その人達に「クリスタル岬ってこの先ですか?」と聞くと、「ちょっと険しいですけどむっちゃ綺麗ですよ。」と言われたので安心して行けたのだが、誰もいなかったら僕は不安で岬までにある小さな森の中に入って行けなかったかも知れない。
↑は海を背にした写真だが、このように海岸沿いに木々が生い茂っており、石が敷かれている道を2~3分進むと岩だけの岬にたどり着く。
ここがクリスタル岬。その名前は別名らしく、本名は仁田早崎鉱山跡と呼ぶらしい。何やらクリスタルが混じっている採鉱場だったそうだ。
隣の岩に移ってどんどん先に行ける感じだが、落ちたら多分死ぬのである程度のところまででやめておいた。落ちたことすら誰にも知られず、ここで命を落とすのは嫌だったから。
屋久島とは
そんなこんなで17時を過ぎてしまったので、ガソリンを入れてレンタカー屋へ。限定的なエリアに絞って観光してきたわけだが、屋久島はこれまで行ったどんな場所とも違っている気がした。とにかく行くところ行くところ自然のままなのだ。「来た人が足で踏んで行った道だけがあります。後は自己責任でどうぞ。」みたいなところが多かった。
夏休みの終わった9月の水曜日。最も空いている時期に行ったからかも知れないが、人っ子ひとりいない場所も多く、「本当にこっちなのか?」と不安になる場面が何度もあった。
しかしそれは言い方を変えれば、営利目的なところで無駄なお金を取られることなく、本当に手つかずの自然を楽しめるということ。空港も町中でも感じたが、あまり商売っ気を感じないところが屋久島の良さでもあると感じた。(もしかしたら観光客をたくさん呼びたくないのかも知れない。)
自然に関して言えば、屋久島は本当に山しかない島だ。平地は少なく、見上げれば常にすぐそこに山がそびえ立っている。植生もヤシの木などは南国だが、杉が茂る山の中は南国ではない。その辺りが南の島とは言え沖縄とは違うところでもある。
文化的にも沖縄とは全く違っていて、島内の風景も僕の知っている宮古島や石垣島などの沖縄県の島ではないことを強く意識させられた。ひとくくりに南西諸島だと言ってしまいそうだが、そんな簡単にまとめられるものではなく、屋久島は改めて本州に属する島なのだと感じた。
僕の勝手なイメージであるが、思っていた屋久島と実際の屋久島には少しギャップがあったように思う。どこでもそうだが、やはり行ってみないと分からない。どこでも行って自分自身の眼で見て肌で感じてみるものだ。単に「屋久島に行った」だけなのであるが、大袈裟に「旅行をすることの意義」を改めて認識した日帰り旅行だったとも言える。
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