先週、Boeingのストライキが終わった。737MAXの墜落事故から始まり、様々な品質問題に苦しんでいるBoeingにとって、立て直しつつある中でのストライキは「泣き面に蜂」だったに違いない。10%の従業員カットや大型の資金調達で、何とか窮地をしのぐ姿は見ていてとても辛く感じてしまった。
そんなBoeingの不調を尻目にエアバスは新しい機体をデビューさせた。A321XLRというA321の超長距離型だ。
先日、マドリード=パリ間で初の商業運航を果たした。単通路機では最長距離を飛べる機体で、これまで需要が少なくて双通路機を飛ばせなかった路線に飛ばせるとあって、市場の注目が高い機体である。
イベリア航空は今後この機体をマドリード=ボストン、ワシントン・ダレスという太平洋路線に投入する予定だと言う。これから、787が出た時のように、ポイントToポイントの路線が色々と出てくるだろう。
ところで、航空機産業は長らく米国と欧州に支配されていたが、近年台頭してきたのが中国である。世界の航空機産業の第三極として中国の航空機産業は目覚ましい発展を遂げている。MD80/90シリーズそっくりなARJ やA320に酷似したC919が存在感を増している。
少し前、そのARJやC919を設計・製造するCOMAC(中国商用飛機)が、シンガポールにオフィスを開いたというニュースを見掛けた。ARJやC919を中国以外でも販売しよういう試みだ。近頃、中国国内エアラインでの就航や海外での就航やデモ飛行など、色々なニュースを目にする。
こちらは香港にオフィスを開いたというニュース。香港やシンガポールでデモ飛行を行ったのと合わせてCOMACはそこにオフィスを開いている。
ついにはARJの名前をリブランドしてC909という名前にすると言う。シリーズ機する方がアピール力があるからだろう。ある数字で0から数字を挟んで行くのは、まるで707から始まったBoeingの旅客機のようだ。9は中国で8と共に縁起の良い数字で、「久」と同じ発音が同じであることから縁起がよいとされている。
リージョナルクラスのC909、単通路ベストセラークラスのC919、その次は787クラスのC929が控えている(開発状況は良く知らないが)。中国は国産機をこうやってシリーズ化してボーイングやエアバスのようになっていくのだ。
Boeingが737MAXの墜落事故で足踏みしているうちに、エアバスはBoeingに対抗馬がいないA321XLRをデビューさせた。これで長距離向け単通路機市場はエアバスの独壇場になった。さらに今度はCOMACがC919というA320激似の旅客機で単通路機市場全体を侵食しつつある。
米国、欧州などの主要な先進国では中国の型式証明が通用しないので、C919が市場を侵食すると言ってもほんの一部だけだと思われるが、中国の型式証明を受け入れる国がアジアやアフリカ等にあれば、間違いなくそこはC919が取っていくだろう。インドネシアは既に中国の型式証明を受け入れている。
こうして737の市場はエアバスとCOMACに食われて行くのだ。さらに悪いことに、強硬な対中政策を取るトランプが大統領になってしまったので、ますます737は中国に売れなくなる。また、ストライキが777Xのデリバリーを1年遅れにしたからには、エアバスに対抗するために構想していると思われるBoeingの次期開発機はもっと遅れるだろう。
どれをとってもBoeingには都合が悪い。
ここ30年くらいで時代は変わった。日本も少しずつエアバスにも関わり始めているとはいえ、それでもほぼBoeing一辺倒だ。日本の航空機産業の行く末が危ぶまれる気がするのだが、このまま日本はBoeingの部品メーカーとしての立ち位置で良いのだろうか?共に沈みゆくに船に乗っていないか心配で仕方がない。
スポンサードリンク