日本の物価は上がっていない
皆さん、こんなことを言われたことありませんか?「この前の出張のホテル代、どうしてこんなに高いんですか?」
管理部門とやらから電話が掛かってくるヤツですよ。旅費の精算をしたらソッコー文句言われる「会社あるある」の一種です。
管理部門とやらってどうしてあんなに世間知らずなんですかね?特に海外のこととなると、とたんに理解不足が際立ちます。海外ってそんなに物価が安いところでしたっけ?
少なくとも彼らには「日本は物価が高くて、海外、特に東南アジアは安い」という妄信があるようです。
こちらはA国で3万円強の部屋。
こちらB国で1万5千円くらいの部屋。一つ上の写真の部屋の半値ですが、この部屋の方がグレードが高いです。その国の物価水準によっては、安くてもグレードが高いと言った逆転現象が起きるため、「海外」とひとくくりにするのは非常にナンセンスです。
一つ言っておきますが、出張は急な予定変更があるため、Expediaなどの予約サイトから取れるような即決裁返金ナシの激安料金じゃ取りませんから…。言わゆる変更可能、現地決裁のフレキシブルレートでしか取りませんからね…。その辺りをまず管理部門様にはご理解して頂きたく…。
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日本の物価は20年間上がっていない
普通の資本主義経済と言うのは年2%くらいでインフレするものなのです。日銀だって2%のインフレ目標を掲げているように、それが今の経済では普通なんですよね。しかし、日本人はその2%の感覚がないものだから、「東南アジアなのに、どうしてそんなに高いホテルに泊まってんだ」って文句を言われたりするわけです。しかし管理部門さんの頭の中も理解できます。何故なら、日本は物価に関して世界的に見てもちょっと特殊な国だからです。
これから消費者物価指数というものをお見せします。消費者物価指数とは物価をある年を100として高い、安いとして表したものです。
↓こちら、日本の消費者物価指数です。
日本の消費者物価指数は20年前の1998年からほぼ横ばいであることがわかります(2015年が100)。最近では上昇基調にあるものの、数年前までは1998年の物価よりも低かった状態にあるんですよ。
日本では物価は上がらない。
これが僕らが無意識に持っている肌感覚です。実に恐ろしい感覚です。
↓続いてタイの消費者物価指数です。
こちらは成長している国の典型的な消費者物価の推移です。20年間で2倍までは行かないものの、1.7倍くらいには上昇しています。(2015年が100)
↓ついでにこちらがベトナムの消費者物価指数です。
ベトナムでは2005年を100としており、直近の指数は250超え。つまり、2005年から約10年の間に2.5倍も物価が上がっていることになるのです。ベトナムの成長率ってすごいですよね。
↓ついでにこちらがシンガポールの消費者物価指数です。
先進国ですらこれくらいの物価上昇率があります。シンガポールは既に日本よりも物価が高いです。20年前は違っていたかも知れませんが、今となってはアジアでも最も物価が高い国になっています。
まとめると、
日本の物価上昇率は極めて低いです。
管理部門さんはその常識を海外にも当てはめてしまいます。
世界、特にアジア地域がどんなスピードで発展しているのか知らないのでしょう。
各国の物価上昇を実感するには、意識的に海外に行くか、各国の消費者物価指数を常時モニターするしかありません。
アジア各国の物価は年々上がっています。もちろんホテル代だって高くなります。
バンコクはもはやシンガポールだ
例えばバンコク。バンコクは20年前のバンコクとはもう違うんです。今見た通り、日本の物価は20年前と変わっていません。ペットボトル飲料の値段を例にとると、自販機で買うと昔よりも若干上がっていますが、スーパーで買えば、今でも100円を切る値段で買えますよね。日本の物価なんてそんなものです。バンコクのショッピングモールに行くと「えっ!これが今のバンコクなの?」みたいな驚きに駆られます。東南アジアの各国が発展途上国だったのは随分昔の話なのです。
高いホテルに泊まる必然性
管理部門さんの非常識は日本の「消費者物価指数」の特異性が原因であることが判明しました。では、安宿に泊まればよいのでしょうか?各国にはどこでもバックパッカー用の宿泊施設があります。日本と同じような感覚で1万円クラスのホテルに泊まればよいのでしょうか?「節約せよ」という方針はわかりますが、僕は相応のホテルに泊まらないといけない理由があると常々感じています。
治安の問題
まず治安があります。たいてい安宿と言うのは治安の悪いエリアにあります。海外には夜間は恐ろしくて外出できないようなところもたくさんあります。治安の悪さもさることながら、安宿はそもそもセキュリティが心配です。他の客が部屋に侵入して窃盗なんてことは普通に起こり得ます。ホテルの従業員だって信用なりません。
そんなところにあえて泊まれと言うのでしょうか?
治安リスクを避けるためにも、治安のいいエリアにあるグレードの高いホテルに泊まるのです。日本ではどこに行っても治安がいいので、ホテルの立地で治安の問題を気にする人はまずいませんが、海外では泊まる地域の治安と言うものを気に掛けなければなりません。
管理部門さんは治安に関する感覚も「日本基準」です。社員が危ない目に遭ってもいいんでしょうかね?
言葉の問題
安いホテルに泊まると英語が通じないことがあります。特に中国はヤバいです。下手な3流ホテルに泊まってしまうと言葉の問題で困ってしまうことがあるんですよ。海外で困ったら助けを求められる唯一の場所がホテルだと僕は思っています。ホテルが避難地じゃかったら、安心して仕事なんて出来ません。ホテルで英語が通じると言うのは非常に重要なことなのです。
海外のそれなりに名の通ったチェーンホテルならば確実に英語が通じます。そんな理由もあってホテルにある程度のグレードの高さは必要なのです。
相手にナメられる
実はこれ、一番重要です。変なホテルに泊まると顧客や潜在顧客、取引先、協業先にナメられます。
どこに泊まってんだい?
と聞かれて、「いや、実はピロポロ通りのマーダーホテルに泊まってんですよ」なんて言うの嫌ですよね。コンラッドまでは行かないまでも「オーチャードのヒルトンに泊まってます」くらいがギリじゃないでしょうか?
以前、「ホテルまで車で送るけどどこ?」と聞かれ、「ホリデイインエクスプレス」と答えるのが何だか恥ずかしかったことがあります。ホリデイインでもちょっと萎えるのに「エクスプレス」ですよ!
僕らが逆の立場で海外からの人を迎えるとき、その人がどんなホテルに泊まっているのか、どんな交通手段で来るのかは何となく見てますよね。
「マリオットに泊まってる」と言われるのと「APAホテルに泊まってる」と言われるのとで、どちらの相手とビジネスをしたいと思うでしょう?何となく後者の人は貧乏くさい気がしちゃいます。「会社の経営、大丈夫かな?」なんて思っちゃいますよね。
以上が海外で高いホテルに泊まる理由です。
節約が美徳なのは日本だけかも
以前アメリカで、とあるエリート層に「今日は地下鉄で来ました。日本の地下鉄より狭いですねー。」と言ったら、気まずそうに「地下鉄、乗ったことないんだ…。」と言われたことがあります。マジでビビりました。公共交通機関に乗らずにどうやって生活するんでしょうか?お抱えの運転手がいるのか、タクシーしか使わないのか、詳細は不明ですが中にはそんな人もいるようです。まぁ、さすがにそのお方は随分と位の高い人だったんですけれども…。
日本では社長クラスでも地下鉄通勤をしたりしますが、アメリカでは使う交通機関でステータスが測られることもあるってことなんですよ。
節約が美徳なのは日本人だけと思った方がよいでしょう。頑張って安宿に泊まり、公共共通機関を使って会社のために節約している社員が美しいのは日本だけかも知れません。国にもよりますが、海外では概ね逆の反応が返ってくると思います。
つまりホテルは信用代
ホテルに関しても同じでして、下手な3流ホテルに泊まっていたら潜在顧客であるエリート層に「うわ、貧乏くせ」と思われて「コイツとはビジネスするのやめとこ」などと思われてしまうのがオチです。つまり「高いホテルに泊まれる=その会社の信用」となるわけですよ。下手をしたら信用を得られずにビジネスが失敗して、会社を潰しちゃうこともあるかも知れないんです。
もちろん上に書いたような治安の問題や言葉の問題も含めてちゃんとしたところに泊まっているか見られているわけですよ。
まとめ
あれこれ書きましたが、つまるところ管理部門さんには、日本の物価上昇率と海外の物価上昇率は全然違う
ということをちゃんと理解して頂き、
日本と海外では常識や判断基準が違う
ということも併せて理解して頂きたいと思います。
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