座席変更を禁止する3つの理由
先日乗ったエアアジアジャパンの名古屋(中部)=台北(桃園)線の初便。エアアジアジャパンを含むLCCでは指定された座席以外に座ってはいけないルールとなっています。機内でアナウンスもされ、周知徹底が図られています。それはすごく理解できます。LCCでは座席を指定するのに料金が必要で、しかも座席によって料金が異なります。座席指定料金を払っている人がいるというのに、空席だからと言って勝手に席に移ると不公平感が生まれるからです。
この通り、座席によって料金が異なります(エアアジアNGO-CTS線の例)。
2番目の理由は飛行機の重心の問題です。飛行機は乗客や貨物を適切な位置に積み込んで重心を許容範囲内に収めて飛行をしています。重心がずれて許容範囲から外れると機体の姿勢をコントロールできなくなり最悪の場合、墜落します。
3番目は機内食の問題です。機内食のプリオーダーは座席番号で管理されているため、座席を移動すると誰の機内食かわからなくなります。従って、機内食を受け取る際には、指定した席に座っていなければなりません。
ただ、機内で表立って言われるのは2番目の「重心の問題」だけです。先日のエアアジアジャパンでは、
「重心に影響を与えるため、座席移動はしないで下さい。」
とだけ言われました。1番目の件はお金の話にもなりますので非常に言いにくいんでしょうね。3番目の機内食の問題も全員が該当しないため、言ったところで説得力に欠けてしまうのでしょう。
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移動したら戻された
僕の座席は一番後ろの通路側でした。そのままの座席でも別に良かったんですが、3席丸ごと空いている席があったので、2つ前の窓側に移動しました。しかし降下も終盤に差し掛かった頃、「お客様、お座席を移動されていますよね?」と言われ、「規定ですので元のお座席にお戻り下さい」と元の座席に戻されました。
やはりダメだったか…。
でも仕方がないです。僕は規定を破ったんですから…。
しかしです。着陸後「消防車による放水がある」という放送が入ったため、後ろ3列の人達がタキシー中に皆窓側に移ったのです。(機体は動いています。)
後ろのジャンプシートに座るクルーからは見えています。しかし座席移動をした乗客に対して注意することはありませんでした。
あれ?座席移動って禁止じゃありませんでしたっけ?
(横の移動は縦の重心位置には影響を与えません。従って横の移動は「重心の問題」という趣旨からすると許されることは理解しています。)
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クルーに確認してみた
僕はそのことが腑に落ちなかったんですよ。というわけで降りるときにクルーに確認したんです。「到着した時、横の移動をしている人がいましたよね。それは許されるんですか?」
と。
自分でも「嫌味だなー」と思いながらも明確な説明を求めたくて聞いてみました。
そしたら、
「横の移動も原則禁止です。」
「お客様(僕)は移動されていることがわかったのでお声掛けしました。」
「ちなみに28列目の方は3席全てを買われているので問題ありません。」
と。ならば28列目の人はOKです(恐らく取材の方です)。しかし30列目と31列目の人も移動していました。
「じゃあ30列目と31列目の人達も3席買ってるんですかね?」
と聞きました。そしたら、
「お客様全員の座席を把握してはいませんので…」
と言われちゃいました。
そんなのあるかいっ!
要するに「座席移動はダメ」と言いながらもクルーの判断に委ねられているんですよね。僕がクルーとの会話で感じたのは、
- 移動を見つけたら注意する
- 横の移動くらいは、、、まぁ黙認
ってなところです。「重心の問題」と言いつつ、バレなければいいわけなので「重心の問題」は管理されていないに等しいです。
「重心に影響を与える」の本当のところ
さて、ここで。エアアジアジャパンをはじめLCCで言われている「重心に影響を与えるため、座席移動はしないで下さい」というのはどれくらいシビアな問題なんでしょうか?LCCが主力機として運航しているA320や737では、乗客は3つのゾーンに分かれて重心が管理されています。
上の絵は、Airbus発行の重量重心計算(ウェイト・アンド・バランス)のトレーニングマニュアルの一部ページですが、乗客の重量は前方、中央、後方で管理されていることが読み取れます。
明確な座席番号までは把握できませんが、結論から言えば、それぞれのゾーン内であれば座席変更は可能です。逆にゾーンを超えた座席変更は不可です。(重心が規定内に収まれば可能ですが、重心を管理できなくなるためやめた方が無難です。)
フルサービスキャリアであれば、座席を代わりたいと言えば嫌な顔一つせずに変えてもらえますよね。クルーはゾーンを把握した上で、ゾーン内であれば何も言わずに許可しているものと思われます。
しかしLCCでは座席指定料金の問題で不公平感が出てしまうため、表向きは重心の問題にして座席変更を禁止しているというわけです。ピーチのHPでは不公平感に触れていますが、先日のエアアジアジャパンでは「重心の問題」としか言われませんでした。
ちなみに僕は31列目から29列目に移っただけのため、重心の管理上はOKです。「禁止されていることをやるな」というご批判は甘んじて受けますが、技術的な観点からはOKなんですよ。
しかも僕は座席指定料を払っており、同じ料金の座席に移動をしているため、不公平感という観点からもOKなはずなんです。
さらに機内食を食べた後なので、その問題もクリアしています。
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実際の運用では、ある程度の数の乗客が一様に分散して座っている状態ならば、多少の乗客がゾーンを超えて移動しても大した問題にはならないです。
クルーだって機内を端から端まで動き回りますし、乗客もトイレに行くために機内を端まで動きます。さらに燃料消費によっても重心位置は移動します。それらをトータルで考えて、飛行機は重心が許容範囲内に入るように設計されています。
数人が座席を移動したくらいで飛行機が墜落していては、飛行機として成立しません。エアバスやボーイングに言わせれば、「そんなヤワな飛行機作ってないよ」というところでしょう。
ただし乗客数が極端に少ない状態では、本当の意味で重心が問題になるため座席移動禁止令が出されます。一度ANAの777で経験したことがあります。
そもそも無理があるのだから
フルサービスキャリアでは安全上問題のない事項が、LCCになると安全を盾に禁止されるというのはちょっと納得できないところがあります。禁止すべき理由は、実は安全性ではなく座席指定料の問題なのだから、そもそも無理があるんですよ。ちなみにA330で飛ばすエアアジアXでは料金を払えば機内で座席を移ることが可能だそうです。(以下リンク参照)
https://support.airasia.com/s/article/Can-I-change-the-seat-after-en?language=ja
機内で座席を変える場合には、事前座席指定はリセットして新たに指定し直すという考え方ですね。これにはとても賛同できます。
またはこんなのどうでしょう?座席移動を見つけた場合、(乗客には聞かずに)座席指定料金を払っているかチェックして、ゾーン内ならばOKという風にすればいいんです。そもそもルールが曖昧で、実際に安全上の問題がないのならば、もっと融通を利かせればいいのにと思います。
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LCCでも快適に過ごしたい
座席の狭いLCCだからこそ、機内でも快適な座席を追求したいじゃないですか。それをガチガチの禁止事項で固めてしまっては、LCCに乗ろうと思わなくなってしまいます。僕はフルサービスキャリアにもLCCにも乗りたいと思っています。しかし今回の件で、「エアアジアは融通が利かないから嫌だなー」と思ってしまいました。きっと他にも同じことを思っている人はいると思います。一度そういう経験をすると次から敬遠したくなるんですよね。最近ではANAやJALでもLCC並の運賃の時がありますので、ならば「融通の利くフルサービスキャリアに乗ろう」となってしまうんです。
それって僕ら利用者にとって不利なことなんですよ。LCCが消えてしまっては、結局、航空運賃が上がるだけなんですから…。LCCがいるからこそ、競争原理が働いて運賃が安くなるんです。だからLCCを敬遠してしまってはいけないんです。
ルールがガチガチなLCCであっても、乗客の快適性のためもう少しサービスの改善が必要です。こういうのは誰かが声を上げないといけないんですよ。僕はあえて自分のした禁止事項をさらけ出して言わせてもらっています。
追加料金制にする、確認した上で黙認するなど、アイデアは幾つかあります。一律禁止と硬直的な態度をとるのではなく、もう少し柔軟にルールを考えれば、きっとLCCはもっと快適になると思うんです。
どうでしょう?そう思いませんか?
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