イケてる航空総合研究所

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三菱重工業がボンバルディアCRJ事業を買収する理由とは?これはボーイング対エアバス2強体制の序章に過ぎないのか。

三菱重工業がCRJ事業を買収?

航空業界をセンセーショナルなニュースが駆け巡りました。三菱重工業がボンバルディアのCRJ事業を買収交渉中というニュースです。様々なソースを見る限り、交渉の事実は間違いないと考えてよいでしょう。

全体を買い取るのか、メンテナンスなどのサービス部門を買い取るのかはニュースごとに異なり不明確ですが、とにかく三菱がボンバルディアのCRJ事業に魅力を感じて交渉を行っていることは確かな事実と思われます。

ボンバルディアは航空事業撤退か

相手方のボンバルディアですが、最近調子が悪く、CS100、CS300のいわゆるCシリーズ事業をエアバスに売却したのは記憶に新しいですよね。そしてターボプロップ部門のQシリーズも国内のバイキングエアに売却しました。


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(ボンバルディアCRJ)

というわけでリージョナルジェット部門のCRJシリーズだけがボンバルディアに残るのかなと思いきや、そこも売り払ってしまいたいようです。ニュースを聞いたとき正直驚きました。何故ならボンバルディアはほぼ全て航空機事業を売り払おうとしているからです。(ビジネスジェット部門は儲かっているため別のはずです。)

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スペースジェットに納得

このニュースよりも少し早く漏れ伝わってきたのが「MRJ」を「スペースジェット」と改称する件。これはCRJ事業買収の話とすごく相性がいいと思います。なぜならCRJと比べるとMRJのキャビンはとてもスペ―スが広いからです。

スペースジェットのスペースは「宇宙」ではなく「空間」の意味。これまでCRJを使ってきたエアラインがMRJを導入したらきっと、そのスペ―シャスな空間に驚くことでしょう。一方、エンブラエル170、190シリーズと比べたらそんなにスペ―シャスではないため、そちらとの相性は悪いでしょうね。

「スペースジェット」の愛称は三菱が狙うCRJととても相性がいいのです(笑)。

「スペースジェット」のニュースを聞いたときの違和感は、三菱がCRJ事業を買収するというニュースを聞いて見事に消え去りました。「なるほど、そういうことだったのか!」と。

スコープクローズとは

今、三菱航空機はMRJを必死で「短く」、そして「軽く」しようとしています。飛行試験を行っているのはMRJ-90という長胴型ですが、スペースジェットの愛称を持つMRJは少なくともMRJ-70を指しています(恐らく両方指していると思われますが)。MRJは今、90席クラスではなく、70席クラスにシフトしているんですよ。

なぜ?って思っている人はいるかと思います。これはスコープクローズという米国内の規制が影響しています。度々報道されているスコープクローズについてご存知の方も多いかと思いますが、一応説明しておきますね。

むちゃくちゃ簡単にいうと、スコープクローズとは米大手エアラインを保護する規制です。その前にアメリカの国内線の構造を知る必要があります。

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アメリカの空港に行ったことがある方はすぐにわかるかと思いますが、アメリカの国内線ってリージョナルジェットと呼ばれる小さな旅客機がハブ空港と地方空港のとの間を結んでいますよね。ヤツらは大手の傘下で「ナントカコネクション」とか「ナントカエクスプレス」とか「ナントカイーグル」とか言われている地域エアラインなんですよ。

そんな地域エアラインは大手よりも給料が安いです。彼らが737やA320などのやや大きい旅客機を買って米国内線を飛ばし始めたら、大手はたちまち潰れてしまいます。そんな事態を避けるために、地域エアラインは「76人乗り以下、39トン(8万6千ポンド)以下の旅客機しか飛ばしてはいけない」という協定を大手エアラインと結んでいます。

自由の国アメリカの空は実はかなり保守的。大手を潰さぬよう、小さなエアラインが大きな飛行機を買えないように制約をかけているんですね。

このスコープクローズですが、MRJはこのスコープクローズが緩和される見込みの下に作られていました。つまり、やがてスコープクローズ緩和され、もっと最大乗客数が増え、もっと重い重量の機体でもよくなるという予測の下にです。ところがアテが外れて一向に緩和されません。だからスコープクローズをクリアする70席以下のMRJを作らざるを得なくなったのです。

このことからもわかる通りMRJは特に米国市場に力を入れています。MRJの発注元はほとんどが米国ですからね。オプションを含む約400機の発注数のうち、スカイウェスト航空から200機、トランスステイツ航空から100機、エアロリースから20機です。実に75%以上が米国エアラインからの発注なのです。

CRJは米国籍が7割

その75%という数字によく似ているのが米国籍のCRJ の数です世界のCRJの7割がアメリカの空を飛んでいるということも忘れてはならない事実です。CRJは大きくアメリカに偏在しているんですよね。

三菱がCRJ事業を取り込めば、米国内エアラインへ非常に大きなコネクションを手に入れるわけです。CRJも随分古いですので後継機を買おうと思っている会社からしたら、同じ会社の飛行機がいいわけですよ。車だって顔なじみのディーラから買いたいじゃないですか。

もう一つ、整備拠点を手に入れられることも三菱の狙いです。むしろそちらが買収の最大の目的です。自前で整備拠点を用意するのは大変ですから、三菱はなんとか人様の整備拠点を活用できないかと考えているわけです。顧客から見てもこれまでと同じところに整備に出せるのは安心感にも繋がりますよね。

そんなわけで昔からの米国CRJユーザーはエンブラエルよりもMRJを買いたくなるわけです。

そんなエンブラエルの新型機E-2jetはスコープクローズを満たしておらず、開発が後にズレていますので、MRJ-70改めスペースジェットは今が大チャンス。三菱がCRJ事業を買収すれば、そのツテを使って一気に米国のリージョナル市場、特にCRJ後継機市場を攻められるかも知れないんです。加えて整備拠点まで手に入るという一石二鳥。

ちなみにCRJは100、200,700、900、1000とシリーズ化されていますが、900までがスコープクローズを満たしていることもあり、米国内で非常に多くのCRJが飛んでいる理由にもなっています。もちろん従来型のエンブラエル170、175もスコープクローズを満たしているのでそこはどっこいどっこいという感じなんですけどね…。

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弱者が弱者を買収、が腑に落ちない

というところまでが、三菱がCRJ事業を買収したい理由と考えられますが、これで終わりだと思います?僕は何だか腑に落ちないんですよ。

何が腑に落ちないかって、弱者が弱者を買収するかってことです。両方とも瀕死です。まぁ瀕死の2人が助け合って生きて行くことも可能なんですが、将来死ぬかも知れないことはあまり変わりなく、どうしてもその先に何かがある気がしてなりません。

僕は、三菱がCRJ事業を買収した後、結局ボーイングかエアバスに取り込まれるんじゃないかって思っているんですよ。

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三菱航空機がレントンに本社を移したのはつい最近のこと。レントンと言ったら737の最終組み立てを行っているところです。だから僕はボーイングに取り込まれるんじゃないかって思っています。ボーイングのお膝元に本社を移しておいてエアバスに吸収されるなんて話があるでしょうか?

また三菱はBoeingとカスタマーサポートの契約を結んでいますし、米国内での生産も検討を始めています。


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(エンブラエル170 ← E-2ではないです。)

ボーイングはエンブラエルを買収していますが、エンブラエルだけでは肝心な米国内のリージョナルジェット市場を攻められません。。上にも書いた通り、エンブラエル175E-2はスコープクローズをクリアしてないんです。

そこでボーイングはMRJを含めたCRJを取り込むことで、米国内はMRJとCRJ、それ以外の地域はエンブラエルと、リージョナルジェット市場を完全に支配するつもりなんじゃないかと勘繰ってしまうんですよね。「MRJの面倒看てやるからその前にCRJをもらってこいよ」なんてボーイングのお偉いさんに脅されてたりして…。

スコープクローズの緩和を待ってボーイングは「エンブラエルだけでいい」、「CRJも欲しい」という決断をするのかも知れませんね。

「いやいやCシリーズがエアバスだからCRJもエアバスでしょ」と思う方がいるかも知れません。それもありだと思います。エアバスに買収されたらレントンから出て行けばいいだけの話なので、エアバス説を否定する理由は全くありません。

と、まぁ、この先のことは到底想像がつきませんが、三菱のCRJ事業売却の話は単なる序章であって、先にもっとすごい事業再編が待っているのではないかと思ってしまうのです。弱者が弱者を食べて強者になれるのか、どうしても疑問を持たざるを得ないのです。

最後の章は完全な僕の妄想ですが、何が起こるのか考えるのは自由と言うことで、予想が外れることは承知の上、色々と書かせてもらいました。

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