イケてる航空総合研究所

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飛び恥(Flygskam)に異論。飛行機に乗ることは本当に恥なのか?飛行機は車より燃費がいいってホント?

飛び恥ニュースが一面に

今月15日までスペインで開催されていたCOP25。具体的な数値目標が出ぬまま、何となくグダグタになって終わった感がありますが、米国のパリ協定からの離脱を始め、各国の思惑のズレ、足並みの不揃いが見られる温暖化対策会議だなぁと思います。

地球温暖化と言えば、スウェーデンの環境活動家グレタさん。わずか16歳であの発言力と影響力には驚かされます。今回のCOP25は元々チリで行われる予定だったはずが、現地の情勢不安によって急きょスペインで開催することになり、米大陸に渡ったグレタさんが大西洋を渡れなくて困っているというニュースはやや滑稽にも報じられていました。何とか大西洋上で他のヨットの助けを受けてヨーロッパに戻った彼女ですが、なぜ数時間で大西洋を渡れる飛行機を使わないんでしょうね?

それは飛行機が二酸化炭素を大量に排出する乗り物だからです。おかげで最近では「飛び恥(Flygskam:フライグスカム)」という言葉が流行るようになって、ヨーロッパでは飛行機を使うことは非常に恥ずかしいという機運が高まっていると言います。ヨーロッパはどの国も陸続きであり、発電の方法も自然エネルギーを活用したものが増えているため、鉄道で移動することが、二酸化炭素の排出量を減らす取り組みとして非常に合理的だと言えるからでしょう。

と、この記事をアップしようとしていた今日、


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日経夕刊にこんな記事が載りました。COP25後ということもあり、僕も日経新聞も同じような記事を書こうと考えていたわけです。

先進国「飛び恥」じわり

グレタさんの活動を挙げ、最近では「飛び恥」運動をきっかけに「飛行機の利用回数を減らした」、または「減らすことを検討している」と考える人が増えているそうです。

しかーし!

飛行機好きな僕からすると「飛び恥」には大反対。どうしたものかと頭を悩ませています。飛行機に乗らないと趣味が成り立たない身としては、非常に脅威となる運動です。

と言うわけで、今回はどれだけ飛行機が二酸化炭素を排出する乗り物なのか、飛び恥は本当に恥なのかを検証していきたいと思います。

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車と飛行機を比べてみた

早速、飛行機がどれだけ二酸化炭素を多く排出するのか考えてみましょう。

例えばワンボックスカーの街乗りの燃費は10㎞/Lくらいです(ハイブリッドではないガソリン車)。7人乗りとか言いつつも「幼稚園のお迎えにお母さんと子供の2人乗り」というパターンも多いはずです。また、お母さんやお父さんだけが買い物に1人で使うとかいう贅沢な使い方もしているかと思います。

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という実情を鑑み、車では燃費10㎞/Lで2人乗りというパターンを想定してみます。

一方の飛行機は最もポピュラーなナローボディ機737で考えてみます。(ただし、ここではあえて燃費のいい737MAXは使いません。)

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737の燃費ですが、Wikipediaに載っている737-800の燃料容量(満タン状態)と航続距離から単純に計算してみましょう。

燃料容量:約26,000L
航続距離:約5,500km

これより燃費は、

5,500km÷26,000L=0.21km/L

と計算できます。飛行機って燃料1Lあたり0.21km(210m)しか飛ばないんですね。これを見ると飛行機はむちゃくちゃ燃費が悪いように思えます。しかし車よりもうんとたくさんの乗客が乗れることを思い出して下さい。乗客数はここでは少しゆったり目の150人としましょう。(ギュウギュウ詰めでは重くて最大航続距離まで飛べない)

で、再び問題。

10km/Lで2人の車0.21km/Lで150人の飛行機でどちらが燃費がいいか。1人当たりを出すためには掛け算してみればいいんです。

車:10km/L×2人=20km・人/L
飛行機:0.21km/L×150人=31.5km・人/L

どうでしょう?結果を見て驚きませんか?

えっ!飛行機のが燃費いいの?

ってことなんですよ。飛行機は確かにたくさんの二酸化炭素を出しますが、小さな機体の中にギュウギュウ詰めにされているので、1人当たりに直すと飛行機は車よりも燃費がいいんです。

もちろん超簡易計算ですし、車と言ってもハイブリッド車は倍ぐらいの燃費が出ますし、飛行機だって色々と型がありますので、一概に全ての飛行機が圧倒的に燃費がいいとは言えないんですが、それでも大きくは外していないと思います。飛行機は車と同等かそれ以上に燃費がいい、つまり一人当たりでは飛行機は車よりも二酸化炭素を出さないと言えるでしょう。

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二酸化炭素排出の原因とは?

さて、飛行機の燃費が結構いいと言うことがわかったところで、一体何が原因で地球上の二酸化炭素が増えているのか見てみましょう。飛行機の燃費がいいとは言え、排出源として上位を占めるとなると、ちょっと分が悪くなるわけです。


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こちらが1960年からの二酸化炭素排出原因の割合を示したものです。最も多い原因がElectricity and Heat Production(発電と発熱(暖房))目的です。2014年には全体の約40%を占めています。次が20%強でTransportation(輸送)目的と続きます。自家用車や輸送用トラック、飛行機などが排出する二酸化炭素はここに該当します。

2割と言うと大きな数字に見えますが、これはあらゆる輸送手段を含んだ数字であり、飛行機が占める割合そのものではありません。飛行機の寄与分はこの10分の1程度、つまり全体に占める飛行機の二酸化炭素排出量はたったの2%くらいになります(当日朝刊より)。全体で見ると結構マイナーな排出源です。

それよりも原因としてうんと大きいのは発電や暖房需要です。これを減らさないことには温暖化対策は始まりません。

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不都合な真実も見るべし

ここで少し視点を切り替えたいと思います。どの国が最も多く二酸化炭素を排出しているかです。


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このグラフを見るとわかる通り、世界最大の二酸化炭素排出国は中国です。中国に働きかけることこそ、世界の二酸化炭素排出量を減らすことに繋がります。

飛行機が排出する二酸化炭素が悪いという前に中国を非難すべきでしょう。ただ中国は人口が多い分損をしているはずなので、ここでも1人当たりに直すと、アメリカがトップになると思われ、パリ協定から離脱を図ろうとしているトランプ大統領を非難すべきでしょう。

こういう真実を見てしまうと、何故たったの2%、しかも車よりも燃費の良い飛行機が「飛び恥」と言って非難されるのか理解ができません。中国やアメリカという国自体が恥じゃないか、と言いたくもなります。

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節約の論理と同じ

よく、電気代の節約のためにコンセントを抜くというのがありますが、あれは本当に効果が薄いらしく、ほとんど節約になっていないようです。

つまり効果が薄い節約を頑張っても意味がないということ。逆に言えばトータルで見て割合が高いところを節約すれば効果が上がるということです。例えば、家賃の安い家に引っ越すとか、年2回の旅行を1回にするとか。そうすればウン十万円を節約できます。コンセントの抜き差し何年分に相当するんでしょうね。

飛行機が出す二酸化炭素排出量が全体の2%。これを思い切って半減させたとしても1%です。半減と言ったらかなりの努力を要しますが、半減させたところで100%が99%になるだけであり、言うほど効果は出ないわけです。

最も削るべきは一番の割合である40%を占める発電・暖房の部分です。飛行機に乗るのをやめる前に、化石燃料由来の電気や暖房を使うことをやめるべきでしょう。

最も効果的な活動とは

ここまで書いてきたことに基づくと、最も二酸化炭素の排出削減効果が高いのは、

飛行機に乗らないこと

ではなく、

二酸化炭素排出量の多い国へ、発電・暖房需要の化石燃料の使用削減を求めること

です。チマチマした節約をやっても仕方がありません。単なる自己満足で終わるだけです。

飛び恥は恥じゃない

色々と書きましたが、「飛び恥」と言って飛行機だけを地球温暖化の原因にするのは非常にナンセンスです。

こういう運動が流行ると鉄道を使う人が急に増えるんですが、鉄道を使うのが環境に優しいと言っても、その鉄道が化石燃料由来の電気で動いていたら意味がありません。自分でどちらの選択肢が二酸化炭素を出さないかよく考えて交通手段を選びたいものです。中には「飛び恥」を支持しながらも、毎日1人で車通勤している人がいるかも知れませんね。

センセーショナルな報道や感情的な運動に踊らされることなく、自分の頭で考えて行動したいものです。


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飛び恥は全然恥じゃない!

ですから、安心して飛行機に乗って下さいね。

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