イケてる航空総合研究所

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787の移動イベントの意味を考えるとセントレアってやっぱりすごいと思う。

787試験1号機ZA001とは

ちょっと熱が冷めてしまいましたが、先日(2017年12月17日)行われた787(ZA001)の機体移動イベント。この意味合いをハッキリ理解せず「感動しました!!!」とか言っているのはちょっと寂しいですので、あの機体がどんな機体で、イベントにどんな意味があったのかを僕独自の視点で解説しておきますね。

前半は航空ファンなら誰でも知っている内容、後半は勝手に僕がしている妄想です。


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まず787試験1号機ZA001ですが、このZA001は世界で初めて空を飛んだ787です。何百機と作られる787にはそれぞれの機体に初飛行というものがありますが、ZA001は初めて生産され、初めての飛行を行った記念すべき787です。

ボーイングやエアバス、三菱飛行機などの航空機メーカーは航空機を開発する際に、試験機(試作機とも呼ぶ)というものを作ります。787では6機の試験機が作られました。その初号機目がZA001です。試験機はエアラインには販売されず、開発が終わると役割を終えます。エアラインに販売されるのは量産機と呼ばれる試験機とは異なる製品です。役割を終えた試験機は博物館などに寄贈されるか、スクラップにされます。

例えば、試験3号機であるZA003は、シアトルにある「Museum Of Flight」に寄贈されました。試験2号機(ANA塗装)はアリゾナ州にあるピマ博物館に寄贈。一方で試験5号機は早々とスクラップになりました。行き先を探していたZA001は2015年、中部国際空港(セントレア)に寄贈されました。

寄贈されたところで飾る場所もないため、ZA001はセントレアの南の端に2年半もの間、雨ざらしにされていたというわけです。その後787を展示する施設の計画が発表され、実際に施設の建設が始まり、建屋の外枠が完成したところで、12月17日の大移動イベントに至りました。

セントレアには試験1号機がよく似合う

さて、なぜセントレアに787の試験1号機が寄贈されたか。とういうか、なぜセントレアに寄贈されることがふさわしいのかというと、理由はひとつです。セントレアは787の第二の故郷だからです。


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中部地方というのは航空産業の集積地で、三菱重工、川崎重工、スバル(旧富士重工)が中心となって787の大型の部品(主翼、胴体、中央翼など)を生産し、セントレアからドリームリフターに載せてシアトルまで運んでいます。昔から日本企業はボーイングのサプライヤーとして深い関係を築いてきたわけですが、787の生産では日本企業の参加比率が約35%と過去最高を記録しています。35%の全てではないですが、重要な部品の大部分は中部地方で製造され、セントレアから運ばれるため、セントレアは787の第二の故郷と呼んでも何ら不思議ではないのです。

そんな理由から、記念すべき787の試験1号機というものは、第一の故郷であるシアトルか、第二の故郷であるセントレアにしか置きようがないわけです。

というところまでが、あくまで感情論で考えるZA001がセントレアに寄贈された必然性です。

よくぞセントレアは寄贈を受け入れた

ここからは感情論ではない理性的なお話です。

僕は、個人的に、試験1号機(ZA001)がセントレアに寄贈されたこと自体が奇跡だと思うんです。「よくぞセントレアがこのZA001を受け入れてくれた」って思っています。普通こんなもの受け取りませんよ。捨てるにも維持するにもお金が掛るからです。マニア的には喉から手が出るほど欲しい実物大のダイキャストモデルみたいなもんですが、ボーイングという会社組織から見たら、単なるゴミでしかないわけですから…。

皆さん、「カッコイイ!」と言ってたくさん写真を撮られていましたけど、あの787は取れるだけの部品を取られたドンガラそのもの。骨と皮だけで既に787としての命はありません。ボーイングはなるべく早く処分したかったに違いありません。それを快く受け取ったセントレアには懐の深さを感じますね。普通はお金をもらっても受け取りませんよ。


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巷では、「セントレアから飛び立った787の初めての部品が再び故郷に帰ってきた」なんて美談で語られていますが、冷徹なビジネスの視点で考えれば「ゴミを戻すんじゃねーよ」って感じです。

しかも展示施設「Flight Of Dreams」をイチから作るというリスクを取ったところがまたすごいですよね。元々施設があるところの空きスペースに置くんじゃないんですよ、イチから施設を作るんですよ。ゴミをもらってそれを宝に魅せるためのケースを作るんですから、それは並大抵な決断ではなかったはずです。

試験機一つもらうことがどれだけ民間企業にとってしんどいかって僕は思いますよ。それを維持するために展示施設を作ろうとしているセントレアには本当に頭が下がる思いがします。

ある意味、社会的な責任なのかも

ん~、もうここまで来ると、セントレアが787試験1号機を引き取ったということは、中部地方を代表する空港として、そして中部地方からボーイングへの輸出元の空港としての「社会的な責任」なんじゃないかなーなんてことすら思えてきます。採算を度外視した感情的な決断がなされたんじゃないかなー?なんてことを僕は勘繰っています。(全く確証はありませんが…。)

もちろん展示施設だけではペイしないので、商業施設としての役割が付加されたわけですけど、展示施設なしには商業施設はありませんので、やはり787の展示施設を作る決断が先だったわけです。

先ほども書きましたが、中部国際空港(セントレア)というのは航空産業の集積地である中部地方の中心空港であり、787の主要部品を輸出する母港なわけです。そこに最新の787という、あえて現役の飛行機を展示するということは、この地方の航空機産業を発展させるミッションを自ら担うと決断したってことなんですよ。

だって中部地方から各地に飛ぼうと思ったら、皆セントレアに来るしかないじゃないですか。空港に展示施設があれば、人々は必然的に立ち寄ってしまうわけです。芸能人を空港で捕まえるように、飛行機に乗る際に人々が必ず立ち寄る場所で啓蒙活動を行うのが実は最も効率がよいのです。

子供たちがセントレアでこれから乗る飛行機を間近に見て、施設に展示される787を見て、飛行機というものに興味を抱いてくれれば万々歳です。しかも787は787は現役で活躍している最新の旅客機で、設計・製造の関係者もこの地方に五万と住んでいるわけですから、親が787を子供に見せながら「お父さんが作った飛行機だよ」とリアルに説明してあげることだってできます。

子供の頃から飛行機を身近に感じる施設があれば、将来航空産業に携わりたいと思う子供は必ず増えます。僕だって2人の男の子がいますが、子供の将来の夢は親が干渉することじゃないと思いつつも、月刊エアラインを部屋に置き、積極的にセントレアやあいち航空ミュージアムに連れて行っているわけですからね。完全に洗脳教育ですよ。先に下の子の方が航空会社名を覚え始め、787を識別できるまでに至っています。やはり身近に飛行機があると勝手に興味を持つものなのです。


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2018年夏にセントレアにできる「Flight Of Dreams」は、中部地方の未来を背負う子供たちに対し大きな責任を背負っているのです。そして将来の中部地方の航空機産業の発展を担う重要な施設なんですよ。

ここまで考えると12月17日の大移動イベントの意味合いがだんだんとわかってきますよね。セントレアという一空港がどれだけ勇気ある決断をして、どれだけ常識外れのことをしようとしているのか。あのイベントを終えて、セントレアの苦悩と希望が僕にはひしひしと伝わってくるわけなんです。

ちょっと考え過ぎですかね???


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