アジア初のA220(CS300)
今回乗るのは大韓航空A220-300(当時はCS300)という旅客機。比較的小型の旅客機しか作って来なかったボンバルディアが、737クラスの旅客機に挑戦しようと作った機体ですね。737の最小型である-600/-700と競合する機種です。(エアバスがボンバルディアのCシリーズ事業の株式50.01%を取得し、Cシリーズがエアバスの傘下になりました。そのため、2018年7月にCシリーズはA220という名称に変更されました。)搭乗時までA220を就航させたエアラインは2つ。スイスインターナショナルエアラインズとエアバルティック(Air Baltic)だけでした。3番目に就航させたのが今回搭乗する大韓航空です。アジア発のA220。これまではヨーロッパに行かないと乗れなかったA220が、なんとお隣の韓国で乗れるようになったんです。大韓航空にA220(CS300)が就航したことは我々日本人にとって「A220に劇的に乗りやすくなった」という非常に有意義な出来事なんです。
韓国国内線でA220に乗れる路線とは
大韓航空での路線展開は、まず金浦(GMP)=ウルサン(USN)、ポハン(KPO)の2都市に投入後、金浦(GMP)=チェジュ(CJU)、チンジュ(HIN)、ヨス(RSU)に順次投入しています。と、書いても韓国の都市ってあまり馴染みがないと思いますので、就航路線を地図で示しておきましょう。海岸沿いの4都市+済州島ってわけですね。当面はこの5路線に投入されています。(執筆時点)
2018年11月からは釜山=名古屋(セントレア)など、釜山を発着する日本路線にも順次このA220-300(CS300)が投入されていく予定です。日本でも乗れる機会が増えますね(追記)。
A220との初の出会い
今回乗るのは金浦=ウルサン単純往復。ウルサンに飛んで、その飛行機で帰ってくるという弾丸旅行です。実は羽田から金浦への到着が30分以上遅れまして、国内線ターミナルへダッシュしました。危うく目的の便を逃すところでした。
こんなもの優雅に撮っている場合じゃなくて、とにかくウルサン行きKE1613便の表示を探してゲートに向かいました。
ゲートに着くとバスでのボーディングだと言うことがわかりました。地上から狙える喜びと、1番に搭乗して機内を撮れない悲しみが交錯しますね。でも基本的にバスボーディングは好きですよ。何せ目の前で機体を見られるわけですから。
機体に近づくバスの中から撮影。狙い通りのアングルが撮れました。第一印象は
意外と大きくてスマート
という感じでした。
機首は最近の飛行機の顔をしています。787のように窓枠の下にくぼみがなくのっぺりした印象です。窓の数も787と同様に4面の曲面ガラスになっています。
まず機体を撮影するために少し列から離れます。
続いてエンジン。これはPW1500Gシリーズと呼び、プラット&ホイットニー社が開発した最新の高効率エンジンです。MRJやA320neoについているエンジンと同じシリーズエンジンでギヤードターボファン(GTF)エンジンという種類です。そしてバイパス比は12:1。このクラスのエンジンでは驚異的な数字を誇ります。元々エンジン径が小さいのでバイパス流がほとんど。燃やして噴射する燃料なんて微々たるものですね。
遠くから全景を眺めて見ます。広角レンズの効果もありますが、A220-300はA220の長胴型とあってスマートだと感じます。何となくA320のようにも見えますが、顔が違うので「ん?違うよな」と思い直します。
この日の気温は氷点下。とにかく寒かった…。手がかじかむ中、最後までエプロンに残って撮影しました。
ちなみに、反対側にもA220-300が。搭乗時点で大韓航空には2機のA220-300が導入されていたんですが、この時は2機が仲良く隣同士で並んでいました。
タラップからKorea Airのロゴが入るよう超広角で撮影すると、もう何だか別の飛行機みたいですね。
2-3の理想的な座席配置
一陣目の最後の乗客となってしまったので、機内前方から誰もいないキャビンを撮ることはできませんでした。通路で詰まりながら、空いている座席を撮影しながら機内に入って行きましょう。1列目は広いです。
こちらは前方5列のみに設定されているエコノミープラス。通常のエコノミークラスが31~32インチのところ、エコノミープラスは36インチと4~5インチ(10~13センチ)も広くなっており、非常に快適な座席です。往路はエコノミークラス、復路はエコノミープラスに乗りました。
反対側は3人掛けとなっています。そう、A220の座席は2-3配置の5アブレストなんです。最近の旅客機で言えばMD-90と同じ座席配置です。中国初の国産ジェット旅客機ARJ21とも同じです。
こちらはエコノミークラスの2席。31~32インチというシートピッチはいわゆるフルサービスキャリアの標準的なシートピッチです。特に窮屈感は感じませんでした。
また横幅も広いんですよ。同じ座席配置のMD-90よりも客室径が14センチ広いんです。なので座席の幅もMD90に比べて2~3センチ広くなっています。それだけでも快適さがわかりますよね。
737みたいな3-3配置で4人家族で行くと、必ず誰かがはみ出してしまうので、乗るのがちょっと億劫になりますが、2-3配置ならば、2人連れなら2人掛け、3人連れなら3人掛け、4人連れなら2人掛け2つとバラバラに座らなくて済みます。2-3の配置はどんな組み合わせにも対応できる魔法の配置なのです。
あと、満席じゃないときも極力窓側か通路側に座れて都合がいいですよね。理論上は搭乗率8割で必ず窓側か通路側に座れます。
ちなみにこちらは非常口席。エコノミーコンフォートよりもうんと広いです。ここの料金はエコノミークラスなので相当な勝ち席ですね。
こちらは飛行中に機内を後ろから撮影したものですが、2-3の座席配置は本当にいいですね。なんだか737よりも余裕があるように感じませんか?A220の特徴とは、
ナローボディなのに広く感じる
ところなんです。
A220の機内の特徴を紹介
ナローディ機になるとコンパクトにまとめられ過ぎてなかなか機内の特徴を見つけるのが難しいのですが、見ていくと「お、これはいい!」と思えるところが幾つかあり、「さすが最新の旅客機だ」と感じました。天井パネルは至ってシンプルです。こんなところを豪華にしても無駄ですからね…。
テーブルはかなり広いです。しかも背もたれの上にポケットが付いているので足元は広々としています。ポケットがシートに一体になっている感じもスマートですね。足元はシートピッチ以上に広さを感じられます。
何と座席にはUSBポートも装備。USBポートがあればスマホやカメラの充電ができるので非常に便利です。(ちなみに往路は電源が供給されておらずスマホ充電できず。復路はできました。)
座席はこんなものとして、その他の装備として一番驚いたのがこれ。
トイレに窓があるんですよ!
反対側(機首に向かって右側)のトイレはおむつ替えのベッドも備え付けられていて、どんな乗客のニーズにも応えられるようになっていました。ちなみに車椅子対応のトイレです。小型機でこの大きさのトイレは贅沢ですね。しかも左側も右側も窓付きというところがとても贅沢じゃないですか!
トイレ奥から見るとこんな雰囲気。手洗いのシンクも大理石調でゴージャス!
続いて客室の窓。
737やA320の窓に比べて圧倒的に大きいんです。トリプルセブン並の大きさらしいです。最近では100席クラスの小さな旅客機でもこんなに大きな窓が付けられる時代なんですね。
20分遅れで出発
ボーディングは完了したんですがなかなか出発しませんでした。金浦空港混雑のためです。出発したのは16時20分のことでした。隣にいたもう1機のA220は一足先に浦項(ポハン)へと旅立って行きました。
この機材にシートモニタはありませんので、セーフティデモはクルーがやります。
まさかのRTOも、GTFエンジンは快調?だった
さぁ初めて乗るA220。この瞬間が楽しみなんですよねー。ギヤードターボファンの音はどんなものか、低騒音性を売りにしているA220はどれくらい静かに離陸するのか。ドキドキしますねー。位置についてヨーイ、ドン!
しかしこの後、まさかの
RTO(離陸中止)という緊急事態
が起こりました。その詳細は以下の記事にまとめてありますので、ここでは話を前に進めましょう。(RTO:Rejected TakeOff)
機体は再びランウェイに入ります。
そして気を取り直して2度目の離陸!
2回目の離陸滑走は大成功。見事宙に浮かびました!これで胸を張って「A220に搭乗した」ことになりますよね。心の中で拍手をしました。
ここでエンジン音について。やはりバイパス比12:1のギヤードターボファンエンジンは静かでした。小型機エンジンの特徴であるキーンと言う高周波音はかなり抑えられ、ウ~ンという低い音から始まりビーンっという比較的低めの音が奏でられます。さすがに787や777みたいなワッサワッサした音ではありませんが、あれに比較的近い音がしますね。A320neoに乗ったときも同じような感覚を持ちました。バイパス比の大きなエンジンに特徴的な音でした。そしてそもそもの音量も圧倒的に小さいです。
金浦空港は北西向きに上がったため、南東方向にあるウルサンへは180度旋回で向かいます。90度ずつ2回旋回して一路ウルサンを目指しました。
慌ただしい55分の国内線
離陸後20分を過ぎたところ、スポイラを立てて降下を始めます。え?もう降りるの?って感じです。
もちろん機内サービスで飲みものくらいは提供されるんですが、機内の写真を撮っていたら立ったまま手渡しでくれて、席に戻らざるを得ない状況に…。なんだかクルーはえらい忙しそうです。前から後ろからカートが攻めて行って、飲み物を配り終えたらすぐに回収に入っていました。55分じゃ余裕あるサービスは無理ですね。
ウルサンが近づくと一旦海の上に出ました。
もう到着なんてちょっと早過ぎますよね。CS300をもう少し堪能したかったです。でも韓国は狭いので国内線は1時間くらいがせいぜいで、2時間もかかるような便は有り得ません。
初めて見るウルサンという街
この日は北風が強かったため、南北に走るウルサン空港へは南側からのアプローチになりました。一旦南側に出て北を向けてアプローチします。眼下には工場地帯が見えてきました。石油コンビナートです。羽田から金浦に向かっていたときに隣に座った韓国人男性に「ウルサンってどんな街ですか?」と聞いたところ、「ウルサンは工業都市です。」なんて言っていました。まさにその言葉通りの景色でした。
工場地帯を抜けると今度は住宅街が…。高層マンションが立ち並んでおり、なかなか発展した都市の印象です。
続いてスタジアムなども見えますね。調べるとウルサンは人口100万人の都市だそうです。
RWY36に着陸。スポイラを全て立てて減速します。ウルサン空港は滑走路と平行な誘導路がなく、一旦滑走路端まで走っていきUターンしてターミナルビルに向かうんです。韓国の空港ってあんまりお金掛けてないんですかね?
ターミナルビルが見えました。ボーディングブリッジが2本の小さなローカル空港の印象です。
到着は定刻から約30分遅れの17時22分でした。
そして降機。いきなり、RTOというトラブルに遭いましたが何とか飛んでくれて、
A220への初搭乗が叶いました!
無事にウルサンに着けて本気でホッとしました。
激しくローカルなウルサン空港
次の便は折り返し便、チェックインはオンラインで済ませているのでそんなに急ぐ必要はありません。何せ小さい空港ですから、一旦到着ロビーに出て、出発階に上がるだけですから。手荷物受取所にはゆるキャラ?が…。
出口を出たところには「かつら」という日本料理屋さんが。ウルサンって日本と深い関係があるんでしょうか?
そして到着口の隣がチェックインカウンター。えらい、さびれた感じがします。人口100万人の都市でこの空港は小さいですよね。
この出発ボードを撮っていたら、パネルの下にいた空港のオジサンに異常に不思議がられて、「オマエ何やってんだ?」みたいなことを言われたので、「いや、飛行機乗りに来たんすよ。今そこにいる新しいヤツ。」と言ったら「あ~あ~それね~!」みたいな感じで納得してくれました。空港の係員レベルになると、ウルサンに新しい飛行機が飛んで来ているというくらいは知っているようでです。
2階にはセブンイレブンがありました。
保安検査場内に入るとコーヒー屋さんが1件のみ。
2つあるうちの2番ゲートには誰もおらず…。
1番ゲート周辺には人がたくさん集まっていました。この時点で40分遅れのため、「早くしてくれよー」とちょっとだけ苛立った感じでした。
帰りの便は2時間遅れ
そしてやっと搭乗。この後、金浦空港から羽田行きのANA便に乗り継ぐのですが、時刻表上で2時間の接続時間しかありません。ちょっとヤバいなーと感じたので、ANAには乗り継ぎがギリギリになる旨を電話で連絡しておきました。今度はトラブルなく飛んでくれよ~。とコックピットの中に向けてお祈りしました。
ドア部分の曲率を見ると737よりも一回り小さいなーという感じがしますね。そして足元に注目!「C-Series」の文字が描かれています。
帰りの便はエコノミープラス。かなり広く感じました。シートピッチは36インチありますので、日本国内の普通席最大であるスターフライヤーよりも2インチ(5センチ)広いことになります。これは快適でした。
こちらが問題があると思われるエンジン。
そしてこの後、エンジンのトラブルかどうかは不明ですがさらに遅れが発生します。全員揃ってもなかなか出発しないのです。ここでジタバタしても仕方がないのですが、遅れが1時間に到達したとき、大韓航空にも乗り継ぎがあることを伝えないとマズいと思ったので、僕は意を決して席を立ち、まだ開いていたドアを出ました。
「僕、この後、乗り継ぎがあるんですけど…」
(中間のやりとりは省略)
ここで何を言っても状況は変わらないのですが、乗り継ぎに間に合うようならケアをお願いする旨だけは伝えました。大韓航空のスタッフはあちこちに連絡をしてくれ、恐らく氷点下のボーディングブリッジで30分くらいやりとりをしていました。
最終的には不具合が解消したらしく、
「もうすぐ出るから乗って乗って!」
と言われ乗り込みました。結局17時35分発だった飛行機は19時40分にプッシュバック。所要時間は55分なので、到着予定は20時35分。僕の乗る羽田行きは20時30分発なので、この時点で乗り遅れは確実になりました。
そして離陸、巡航は非常にスムーズ。やがてソウルが近づくと煌く夜景が見えました。
夜景が綺麗…。でも僕は乗り遅れぃ…。
そんなわけで、金浦では手厚いケアをしてもらえ、ホテルまで用意してもらえました。他の客も同じような人が4~5人おり、僕と香港に行く予定だったというもう一人の男性で、怪しいワンボックスに乗ってホテルに向かいました。
そして翌日、朝のANA羽田行きは逃しましたが、昼のANA羽田便に乗れまして、特別な出費をすることなく帰ることができました。最終的には大韓航空とANAの配慮で無事帰国することができたのは非常にラッキーだったと思います。金浦空港の両社スタッフの皆様には大変感謝しております。
乗って感じたA220の特徴とは
というハプニングはありましたが、今回は金浦=ウルサンの往復で2回、A220に乗ったわけです。A220という飛行機は一体どうだったんでしょう。まず、エンジン音がいいですね。サウンドが心地良いというのに加えて静寂です。そして窓が大きいですねー。まるで大型機に乗っているようでした。
キャビンも広いです。ホントは737よりも狭いはずですが、A220のキャビンは3-3配置の737よりも広く感じてしまうほど。2-3配置は魔法の配置ですね。2-3配置を体験すると他の座席配置には戻れません。2-2ならもっと快適じゃないかと思うかも知れませんが、2-2だと今度は天井が低くなるんです。その中間の2-3は広さのバランスが絶妙で非常に快適でした。あとトイレも広いです。窓付きのトイレは明るくて開放感がありました。
一言で言うと、A220は見た目のサイズ感と実際に乗ったサイズ感が合わない飛行機だと感じました。見た目は小さいですけど、乗ってみると見た目より広い。それがA220の最大の特徴です。
大韓航空CS300の合計の発注機数は10機ですので、今後の路線展開はどうなるんでしょうね。国際線にも投入できる十分な航続距離がありますので、韓国国内線だけでなく需要の少ない国際線に就航してもいいはずです。日本のローカル空港への便にも最適だと思います。お隣の韓国に行けばすぐに乗れますので皆さんも是非ぜひ乗って下さい。
大韓航空に限らず、その使い勝手と快適性を売りにしてA220がもっともっと世界に広まればよいと思いました。A220は世界一快適なナローボディ機だと思います。
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