イケてる航空総合研究所

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ボーイングの資金繰りが急速に悪化、このまま倒産してしまうのか【借金してでも自社株を買う株主優先の財務体質が明らかに】

ボーイングが倒産寸前?

全世界の市場から資金が逃げ出しているパニック相場の今、僕が注目しているのが米ボーイング(Boeing)の動向です。毎日、Boeingのニュースと株価をモニターしています。


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3/17にはこんなニュースが出まして、冷やっとしました。

www3.nhk.or.jp

17日には、取引銀行が先月設定した融資枠の138億ドル、日本円で1兆4800億円から資金をすべて引き出したとして、資金繰りが急速に悪化していることが分かりました。

Boeingは737MAXの運航停止問題による資金繰りの悪化で、銀行から多額の融資を募っていたんですが、現金確保のため資金を全て引き出すことになってしまったというのです。いかにお財布事情が苦しいかがよくわかります。

会社にとって現金というものは非常に大事でして、たとえ黒字だったとしても、手元に現金がない、そして誰も貸してくれないとなると会社は運転資金が尽きて倒産してしまいます。

会社にとって現金を確保しておくと言うことは非常に重要なことです。その現金を全て引き出してしまったということは、家計で言えば預金がなくなったのと同じで、今すぐに現金が入ってこない限り倒産の危機に直面していることになります。

ボーイングは737MAXの問題で機体を販売できておらず、すぐに現金が入ってくるような状況にはありませんので、新たな現金の貸し手が現れない限り本当にヤバいことになります。

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トランプ大統領が支援を表明

数日後に流れたのがこのニュース。やはり本当に資金繰りがヤバいことを示唆しています。

www.nikkei.com

記事には、

トランプ大統領は総合的な経済対策を表明した17日の会見で「ボーイングを助けなければならない」と明言した。

と書かれています。何だかリーマンショックの時のデジャブのようです。GMが倒産の危機に立たされた時も同じようなことを聞いた気がします。その後GMは破綻しました。

しかし、記事をよく読むとこんなことも書かれています。

金融業界ではボーイングの信用リスクを問題視する見方はそれほど多くはない。737MAXは運航停止が続くものの、生産能力の7年分の受注残を抱える。カナダの投資銀行カナコード・ジェニュイティのアナリスト、ケン・ハーバート氏は「運航が再開すればすぐにキャッシュフロー(現金収支)が改善に向かう」と資金繰り懸念を否定する。

あれ?あんまりヤバくないの???

なるほど、今は737MAXの出荷が止まっているから現金(キャッシュ)が入らないわけで、出荷が始まればワサワサと現金が入ってくるわけです。737MAXの運航再開は今年夏頃と言われており、そこまで待てば現金が入ってくるんです。

しかしコロナショックの影響でエアラインは経営がズタズタになっているため、たとえ安全性が確認できたとしてもエアライン側が受け取ってくれないということもあり得ます。今さらながらも大量キャンセルの可能性だってあるのです。

ただ、エアライン側もコロナショック前には「散々待ったせやがって、待たせた分、違約金よこせ」と言っていたため、今さら受取拒否、受注キャンセルなんてできないとは思いますが…。

一方で逆の展開もあり得ます。737MAXは燃費がいいため、エアラインはコロナショックを機に、余っている古い737NGを捨てて737MAXに置き換えるかも知れません。

こればかりはどちらの展開になるかわかりません。

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株価は100ドル割れ

ここで株価を見てみましょう。


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ボーイングの株価は3月20日の時点で100ドル割れの95ドル、ついこの前まで400ドル程度の水準だったのに、ここ1ヶ月くらいで1/4にまで下げています。NYダウ構成銘柄の中でも特に下げが激しく、資金繰りの悪化、そして倒産の危機が株価に織り込まれているのが読み取れます。

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ヤバ過ぎるボーイングの財務体質

やはりここまで来ると、本当にボーイングがヤバいのか気になりませんか?

ということで、ボーイングのAnnual Reportを見てみました。


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こちら財務データのサマリページです。2019年は737MAXの問題があり純損失。本業での現金収入である営業キャッシュフローはマイナスです。にも関わらず配当を出し、しかも配当が昨年よりも多いんですよ。

「は?どんなキャッシュフローになってんの?」と思いませんか?ということで、突っ込んで見て行くと、


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一昨年までの2年間は営業でプラス、投資と財務でマイナス。本業で稼いだお金を投資と財務(借金返済や配当)に使っている健全なカタチです。

一方で2019年は営業でマイナス、財務でプラスという本業では稼げなかったので、借金でキャッシュを確保している様子がうかがえます。

というところまでは「しゃーないか、お金ないんだし」って理解できるんですが、「なぜ配当ができるのか?」というところが気になりませんか?さらに突っ込んで行くと、ボーイングのヤバい体質が浮かび上がってくるんです。


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(Annual Reportから財務キャッシュフローの主要な部分をグラフ化。少額は無視。)

財務キャッシュフローの大きなプラスの中身を見ると、債務(借金)返済のためだけではなく、自社株買いと配当をするために多額の借入をしていることがわかるんです。配当だけではなくて借金をしてまで自社株買いをしているとは!

自社株買いは株主還元の一つの方策です。(償却すれば)発行済株数が減るため、1株あたりの利益が増えるんですよ。すると株価は割安(PERが低下)になり、ますます株価が上がるんです。そんなカラクリでボーイングの株価は上昇していたんです。

「こんな経営アリ?」と思ったので「自社株買い 借金をしてでも」とググってみたところ、すぐにこんな記事が出てきました。

www.nikkei.com

記事を引用すると、

米企業では財務の健全性よりも、稼いだ利益を株主に還元することを優先する意識が強い。株価上昇に連動して経営陣の報酬が上がる仕組みをとる企業も多く、過去数年は株価重視の利益分配が強まっている。

どうやら米企業にはこのタイプは多いみたいです。会社は誰のものかと問われれば真っ先に「株主のものです」と返ってきそうな米企業ですもんね。

ちなみに記事の前半部分にはこんなことも書かれています。

米有名企業が債務超過となる事例が続いている。2019年はスターバックスやボーイングなどが加わり、債務超過額の合計は650億ドル(約7兆2千億円)と金融危機だった08年以来の高水準となった。低金利で借り入れた資金を使って利益を上回る自社株買いや配当を実施し、資本を取り崩したためだ。稼ぐ力を持つ企業が多いとはいえ、株主還元に傾斜した財務戦略は金融環境次第で経営不安につながるおそれもある。

なるほど、ボーイングは債務超過に陥っていたんですね。この記事は今年の2/13のもののため、まだ市場には楽観論があった頃です。そして「金融環境次第では経営不安につながる」と予言されています。まさに今がその状態です。

この記事を読んで、ボーイングは「優れたモノ作りの会社」から、「単なる投資家向けの会社」になってしまったのかとちょっとだけ悲しくなりました。737MAXの事故は技術的な分野を軽視した経営陣の下で、起こるべくして起きた事故のような気がしてなりません。

ちなみに3月21日には、配当を停止するというニュースが流れました。

www.nikkei.com

新型コロナウイルスの影響拡大で航空機の需要低迷が見込まれることから、配当を止めて資金確保を優先する。

また、政府に支援を求めたことに対し、

同社はコロナ危機に伴い米政権に資金支援を要請したが、配当を出しながら政府支援を求める姿勢に批判も出ていた。

という批判も出ているようで、上記の財務キャッシュフローからすると当然な気もします。

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それでも最後はToo Big Too Failか

ここまで分析をしてきましたが、ボーイングはこの先一体どうなるんでしょうか?本当に倒産してしまうのか。リーマンショック後にはGMが破綻しましたのでやはり心配ですよね。

ただ、ボーイングが破綻したら大変なことになります。破綻したところで、政府支援の下、事業の継続はできますが、市場に与えるインパクトが大きすぎます。やはり、Too Big Too Fail(大きすぎて潰せない)という考え方の下、なんとかするんでしょうか。今のトランプ政権下では、甘い対応になる気がしてなりません。


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ボーイングのエバレット工場は名実ともに世界最大の工場です。まさにToo Big Too Fail。この会社を潰せるものなら潰して見ろというところでしょう。

ボーイング破綻回避へのポイントは2つあると思います。

繋ぎ資金を確保できるか

737MAXを出荷できるか

ということです。既に造られた737MAXの在庫は500を超えているはずですので、737MAXの在庫が掃けて行けば、自動的にキャッシュフローは元に戻るはずです。現況のキャッシュフロー苦しさは、737MAXが出荷できないことにあるんですから。

ボーイング株は買いなのか

最後に、ズバリ、今、ボーイングの株は買いなのか、ってことについてですが、、、

僕は中立です。

どうなるか本当にわかりません。何か不測の事態が起こり上場廃止になる可能性だってありますし、予定通り737MAXが出荷され始めれば爆上げするかも知れません。

ただ、絶対に破綻などしないと思われる方、

今は大バーゲンセール

だと思います。今買わずにいつ買んですか?

あ、投資判断は自己責任でお願いしますね(笑)。

(会計はあまり得意ではありませんので、誤解や間違った言い回し等あったらお許し下さい。)

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