韓国がホワイト国から除外に
昨日(2019年8月28日)、ついに日本は韓国を輸出管理上のホワイト国から除外しました。日本と韓国との間に一体何が起きたんだ?と思っていらっしゃる方は多いと思います。ホワイト国から除外、じゃあ韓国はブラック国になったんだ、と真剣に思っていらっしゃる方、結構いますよね?ホワイトの反対はブラック、ブラックと言えばブラック企業、そんな勝手な連想で韓国が悪い国になったんだと思っているのではないでしょうか?今回は、非常にあっさりと韓国がホワイト国ではなくなった意味を解説したいと思います。正確性には欠けるかも知れませんが、何となく分かったという感覚で、実はそんなに大したことじゃないということを理解して頂ければ嬉しいです。
本気で輸出管理をやっている人から「それは違うだろ!」とツッコミが入ってしまうかも知れませんが、逆に初心者の方にはなんとなく概要がわかる内容にしたいと思います。
輸出管理は世界平和のため
僕たちが海外に何かを輸出するとき、それが核兵器などの大量破壊兵器や通常の兵器になるものではないか、または大量破壊兵器や通常兵器に転用され得るものではないかどうかを事前に確認し、該当するものであれば経産省に許可を求めることが義務付けられています。根拠は外為法(外国為替及び外国貿易法)です。何故そんなことをするのかと言うと、要は「世界平和のため」です。日本は戦争をしない国なので日本が世界平和を壊すことはないんですが、日本から輸出したものが他国に渡り、それが大量破壊兵器になって世界平和を脅かすことになれば、日本としても世界に対してメンツが立たないですよね。日本以外の国でも世界平和への想いは共通です。
日本から海外へ何かを輸出する際に、世界平和を守れるかどうか自分の責任で確認しましょう。そして怪しいものがあればちゃんと国(経産省/経済産業大臣)に許可を求めて下さい。そして許可されれば輸出してもよいですが、ちゃんと経産省は把握(管理)しておきますからね。と言うのがいわゆる輸出管理の主旨です。
目に見えて大量破壊兵器や通常兵器であるものは輸出できませんが、その物や技術を使えば兵器になり得るもの輸出する際には、ちゃんと経産省に届け出て許可を得ないといけないことになっています。後から出てきますが、例えば、原子力関連の材料や装置、ミサイル関連の装置、通信関連の機器などが該当します。
もちろん、食料品や木材など、明らかに大量破壊兵器になり得ないものについては申請も許可も不要です。そんなことをしていたら、輸出の手続きだけで時間が掛かり、貿易が滞ってしまうからです。
ただし許可なしで非常にグレーなものを輸出してしまうと、後々罰せられる可能性がありますので、輸出する者は、輸出前に輸出許可が必要かどうか確認をする必要があるわけです。
その確認や許可申請を輸出する者が自分の責任でやれと言うわけなんですが、これは輸出と言う行為が非常に難しい概念だからです。国の責任で空港や港で止めろよなんてレベルじゃないんですよ。
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口でしゃべっても輸出
ここで、輸出という行為に関してなんですが、経産省が規制しているのは「貨物」と「技術」の2つがあります。貨物は目に見えますし、実際に輸出国に動くのが見えますし、ヤバい貨物であれば空港や港で止めることができますが、「技術」はカタチがないため難しいです。「いや、技術は紙の形をしているじゃないか」って?
いやいや、今や電子ファイルという形がありますよね。ワードやエクセル、パワポ、PDFなんてクリック1つで輸出できてしまいます。何となく形があるようにも思えますが、パソコンの中のどこに入っているのか見えませんし瞬間移動が可能です。
しかもまだ電子的に存在してるのならマシな方です。技術って頭の中にもありますよね。僕しか知り得ないブログ運営のノウハウとか(笑)。
その頭の中にあるノウハウは紙や電子媒体にアウトプットしなくても、口で出せば海外へ出て行ってしまいます。そう、技術についてはしゃべっただけでも輸出になるんです。
さらにに注意したいのが国内にいても輸出が成立してしまうという点です。例えば僕がミサイルの技術者だったとします。韓国人が日本に旅行にやってきて、スタバで僕とお茶をしながらミサイル技術について話しました。はい、これだけで輸出完了です。こんな風に技術はいとも簡単に輸出ができてしまうわけなんですよ。
細かく言うと、日本企業の海外駐在員(日本人)に対して話すのは輸出に当たるのか?とか細かいルールはあるんですが、とりあえず、理解して頂きたいのは、輸出には「貨物」と「技術」があるということ。もっと言えば輸出するものは必ずしも形のあるものじゃないということです。
これが自分の責任で確認して下さいという所以です。輸出とは国が空港や港で止められるレベルのものではないのです。
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リスト規制とは
さて、ここで疑問です。一体どうやって輸出許可が必要かどうか判断すればよいのでしょう?はい、これは経産省がちゃんとリストを作ってくれています。俗にリスト規制なんて言うやつです。正確には別表第一の第1項から第15項なんて言ったりもします(貨物の場合)。
こちらがそのリストです。
上記に該当するものを輸出する際には、経産省(経済産業大臣)の許可が必要です。無断で輸出してはいけません。これはどこの国に輸出する場合でも同じです。米国でも韓国でも同じです。ここにホワイト国とやらの概念は出てきません。とにかくダメなものはダメ、いいものはいいという考え方です。
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ホワイト国と非ホワイト国の違い
次に出てくるのが、どこに輸出するのか?という輸出先(仕向先)という概念です。ここでやっとホワイト国と非ホワイト国の差が出てきます。ホワイト国とは以下の国を指します。(正確には2019年8月2日より、ホワイト国という呼び方はなくなり、グループAと呼ぶことになりました。しかし、わかり易いため本記事では継続してホワイト国と呼びます。)
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
この27か国です。これらの国は日本と同様に輸出管理がしっかりしており、日本が輸出したものを非ホワイト国へ再輸出しない(迂回輸出)など、厳格に輸出が管理されている国のことです。
そして非ホワイト国はそれ以外の国と考えてもらえればよいと思います。(他に武器輸出禁止国というものがありますが、あえて説明は省略します。)
リスト規制に該当しない貨物または技術を実際に輸出するとなったとき、輸出先がホワイト国ならばそれ以上の確認をしなくてもよいことになっています。輸出先がホワイト国ならば、ちょっとだけ楽になるということです。これがホワイト国の優遇措置と呼ばれるものです。
キャッチオール規制とは
逆に非ホワイト国へ輸出する際には、リスト規制に加えて追加の確認が必要になります。これがキャッチオール規制というものです。そしてキャッチオール規制にも該当しなければ、経産省の許可なしで輸出が可能です。逆にキャッチオール規制に該当すれば、経産省に申請し輸出の許可が必要になります。キャッチオール規制はその名の通り、キャッチ、オールと言うことで全部を捕まえるという意味です。非ホワイト国はちょっとだけ信頼度が低いので、と言うとすごく語弊があるのですが、ニュアンスとしてはそんな感じで、非ホワイト国へ輸出する際にはもう少し細かく品目を見て輸出可能か判断しましょうと言うルールになっています。
要するに、ホワイト国は1次試験をやれば合格(不合格になる場合もあります)、そして非ホワイト国は1次試験に合格しても、2次試験をしないといけないということなんですよ。
これはあくまでもイメージですよ。
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非ホワイト国の方が断然多い
ここでもう一度ホワイト国を書いておくと以下の通りです。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、アメリカ合衆国
たったの27国しかないんですよね。それ以外の国は元々キャッチオール規制の対象です。韓国がホワイト国から除外されたということの意味は、輸出管理上のランクが1ランク下がったというだけなんです。他のほとんどの国と同じになったというだけの話です。
日本との貿易額が極めて多い中国だって、先進国のシンガポールだって非ホワイト国です。単にそれらの国と同ランクになったと考えることもできます。
まとめ
最後にまとめると、ホワイト国であろうが非ホワイト国であろうが、輸出に対して経産省の許可が必要なものは決まっていて、それはリスト規制によって判断します。これは韓国がホワイト国であろうがなかろうが変わりません。変わるのは、輸出先によって追加の規制(キャッチオール規制)があるかないかです。ホワイト国であれば1次試験(リスト規制)で終了、非ホワイト国であれば、2次試験(キャッチオール規制)があるということだけなんですね。
韓国へは相変わらず大量破壊兵器にならないものであれば輸出が可能です。そこは全く変わりがありません。基本的にこれまで白だったものは多分白なはずです。グレーなものがちょっと気になる程度ですかね?あとは判定の手間が増えるくらい。
韓国のホワイト国除外というのは、まぁその程度のことなのです。別に悪い国になったわけじゃないんですよ。そこら辺の国と同レベルになったというだけなんですね。
以上、大体わかって頂けたところでおしまいとさせて頂きます。
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