イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

デルタ航空747-400引退記念【デルタジャンボを語り尽くす】

デルタ747が日本の空から消えた

2017年10月30日、日本の空からデルタ航空の747-400(ジャンボ/ダッシュ400)が姿を消した。成田からデトロイトへ飛んだDL276便が最後の便となった。デルタ航空の747が世界の空からいなくなったわけではないが、デルタ航空は2017年いっぱいで747全機を引退させると宣言しているし、成田からは全ての747の定期便がなくなったとあって、747という機体の引退劇としては歴史的なものとなった。


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とても独りよがりな話になるが、僕がこれまで撮ってきたデルタジャンボの写真とともに、思い出話をしたいと思う。デルタジャンボの写真と言っても機内の写真ばかりになることをご了承頂きたい。というか、飛行機はそもそも乗り物、乗ってなんぼの世界だ。「乗り派」から見たデルタジャンボの思い出話こそ本物のストーリーである。

僕がデルタの747を愛する理由(わけ)

僕はANAの747よりもJALの747よりも、デルタの747の方がよっぽど愛着が沸く。それは自身最もよく乗った747だからであろう。名古屋は東京と大阪に挟まれるという地理的な特性からANAやJALの747には縁遠い場所だった。

米国出張が多かった頃、ほんの2~3年の間だったが、北米に行くときに使ったのがデルタ航空だった。一度のみデルタ航空便が満席で取れなかったことがあり、ANAのシカゴ線を利用したことがあったがその他の北米行きでは全てデルタ航空を使った。機種こそ、777、A330になってしまったことはあったが、ほぼ747に乗っていた。

こうして日本のエアラインから747が引退した後に、僕はデルタ747に最も多く乗ることになったのである。最盛期を知らず、衰退期にようやく747に本格的に乗り始めた僕は、危うく747を知らない航空ファンになるところだった。だからデルタ航空には、747を語れる資格を与えてもらった気がして少し感謝をしている。


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セントレアに当たり前に飛んでくる旅客便のジャンボとしてはデルタ航空の747が唯一だった。大韓航空が稀に747を飛ばしてくるが、それはあくまでもイレギュラーな話。単通路機が主流のセントレアの中で、超大型の747は群を抜いて目立つ存在だった。


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セントレア19番スポットから。デルタの747はいつも18番スポットか19番スポットにいた。


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19番スポットで翼を休めるデルタ747。元々はノースウエスト航空から路線を引き継いだものだ。僕の世代またはそれよりも上の世代の方だと、ノースエェスト時代のことを思い出す方が多いだろうと思う。実はデルタの747は全機ノースウエストのものである。


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こちらは成田で撮影したものだ。セントレア発着のビジネスクラスでアップグレードが叶わないと成田発着のデトロイト線に乗った。


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成田では降機すると一旦上の階に上がって機体を見下ろすことができた。航空ファンではなくても、ここから見る747の大きさに圧倒され、思わず写真を撮る人が多かった。


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セントレアの18番スポット、DL630便デトロイト行き。実はマニラ-中部-デトロイトという飛び方をしていた。いつしか中部-マニラの以遠区間がなくなり、それに応じて機材がA330になってしまったのは残念だった。あの時から747引退のカウントダウンは始まっていたのだ。

数えると僕がデルタの747に乗った回数は13回。少ないように思えるが、2年~3年という短期間に集中的に乗っており、しかも長距離路線のため、とてもたくさん乗っていたような感覚が残る。デルタ747はいつも僕の北米行きの相棒だった。大人になってから乗ったクラシック機だからこそ、より冷静に747という飛行機を見つめ、愛することができたと思っている。

アッパーデッキが好きだった

デルタ航空はアメリカのエアラインの中でも真っ先に座席に投資をして最新のプロダクトを提供している会社である。先日747と置き換わったA350を見ているとそれを顕著に感じる。個室になるドア付きのビジネスクラスを始めて世に送り出したのはデルタ航空なのだ。デルタ航空は、減っていく747という古い機体であっても、ヘリンボーンタイプのビジネスクラスをいち早く導入し、乗客の快適性の点で他のエアラインを圧倒していた。特にアッパーデッキのビジネスクラスはデルタ747の中でも特別な空間だった。


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747-400の直線状の階段。そこを登ると特別なプライベート空間があった。


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オールエコノミークラスにすると60人乗りの小型機を凌ぐほどのキャパシティがあるアッパーデッキ。ヘリンボーンのビジネスクラスにするとわずか14席しか配置できない。いかに余裕を持って座席を配置しているかがわかる。


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デルタ747のヘリンボーンはこのようにお互いに背を向けるリバースヘリンボーンタイプである。ドアはないが完全に互いに背を向けているので、プライベート感が非常に高かった。


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77Kが僕のお気に入り。数回の搭乗でここが最も快適な座席だということを悟った。


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この座席の最大のメリットは前に物が置けることだ。布団や枕、読み終わった新聞、飲み終わったグラスなどを置いておくと勝手に片づけてくれた。


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アッパーデッキは窓側にデッドスペースがあり、布団やカバンを置いておくのに重宝した。デルタ747に乗るなら絶対にアッパーデッキだと思っていた。


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また、アッパーデッキではいつもコックピットが解放されており、声を掛ければすんなり見学をさせてもらうことができた。陽気なクルーにそそのかされて、パイロットの帽子をかぶらされ、機長席に座って写真を撮ってもらったこともある。


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747に限った話ではないが、デルタ航空ではWestinのヘブンリー寝具を使用しており、サラサラな肌触りを持つ掛け布団がいつも快適な眠りと誘ってくれた。他のエアラインと一線を画す上質な寝具だった。


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747のアッパーデッキはメインデッキと比べて乗客が少ないし、キャビン前方にトイレがあるため、後ろの方に座ると自分の横を通り過ぎる人が少なく、とても静寂な空間だった。

メインデッキのビジネスクラス

続いてメインデッキの話をしよう。メインデッキではA、Bのコンパートメントにビジネスクラスが設定されているが、乗ったのはAコンパートメントに1回、Bコンパートメントに1回のみだ。アッパーデッキの快適性を知ってしまったら、もうメインデッキには戻れなかった。


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Aコンパートメントの先細りの空間は、他とは違って、747を象徴する特別感があったように思う。747のファンの中にはアッパーデッキが好きな人とAコンパートメントが好きな人の二派がいると思う。それだけキャビンの配置に多様性を持つ飛行機だと言える。

A380の場合はアッパーデッキがあるとは言え、メインデッキが2つあると考える方が自然なため747のような個性を出すことは不可能である。747以上に変化に富むキャビンアレンジが可能な飛行機は他にはないのである。


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こちらはBコンパートメント。メインデッキはアッパーデッキに比べて窓側の余分なスペースがなないため少しし使い勝手が悪かった。窓がやや上を向くアッパーデッキと比べて、メインデッキは外の景色が見やすいというメリットがあった。

地獄のエコノミーに差す一筋の光

僕の北米行きは基本的にエコノミークラス。しかしアップグレードの機会に恵まれたため、ビジネスクラスに乗る回数の方が多かったが、アップグレードできないときはエコノミークラスで我慢するしかなかった。でもアップグレードが叶わなかったことで、エコノミークラスをいかに快適に過ごすかということを研究することができた。

デルタ747のエコノミークラス前方には、エコノミーコンフォートという、いわゆる「プレミアムエコノミー」相当の座席が装備されているが、エコノミーコンフォートは単にシートピッチが広いだけで、横幅はエコノミークラスと同じため、むしろ他のもっと快適な座席を探す方が合理的な選択となった。


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僕が座ってみて良かったと感じるのが、35列目のジャンプシートの前の席。翼の上のナンバー3ドアの横の席である。エスケープスライドがあるため、窓側の席がなく、通常3席のところが2席だけの列である。


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ナンバー3ドアのエスケープスライドのふくらみに物を置くこともできた。座ったり足を置くのはご法度だが、本くらい置いてもいいだろうと思い、ちょっとした物置きとして使った。エコノミークラスではモノを置く場所に困ることがあるため、この場所はとても重宝した。


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また51列目のナンバー4ドアの前の座席は前が広くて快適だった。しかし窓側に座るとドアのふくらみが邪魔をして満足に足を延ばせないのがマイナスポイントだった。非常口席でも足元が半分狭いという特別な席でもあった。ただし、他の席に比べれば十分快適な席である。

こんな風にエコノミークラスにも「勝ち席」と呼ばれるが快適な座席が幾つかあり、その席が取れた時には半日にも及ぶ地獄のようなエコノミークラスでの旅に一筋の光が差した気がした。勝ち席が取れなかったときでも、747の機内はとても広く、エコノミークラスのキャビンを前から後ろへ、後ろから前へと何周もして座り疲れた体をほぐしたりもした。A330の狭いキャビンではなし得なかった業だ。

ハプニングも経験した

デルタ747では様々なハプニングも経験した。13回のうちにこれだけのハプニングを経験できることも珍しい。

その中でも最も強く記憶に残っているのが、電気系統のトラブルで成田に緊急着陸したことだ。離陸して2時間後くらいに、座席前の画面がバシャンと落ちた。


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あとから聞いた話によると、アッパーデッキでは焦げ臭い匂いがしたらしい。2階部分に這わせてある配線が切れる等のトラブルだと思った。

太平洋上を飛んでいた飛行機はすぐにUターンを開始。少し落ち着いた頃、「成田に引き返す」という放送が入った。中部から飛んできたのに着陸先は成田だった。成田はデルタにとって東アジアでのハブ空港ということもあり、代替機材を確保しやすいのである。


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成田で降機するとボーディングブリッジを降りたところで数人の報道関係者が待ち構えていた。「え?何この人達?何かあったの?」というのがまずの印象で、緊急着陸だったと知ったのは代替機でデトロイトに着きニュースを確認したときだった。報道関係者の期待とは裏腹に機内は非常に落ち着いており、誰も不安を感じている様子はなかった。むしろシートテレビが見られず、機内食も食べられず、トイレも流れず、困った顔をしている人の方が多かった。

ニュースで緊急着陸と報道される中には、乗客には知らせない緊急着陸もあり、騒いでいるのはマスコミだけという場合があるということを強く感じた一件だった。

もう一つ、思い出深いのが、ちょうど出発する日に台風が来て、中部発デトロイト行きの便が成田経由になってしまったことだ。


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成田行きとなったDL630便。乗員繰りがうまく行かず、成田で乗員を入れ替えるというのが成田経由の理由のようだった。

全くの会社都合の経由便だったが、怒る人はおらず、僕はビジネスクラスに乗っている時間が長くなったのでむしろ嬉しかった。デトロイトからの乗り継ぎもちゃんと新しいものを確保してくれたため、デトロイト到着後もとてもスムーズだった。

さらに一つ、今度はデトロイト発中部行きの便で、離陸する滑走路が変わり、重量に対して滑走路長が足りなくなったことがあった。重量を減らすため20分くらい誘導路で待機をして、燃料を減らして出発した。どの滑走路も長いデトロイトの空港であるが、それほどまでに太平洋路線に使われる747の機体は重いのだということを痛感したハプニングだった。

このようにデルタの747では他では経験したことのないレアな経験を3回もした。特にトラブルによる引き返しはなかなか体験できることではないため、僕は相当に運が良かったのだと思っている。

ナンバー2ドアから見る主翼にしびれる

ここで、747-400の機内からの写真のベストショットを紹介したい。それはナンバー2ドアから見る主翼の写真である。片翼2発のエンジンにウィングレット、そして濃紺のナセルがたまらなくカッコ良かった。


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朝陽が正面から上がってきた直後の様子だ。日本かではこれから眠る時間なのに、毎回ここで元気をもらってしまい眠れなくなってしまった。


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夜が明けるとこんどはその濃紺が空の青にマッチする。エンジンを2基吊るす主翼には力強さがみなぎっていた。


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地球の自転と同じ方向に飛行しているため、時間が急速に流れ日本時間の夜遅くに夜明けを迎える。空が明るみ始めると僕はソワソワし始め、ナンバー2ドアに張り付く。


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太陽が昇るとエンジンインテークの銀色が真っ赤に染まり始める。太陽に向かって飛んでいるため、夜は一気に明けて行き、ほんの数分でこのような色は消えてしまう。だから僕は夜明け前から張り付く必要があったのだ。

この写真はナンバー2ドアからのものであるため、ビジネスクラスに座っていても、エコノミークラスに座っていても撮影することができる。エコノミークラスのときは特にこの夜明けが待ち遠しくて、座っているのもしんどいので、30分間くらいずっとナンバー2ドアの付近でウロウロしていることもあった。


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北米からの帰りのフライトでは冬の時期、天気がいい日はシベリアの雪原を見ることができた。これはもう、本当に、これまで空から見たどんな景色にも勝る感動的な光景だった。


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4発のエンジン抽気によって温められた機内から、生命が維持できないくらいに凍てついた大地を見ると、その正反対の環境に飛行機の凄さを思い知ったものだ。

デルタ王国のデトロイトにて

デトロイトに着くと周りはデルタ王国。大小さまざまなデルタ航空の機体に出会うことができた。デトロイトに行けば747がわんさかいると思ったら大間違い、意外とデトロイトには747が少なかった。いても2機程度だった。元々最大で16機しか保有していなかったのだからそれも頷ける。

その代りに多かったのがA320やMD88などの小型機、CRJやERJなどのリージョナルジェットだ。ただ、小さな飛行機に混じって圧倒的な存在感を示していたのがやはり747だった。


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角度によっては可愛くもカッコよくも見える747。この角度から見るとちょっと可愛いらしくも見える。


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ターミナルビルを歩いていると、747をカッコイイと思う瞬間はいつも遠くから眺めるときだった。手前にあるものを全てシルエットにしてしまえば、747だけがくっきりと浮かび上がる。デトロイトで撮るこんな構図が僕は好きだった。


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もうひとつ、忘れてはならないのがターミナルビル中央にある噴水である。この噴水と747の相性が抜群なのは、卵型の胴体断面が放物線と重なり合うからであろう。噴水の前のスポットに747が駐機してくれないと撮れないショットでもあった。


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アップグレードが叶わず、エコノミークラスしか取れなったときにはこのコブが恨めしくも思え、逆にアップグレードが叶ったときには、撫でまわしたくなるような可愛いコブに思えた。

僕にとってデルタ747とは

僕の気持ちを運んでくれるタイムマシン。

日付変更線を考えなければ、北米行きの便では時間はめまぐるしく早く流れ、日本は深夜だというのに着いたら昼。反対に日本へ帰国する便では、時間がゆっくり進み、半日以上も飛んでいるのに太陽はほとんど動かず、時計の針は2~3時間進むだけ。太平洋上のどこかに時空を超えるトンネルがあり、その中に入ると時間の進む速さが変わる。デルタ747はそんなトンネルの中をくぐり抜けるタイムマシンだ。

形は途中まで二階建て、途中から一階建てに変わる。コックピットより前に乗客が座ることもあって、後ろに行くほど苦痛を伴う。なぞなぞにしたら実に面白そうな形のタイムマシンが僕の相棒だった。

トンネルの中を東向きに進むとき、僕は不安と期待でいっぱいだった。トンネルを西に進むとき、僕は安堵と充実感でいっぱいだった。デルタ747に乗る時の気持ちは、行きと帰りで異なるもののいつも同じだった。毎回同じ想いを抱いた僕を、愚直に日本から北米まで、そして北米から日本まで運んでくれた。きっと今でもアッパーデッキに座れば、自動的に同じ気持ちになるんだと思う。

そんな相棒が引退することに一抹の淋しさを感じるが、実はそんなに悲しい感情は湧いてこない。むしろ「よく乗った。もういいだろう。」という気持ちの方が強いのだ。

どの席が快適かという研究だってできたし、ハプニングだって経験した。ナンバー2ドアから見る光景にいつも感動していた。もう十分にデルタ747を堪能したのだ。それは大人になってから、しかも引退を意識しながら乗っていたからかも知れない。

しかも自身のブログでデルタ747について語ってみると、写真と文章に残せばいつまでも色褪せないのではないかと思えてくる。10年後にこれを読み返してみても、きっと鮮やかなデルタ747が蘇るだろう。

Goodbye?Farewell?さようなら?

そんな言葉は似合わない。僕の記憶の中に、そしてスクリーンの中にデルタ747はずっと存在し続けるのである。


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