イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

機内でのソーシャルディスタンス確保で運賃は最低でも1.5倍に。しかし快適なエコノミークラスが約束される。

機内での社会的距離が話題に

ここのところ、機内におけるソーシャルディスタンス(社会的距離)が話題になっています。日本でも複数のエアラインで指定不可の座席を設け、乗客同士の距離を空けるような取り組みが進んでいます。

単一機種で運航しているエアラインがわかりやすいので例示すると、スカイマークでは3-3配置の中央席を指定できなくするとか、FDA(フジドリームエアラインズ)ではE170(175)の2-2配置の通路側を指定できなくするとか、そういった取り組みです。

【スカイマークの案内】
www.skymark.co.jp

【FDAの案内】

f:id:flyfromrjgg:20200520225208p:plain


続いてJALですが、JALには多くの機種がありますので、その一部がHPで紹介されています。

【JALの案内】

f:id:flyfromrjgg:20200520225049p:plain

例えば737は3-3の中央席を空ける、787の2-4-2の配置では2人掛けは通路側を空け、4人掛けは中央席を2席空ける、というような方法で乗客同士の距離を確保しています。

ちなみにANAではこのような対応をとっていません。日本でも世界でも、エアラインごとにポリシーが異なる状況となっています。

スポンサードリンク


IATAは不支持を表明

基本的にソーシャルディスタンスは2mと言われていますが、狭い機内で2mという数値は非現実的ですので、隣を空けるくらいしかできません。例えば3人掛けの中央席を空ければ50㎝くらい空きます。飛行機の場合、電車とは異なり基本的に対面席はないですので、可能な限り距離を取るという意味で50㎝でも十分な気がします。

ただ、IATAは最近のエアラインの取り組みに対し支持しない姿勢を示しています。「機内は元々感染リスクが少なく、乗務員や乗客がフェイスシールドやマスクを着用すれば十分で、意図的に空席を作って販売をすれば、運賃が上がり格安の航空旅行はなくなる」という見解です。

www.iata.org

確かに、、、と思います。

この機内でのソーシャルディスタンス確保の動き、今は乗客が少ないからできるんですよ。コロナがある程度終息し、需要が戻ってきたら売れない席があるのは収益面から苦しくなるはずで、そうなったら「やはりソーシャルディスタンスはやめる」となる気がしています。

ただ、コロナ終息後もソーシャルディスタンス確保という機運が残り続け、航空会社が意図的に空席を作って座席を販売した場合に、どれくらい運賃にインパクトがあるのかを考えておくことは必要かと思います。

スポンサードリンク


収益的に優れる座席配置とは

それでは主な旅客機の座席配置から、機内でのソーシャルディスタンスを確保した場合、どれだけの数の座席が有効になるのか割合を計算してみます。ここでは有効座席率と名付けます。ルールとして「座席でも通路でも1人分空けば、ソーシャルディスタンスを確保できた」とみなします。

  • CRJ、Q400、E170など(2-2配置)

→2人掛けの通路側を空ける使い方になるため、有効座席率は2/4=50%になります。

  • A220、ARJ21など(2-3配置)

→2人掛けは通路側を空け、3人掛けは中央席を空ける使い方になるため、有効座席率は3/5=60%になります。

  • 737、A320など(3-3配置)

→3人掛けの中央席を空ける使い方になるため、有効座席率は4/6=67%になります。

  • 767など(2-3-2配置)

→2人掛けは通路側を空け、3人掛けは中央席を空ける使い方になるため、有効座席率は4/7=57%になります。

  • A330など(2-4-2配置) ※一部787

→2人掛けは通路側を空け、4人掛けは中央席を2席空ける使い方になるため、有効座席率は4/8=50%になります。

  • 787、A350、777など(3-3-3配置) ※LCCではA330

→3人掛けの中央席を空ける使い方になるため、有効座席率は6/9=67%になります。

  • 747、A380など(3-4-3配置) ※一部777

→3人掛けは中央席を空け、4人掛けは中央席を2席空ける使い方になるため、有効座席率は6/10=60%になります。

ここからわかることは、最大値が67%で最小値が50%ということです。3-3配置を持つ機体が最も有効座席率が高くなることがわかります。単通路機では737やA320双通路機では787、A350、777がそれに当たります。

スポンサードリンク


運賃は1.5倍から2倍に

機内でソーシャルディスタンスを確保すると有効座席率が50%~67%になることがわかりましたが、これを運賃に換算するとどれだけの上昇につながるんでしょうか?

有効座席率の逆数を取ればわかります。有効座席率が50%の場合は半分の座席が空いているのだから運賃は2倍になります。67%(=2/3)の場合は逆数の3/2、つまり1.5倍になります。

従って運賃の上昇幅は、

最低1.5倍、最大2倍

E170やA330を保有するエアラインは大ピンチですね。一方でLCCの主力機である737やA320を運航するエアラインではそこまで運賃は上がらない計算になります。なお、A330でもLCCでは3-3-3配置を採用していますので、LCCは総じてソーシャルディスタンス耐性が高いと言えるでしょう。

1.5倍の運賃上昇は大きいかも知れませんが、LCCにとって1万円の運賃が1万5千円になることがどれくらいのインパクトがあるのか…。3万円ならば4万5千円です。当然、元の金額が大きいほどインパクトは大きいですが、許容できないほど大きくはないように思えます。

スポンサードリンク


乗客目線では快適過ぎる

この議論、エアライン目線で考えると賛否両論なんですけれども、単純に乗客の快適性という観点から見ると実は非常に歓迎すべきことなんです。僕がブログで何度も書いてきた「隣が空席だったらどんなに快適だろう」ということが自動的に達成されるんですから。

僕はいつも飛行機に乗る時には「隣に誰も来ないといいな」と願って乗ります。乗る直前にゲートで隣に誰も来ない席に変えてもらうことだってあります。それくらい隣がいないことは快適性に大きな影響を及ぼすことなんですよ。

3-3の中央席を空けて運賃が1.5倍になると言うことは、端に座る2人が半分ずつお金を出し合って中央席を買っていることと同じですよね。だから運賃が1.5倍になるんですよ。

快適になる分、高くなる。

という当たり前なことが起きるだけです。

これまで自分だけの力で中央席を空けようと思ったら、隣の席を100%の価格で買う必要がありましたが、機内でのソーシャルディスタンスが義務化されたら、他人と共同して中央席を買うことができるんです。負担額は50%。そう思えば安いと考えることもできます。(2-2の配置の場合は、空席となる席を一緒に買ってくれる人がいないため、運賃が2倍になると考えることができます。)

IATAは機内でソーシャルディスタンスを確保すれば格安の航空旅行航空は終わると主張していますが、運賃が3倍にも4倍にもなることはないので少し言い過ぎな気もします。

恐らくコロナが終息して何年か経ったとき、果たしてソーシャルディスタンスという概念が残っているのか。残っていれば多少航空運賃が上がるかも知れませんが、今よりも快適なエコノミークラス旅が実現しているかも知れませんね。

世界はどちらに転ぶのか。これからの座席指定ルールに注目して行きましょう。

スポンサードリンク


flyfromrjgg.hatenablog.com

flyfromrjgg.hatenablog.com

flyfromrjgg.hatenablog.com

flyfromrjgg.hatenablog.com

flyfromrjgg.hatenablog.com

flyfromrjgg.hatenablog.com

ブログの内容は個人としての発言であり所属する組織・団体とは一切関係がありません。