台湾の新フルサービスキャリア
2020年1月23日、台湾に誕生した新エアラインSTARLUX(スターラックス/星宇航空)が就航しました。創業者は後継者争いでエバー航空を追われた張國煒という人物です。噂によると台湾のエミレーツを目指しているとかで、その豪華ぶりが期待されます。就航初便こそ逃しましたが、就航2日後に早速乗ってきましたのでその様子を徹底レポートしたいと思います。
やってきした台北桃園国際空港ターミナル1。そこに見掛けない航空会社のロゴを見つけました。STARLUX、STARと付くエアラインは身近にたくさんありますが、どのエアラインよりも強く宇宙をイメージさせる雰囲気ですね。
新エアラインにしては自己主張が弱め。特徴は、、、特にありません!コーポレートカラーも控えめであり、僕個人的にはそこにラグジュリアスエアラインの「能ある鷹は爪を隠す」的な野望すら感じました。
中国語で「星宇航空」、2レターはJXです。今日はマカオ(澳門)へ飛びます。1月23日の就航では、マカオの(1日3便)を筆頭に、ベトナムのダナン(1日2便)、マレーシアのペナン(1日1便)に就航しました。春節を狙ったリゾート地への就航です。
この後ラウンジに立ち寄りますが、ラウンジが想像のはるか上を行っていて感涙しました。その様子はこちらをご覧下さい。
まさかイジメられてる?
割り当てられたスポットはB1R。まかさバス?フルサービスキャリアなのに?しかもLCCがよく使うB1Rゲート(いわゆるバスラウンジ)?と何だか妙な感じ。チャイナエアとエバー航空が牛耳る桃園で新規就航するとなるとこういう扱いを受けるのか?と大人のイジメみたいな嫌な雰囲気を感じざるを得ませんでした。
でも、航空ファン的にはバスボーディングってむちゃくちゃ魅力的なんですよ。機体を地上からガラスを隔てずに撮影できるのですから。特に桃園国際空港はガラスが汚く色が付いていたりしますので、初搭乗でバスボーディングは理想的だったのです。
バスもSTARLUXのロゴ入りのバスですね。こちらビジネスクラス、子供連れ等の優先搭乗者専用バスです。
バスから見えましたー!初めて見るスターラックス。意外にも地味ですね。深い緑にも見えるダークグレー(Iron Dark)とゴールド(Rose Gold)、茶色(Earth Brown)でスッキリとまとめられています。
初めて見るスターラックスを、地上から、そして生で見られて大興奮!見ての通り機材はエアバスA321neoです。当初は3機での稼働になります。
タラップにもSTARLUXのロゴが書かれており、さすが元エバー航空経営陣が作った会社という感じがします。細かい部分にもこだわり抜いている感が見られますね。
ナローボディでもフルフラット
台湾のエミレーツを目指すスターラックスとは一体どんなエアラインなのか。そう宣言する以上、普通のエアラインとは一線を画しています。ナローボディ機(単通路機)でもビジネスクラスはフルフラットを導入。狭いビジネスクラスの多い737シリーズ、A320ファミリーでこのフルフラットは珍しいです。長めのナローボディ機A321でありながら2-2の2列で8席しかありませんが、占有するスペースを考えると仕方がないのかも知れませんね。
僕の座席は2A。1列目でありながら「2」番目です。どういう意味ですかね?
こちら2列目。グレーを基調にゴールドをアクセントにした落ち着いた色合いです。これが高級エアラインの正しい姿な気がします。
777や787で最近見られるようになった斜め前向きの2列隣同士仕様の座席を採用しています。このタイプは隣がいながらもプライベート感がありますね。
フルフラットにした状態。
ひじ掛けも下がりますので肩回りはスッキリ。
隣の席との間にはセパレータが付けられており、プライバシーも保たれます。格子模様が素敵です。
機内誌関係はサイドのポケットに入っています。
こちらkiannという名前の機内誌と免税品カタログ。ちなみに機内誌を持って帰ってくるのを忘れました。大失態…。機内誌って情報源として大事なんですよね。
こちら安全のしおりとゲロ袋です。
窓側には物入れの奥に電源関係のポートがあります。ただ、この位置はなかなか手が届きにくいです。特にヘッドフォンのプラグを差すのは少しやりにくいです。
ヘッドフォンはノイズキャンセリングのもの。ケースにもSTARLUXのロゴが描かれていて高級感があります。
ウエルカムドリンクはトロピカルなスムージーでした。
そして子供用と思われるギブアウェイ(バルーンとトランプ)をもらいました。
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エコノミークラスも全モニタ装備
今や当たり前ですが、エコノミークラスにもちゃんとモニタが付いており、ナローボディ機でありながらも快適な旅行ができます。ラグジュリアスエアラインですが、さすがにエコノミークラスは普通の3-3配置です。
うすうすシートに折れるヘッドレストも付いています。
モニタは10.1インチのものを採用。ひと昔前のエコノミークラスを考えると随分と画面が大きくなりましたね。
ナイショの話ですが実はガラガラでした。武漢肺炎の影響なのか、まだまだ台北での地名度がないのかわかりませんが、春節期間初の土曜日の割にマカオ行きは激しく空いているのでした。
SF映画風のセーフティデモ
ビジネスクラスのモニタはとても大きく15.6インチ。まずはWELCOME ONBOARD画面からスタート。またメニューの内容(概要)後から紹介します。とりあえずセーフティデモから。
セーフティデモは宇宙をテーマにしたアニメもの。なかなか凝っていて面白かったです。
最後はスペースシップが登場。何だかSF映画の世界でした。
新エンジンで軽々離陸
台北発マカオ行きJX201便は7時25分発。定刻にプッシュバックしました。離陸待ちもほどほど。前にエバー航空、べトジェットと続きました。かなり低めのハイバイパスエンジン音を響かせて軽々と離陸しました。
この日はすぐに雲に入ってしまう空模様。
朝陽がまぶしいですね。台湾の山々も美しかったです。
ウィングレットにもさりげなくスターラックスカラーが施されています。
「これがエアバスA321ですか?」と思わせるような大型エンジンLEAP-1A。A321はトラブル中の737MAXの対抗馬ということで、737MAXの生産中止を尻目に今一番売れている機体です。
豪華メニューブック
最近のエアラインでは簡略化されることの多いメニューブック。近距離路線では配られない場合だってあります。そこをあえて充実させているのがスターラックス。高級感バリバリですね。表紙からして凝ってます。この他、ワインリストも別でありました。
まずはアジア料理から。「コンテンポラリーアジアンロングテール台北」と称されています。最初ロングテイルって何だろうと思ったのですが、このメニューはミシュランガイド料理店「LONGTAIL」のLam Ming Kin氏が手掛けているため、こんな名前が付いているようです。訳せば「現代アジア料理 by LONGTAIL台北」みたいな感じですかね?
まずはカクテルまたはモクテル(ノンアルコールカクテル)から。そしてメイン、デザートです。メインはメニューを見ただけでは全くわかりませんでした(汗)。
続いて洋食。
Exclusive Internationalと称された洋食は、クリームパンプキンスープ、パン、メイン、フルーツ。メインは焼きサーモンとオムレツからのチョイス。朝食にピッタリなメニューです。
アルコールはかなり豊富。クルーイチオシはオリジナルカクテル?のSTARLUX Limited:Sci-fi Galaxy(サイファイ ギャラクシー)だそうです。でも僕が「お酒は苦手でして…。」と言ったところ、「じゃあ写真だけでもいかが?映えるわよ」と言って作ってくれました。それはまた後ほど。
ソフトドリンクもモクテルが充実。他のエアラインにはないスペシャルな感じがします。
こちら引き続きのページのお茶のセレクション。ウーロン茶紅茶など、様々なお茶を取り揃えています。
コーヒーはillyコーヒー。そしてその他、スペシャルセレクションとして、キャロットジュース(ラウンジにあり)と、もう一つは、、、何だかわかりません。
最後のページには機内食はオンラインで注文できますという案内が、後ろの列に行くほどなくなりますので、事前オーダーできるのは嬉しいですね。All cabinと書いてあるので、ビジネスクラスだけではなくエコノミークラスでも有効かと思われます。
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ミシュランシェフの朝食を
メニューブックの紹介を一通りしたところで、本当の機内食の紹介。こちらミシュランシェフLam Ming Kin氏監修のアジアン料理。大雑把に説明すると焼き豚(ちょっと隠れて見えない)、パンに付けるパテ、そして人参、大根、キュウリの和え物と言う感じ。そして白いデザートはパンナコッタです。
パンにパテを付けるんですがこれがまた美味しい。元々パテって好きじゃないんですが、このパテはそんなに脂っこくなくて控えめな感じだったので全部食べ切ることができました。実はラウンジでたらふく朝ご飯を食べた後だったので、少なめの機内食がありがたかったです。
「お酒は苦手でして…。」と言ってオーダーしたモクテル。レモン系のノンアルコールカクテルですが、メニューブックを見てもそれらしきものがないんです。勝手に作ってくれたんでしょうかね?
こちら写真用に作ってくれたカクテル(お酒)。Sci-fi Galaxy(サイファイ ギャラクシー)という名前です。写真用にカクテルを作ってくれるなんて、もったいない気がしますが、「映える」が流行る時代だからこそのサービスですよね。ちなみにこちらのお酒、なんとレシピももらいました。ジンベースです。
充実の機内エンタメプログラム
機内エンターテインメントシステムは非常に充実しています。こちらは映画、日本の映画もそこそこあります。
ミュージックも日本人でいくと中島美嘉とかケミストリーとかがありました。
こちらがPeter White氏監修のSTARLUXのミュージック。乗ったときに機内BGMとして鳴っているという話のようですが、全く気付きませんでした。
こちらがマップの3Dビュー。もちろんタッチスクリーンで角度を自由に変えることができますし、違うモードも豊富にあり飽きません。
こちらは飛行経路バージョンで全体を表示できます。
こちらは飛行情報画面。
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随所にホスピタリティとこだわりが
スターラックスに乗って感じたことはたくさんあります。数分ですがフラットにして寝てみました。他のエアラインと違うのはふかふかの毛布。ビジネスクラスでも毛布がペラペラのことがありますが、スターラックスは違いました。
ミールサービス中揺れが酷くて、「温かいものの提供は中止します。」と言われていたのですが、揺れが収まったところで、事前に頼んでおいたコーヒーを出してくれるところがさすがでした。写真用にお酒を作ってくれたのもそうでしたが、クルーのホスピタリティは素晴らしいです。各社見習わないといけませんね。
最後のサービスとして、グミを持って来てくれました。キャンディーではなくグミ。ん~他との差別化と言うか、非常に強いこだわりを感じますね。
そしてベルトサイン点灯前にちゃんとトイレに行くのでした。トイレも茶系と木目調でまとめられて綺麗でした。使用感もまだ全然ないですしね。
短すぎたフライト
台北からマカオまでは約1時間40分のフライト、ハッキリ言って物足りません。間もなくマカオ。
マカオ空港はランウェイだけが海上に出ているちょっと変わった空港。タイガーエアがいました。
マカオを訪問するのは初めてですが、随分と小さな空港の印象でした。エアマカがオたくさんいるのは当たり前。香港の隣にありながら、その小規模感には驚きました。
最後に全員が降機した後、キャビンクルーに記念撮影をお願いしたところ、快く受けてくれました。変な方向を向いているのは、別のスマホで写真を撮っているから。「写真ダメ!」と拒絶されるエアラインが多くなった昨今、こうやって皆さんで集まってくれるのは本当に嬉しいことです。アポなし取材でこのサービスはなかなかありませんから。
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STARLUXはやっぱり地味だ
搭乗時は早くタラップを上らないと行けないために、じっくり見ることができなかったスターラックスの機体ですが、マカオに到着して出発するときにちゃんと見ることができました。プッシュバックを開始。コックピットガラス周りの黒い縁取りがネオな顔ですね。
例えばエティハドとか、塗装から豪華な感じがしますけど、このSTARLUXは地味です。高級路線なのに外見は本当に地味なんですよ。LCCか?と思ってしまうほどです。そのギャップに萌えてしまいました。
STARLUXはサステイナブルか
台湾の新興フルサービスキャリア、スターラックスに乗った感想を書きます。率直に言ってこのエアラインはすごいです。フルサービスキャリアの中のフルサービスキャリアという感じ。最近感じる「ここ、コスト削減してるなー」というケチくささがありません。しかしそれ故不安にもなります。この状態でちゃんと経営が続くのかと。まぁそれはそのうちわかるとして、さすが元エアライン(エバー航空)の経営者が作ったエアラインだと思いました。参入/撤退の激しい台湾のエアライン業界ですが、これでエバー航空、チャイやエアを逆転していったら本当にすごいことです。
上に全て書きましたので今さら何も言う必要はないのですが、良かったことの一つがナローボディなのにフルフラット装備なこと。これは非常に「乗る気」になります。普通、737、A320シリーズのビジネスクラスなんて酷いものですから。
さて、スターラックスがいかに素敵なエアラインかをお伝えしてきたわけですが、この人手不足の時代、燃料高騰の時代に過剰品質感もあり、今後スターラックスが続いて行くのか(サステイナブルか)心配です。新しいエアラインは知名度やロイヤリティ(マイレージ)の問題があり、軌道に乗せるまでに非常に時間が掛かると思いますが、何とか拡大して行って欲しいと思うばかりです。
そして今年中に日本にも就航するとか。当面はA321なので地方空港を狙ってくるはず。就航の日が本当に楽しみですねぇ。訪台の際には是非新しい翼、スターラックスを!
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