イケてる航空総合研究所

ビジネスクラス搭乗記、弾丸旅行のノウハウ、マイルの使い方、貯め方、航空事故の真相などなど。

着陸直前にいきなり急上昇するゴーアラウンド(着陸やり直し)って何が理由なんですか?

まさかのゴーアラウンド

先回記事でお送りしたデルタ航空A330neoのプレミアムセレクト搭乗記。雲に突っ込むところまでお送りしたんですが、その後に大ハプニングがありまして別記事を立てました。


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雲に突っ込んだ後もほとんど視程なし。空港は霧に包まれていたんです。でも飛行機は最新テクノロジーの塊。こんな霧くらいならへっちゃらなんです。電波による誘導によって視程ほぼゼロでも着陸できるのが現代の飛行機というものなんですよ。

しかーし!


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着陸するかと思いきや、いきなりエンジン出力が大きくなり機首が上がって急上昇!

そうゴーアラウンドしてしまったのです(意味は後述)。


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眼下にタコマ空港の滑走路を望みながら上昇して行くA330neo。実は僕、ゴーアラウンドは人生初の経験だったんです。離陸中止、緊急着陸は経験したことがありますが、ゴーアラウンドは初めてでした。

初めての経験に大興奮!


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ゴーアラウンドをした機体は、離陸した飛行機のように離陸上昇経路もどきをたどり、ターンをして再度着陸経路に戻ります

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ゴーアラウンドとは

ここで「ゴーアラウンドとは何か」ですが、日本語で「着陸復行(ちゃくりくふっこう)」と訳します。文字通り着陸やり直しという意味です。

どんな時に行われるかと言うとこんな時です(あえて厳密な表現を欠いています)。

  • 着陸に危険を感じた時
  • 滑走路が見えないとき
  • 管制官から指示されたとき

大別すればこれらいでしょうか?

着陸に危険を感じた時

特に多いのが、着陸に危険を感じた時。これは強風の時に多く発生します。特に横風(クロスウィンド/Cross Wind)。

Youtubeを検索すると台風接近時のゴーアラウンドシーンがたくさんアップされていますが、横風が強い時、特にガスト(Gust)が強い(風向風速が激しく変わる)時には、操縦が非常に難しくなります、急に横に流されたり、急に上昇/下降したりします。

一番怖いのがウィンドシアと呼ばれる状態で、強い向かい風だったのが低高度で急に追い風になる現象です。着陸直前に急に追い風になると何が起こるかと言うと、風に対する速度が落ちるため揚力を急激に失います。最悪の場合、滑走路に叩きつけられて事故になることもあります。

パイロットは「このままでは安全な着陸できない」と判断したら、躊躇なく着陸を諦めて上昇姿勢に移ります。基本的にゴーアラウンドは接地直前で行われますが、接地してからでも再び上昇させることがあります。接地点が滑走路の奥の方になり、滑走路内で停止できないと判断される場合です。

また、滑走路上に別の機体や車両を発見したとき鳥の大群を発見した時などもゴーアラウンドを行うシチュエーションの1つです。滑走路上に何か人工物を発見するというのは、管制ミスの場合と相手のミスの場合の両方がありますが、いずれにせよ、衝突する危険を回避するために着陸を中止します。鳥の大群の場合はバードストライク(機体やエンジンへの鳥衝突)の危険性がありますので、それを回避するために着陸を諦めます。

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滑走路が見えないとき

近年の航空機は技術の進歩により、電波で誘導する装置が付いている滑走路の場合は、設備や装置の精度にもよりますが、完全な自動着陸ができる仕組みが整えられています。ただし、基本的にはある高度まで降下した時、滑走路が目視できることが条件です。

計器着陸装置(ILS:Instrumental Landing System)の精度によって、滑走路が見えないといけない最低高度(決心高[DH]<電波高度>、または決心高度[DA]<気圧高度>という)が決まっておりそこまで降下しても滑走路が見えない場合は、ゴーアラウンドしなければなりません。

最も精度のいい装置が取り付けられている空港で、機体や機長の条件が揃えば、視程ゼロでも着陸が可能です。しかし、着陸できたとしても、視程がなくてはその後駐機場まで行けないため実際は行われなれません。これがILSアプローチ・カテゴリーIIICと呼ばれるものです。

霧の時、パイロットは最低高度まで降下して滑走路が見えたら「着陸(Landing)」を宣言し実際に着陸操作、一方、見えなかったら「ゴーアラウンド」を宣言しゴーアラウンド操作を行います。横風着陸とは若干異なり、白黒付きやすい判断です(一瞬の判断なので非常に難しいと思いますが)。

今回、シアトルで体験したゴーアラウンドは、最低高度まで降下したものの滑走路が見えなかったためにゴーアラウンドをしたのではないかと想像ができます。かなり視程が悪かったからです。

管制官に指示された時

こちらは最もわかり易いです。例えば、先行機が滑走路上でトラブルを起こした場合や自分が着陸しようとするタイミングで先行機が滑走路を抜けきっていない場合などは、管制官がゴーアラウンドを指示したりします。また、他機が誤って滑走路を横断したりした場合も管制官からゴーアラウンドを指示したりします。

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今度こそ行けるか

ゴーアラウンドは、上述の通り天候が悪いときによく起きることなので、何度もゴーアラウンドするのはよくある話です。何度もトライしてやっと着陸できる時もあります。視程が良くならないまま、または横風が強いまま、そんなときは2~3回のゴーアラウンドはザラです。これ以上トライしても着陸が無理だと判断されると、違う空港へ着陸することもあります。(ダイバートと言います)

今回体験したゴーアラウンドでは、上昇直後に眼下に滑走路が見えたため、着陸地点付近のみ視程が悪かったと思われますので、そんなに心配は要りませんでした。部分的にできる雲(霧)の位置が悪かっただけだからです。


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さっき見たシアトルダウンタウンを再度通過します。ゴーアラウンドをすると大抵はアプローチ機の最後尾に付けられるため、時間が掛かるのが通例ですが、この時はトラフィックが少なかったのか、ぐるっと一回りしたらすぐにファイナルアプローチコースに入ることができました。


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この日この時間は、ポツンポツンと雲(霧)が地面に置かれているような状態。この写真のように晴れている部分もあれば、完全に真っ白な部分もあるという感じでした。

高度はどんどん下がっていき、緊張の瞬間を迎えます。


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視程は悪いですが、1回目ほどではありません。これは行けると確信しました。

ドスン!

と衝撃がお尻に伝わってきました。無事着陸。1度目とは異なる滑走路に着陸しました。霧の状況を考慮しての判断でしょうか?


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着陸してみると反対の滑走路端はすごく晴れているという状態で、なんだか恨めしい天気でした。

太平洋を8時間飛んだ後、やっと地上に降り立てると思っているところにゴーアラウンドはうんざり、なんて話もあるんですが、僕としては初めてのゴーアラウンドを体験できてとても満足だったのでした。

生きて帰れるのであればとにかくレアな経験は大歓迎です。

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ゴーアラウンドは恐れるべきか

最後に、このゴーアラウンドに遭遇した場合、「えっ、何なの?怖い!」って思ってしまうんですが、そう思うべきかについてはちょっと事情が複雑です。

まず、ゴーアラウンド自体については恐れる必要はありません。むしろ安心すべきでしょう。何故なら着陸する方が危険と判断したからです。「あー、着陸しなくてよかった」と思って下さい。

しかしその原因に思いを馳せると真逆になります。天候が理由の場合は恐れるべきかも知れません。何故なら、次の着陸トライでも着陸に躊躇するほど天候が悪いかもしれないからです。視程が悪い状態、強風が吹き荒れる状態では着陸に失敗する可能性がないわけではないからです。

何とでも目的地に乗客を届けるという義務を果たしたいパイロットには「降りたい」という心理が働くでしょうから、多少危険を伴っても降りるという決断をするかも知れません。

先行機が着陸しているのに自便がためらっていたら何となく負けたような気持になるかも知れません。(エアラインの規定、パイロットの資格によっては先行機が着陸しても自機が着陸できない場合がある。)

そんな事情がありますので、やはりゴーアラウンドをするような状況は、晴天で風が弱い状態に比べたら何らかの危険が伴っていると考えるのが普通でしょう。

ただ、そこはパイロットの判断を信じて下さい。数回のトライを行っても着陸できない場合は目的地を変更する場合もありますが、それは安全を考えた判断ですし、数度のトライで着陸できた場合は、パイロットが基準に従い着陸できると判断したからです。

過度に恐れず、しかし普段よりも危険性は増しているということを忘れずに。それがゴーアラウンドというものだと僕は考えます。

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