いきなりコニーな違和感
シアトルと言えばボーイングの城下町。そしてシアトルにはボーイング博物館ことMuseum Of Flight(ミュージアムオブフライト)があります。世界の航空博物館の中でもここはスミソニアン航空博物館と並んで1、2を争う有名なそして充実した航空博物館じゃないでしょうか。航空ファン、特に旅客機ファンなら死ぬまでに一度は訪れたいところですよね。それではさっそく紹介していきましょう。
入口にはロッキードL-1049、スーパーコンステレーション(コニー)が…。いきなり、
なんでコニー?
って思ってしまいました。(コニーはボーイング機ではなくてロッキード機)
そう。ここは別に「ボーイング博物館」というわけじゃないんですよ。名前もMuseum Of Flightですので、名前のまんま航空博物館です。ただし、中にはBoeingストアがありますし、コンテンツも場所柄ボーイングに偏っているので、やはり「ボーイング博物館」と言っても過言ではないんですけどね…。
入館料は大人25ドル。ワシントンD.C.にあるスミソニアン博物館が無料であることを考えると、ちょっと高いと感じる人がいるかも知れません。
その前にどこにあるのか?
さて、中に入る前にこの博物館がどこにあるかを解説しておきましょう。下のマップを見て下さい。Museum Of Flight はBoeing Fieldに隣接しています。Boeing Fieldはデリバリーできない737MAXがズラリと並んでいることでニュースになっていますが、正式名称をキング群国際空港と呼ぶ小さな空港です。なんて言ってもあまりピンと来ないかと思いますので、地図を見てシアトルの地理を勉強してからにしましょう。
こちらがシアトルの全体図。まず僕らがシアトルに到着するときに到着するのが「シータック」と呼ばれるシアトル・タコマ空港です。シータックはシアトルダウンタウンの南に位置しています。
近くに737の最終組み立てを行うレントン工場があり、Museum of Flightはレントンの「レ」の字の左上くらいにあるボーイングフィールドの滑走路の隣にあります。
シータックとレントンとボーイングフィールドの位置関係を表すとこんな感じです。シータックからMuseum of Flightは結構近いです。空港でレンタカーを借りて、シアトルダウンタウンに行く前に寄るのがベスト、または帰りに空港でレンタカーを返す前に寄るのがベストかと思います。
衛星写真で見るともっとよくわかりまして、Museum of Flightはボーイングフィールドの南側滑走路エンドの西側に位置しています。
ちなみにシアトル全体の地図を見ると、シアトルダウンタウンの北に「エバレット」という地名がありますが、この辺りにあるのがあの有名なエバレット工場、空港自体は「ペインフィールド」と呼ばれています。
エバレットがボーイングの大型機製造(747、777、787、767)のメイン工場となります。エバレット工場近くにはFuture of Flightと呼ばれるもう一つの博物館(いわゆるギャラリー)がありますので、時間があれば是非そちらも訪れてみるとよいかと思います。
また、エバレット工場周辺を解説した記事はこちらです。
ちなみにレントン工場はこちらの記事をご覧下さい。
全て読めばBoeingの工場の全てがわかります。
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いきなり圧巻の景色
飛行機の展示ゾーンに入ると、たくさんの飛行機が迎えてくれます。ベアメタル(金属むき出し)のUS Airways737の胴体前部カットが萌えますね。あと天井から釣り下がったDC-3も。美しい楕円翼を下から眺めるこができます。地上に置かれている超音速偵察機ブラックバードなんかもヘンテコリンな形で見る価値ありです。
このゾーンでは上記の飛行機くらいがメインになるかと思いますが、ボーイング好きとして、ひとつだけ忘れてはならないのが、モデル80(エイティー)と呼ばれる古い飛行機。3発の複葉機です。
Boeing Air Transport(ボーイング所有の航空会社)が初めて郵便&旅客便の定期便を就航させた機体であり、初のキャビンアテンダントが搭乗した機体です。当時、キャビンアテンダントは皆、看護婦(看護士)さんでした。
それではピカピカの737に入って見ましょう。
US Airは一時期スターアライアンスに所属していましたが、経営状況が悪化しワンワールドであるアメリカン航空に吸収されてしまいました。
コックピットも見ることができます。737MAXのコックピットとは大違い。高度にハイテク化されたコックピットがいいのか、こういったアナログ式のコックピットがいいのか。これを語り出すと日が暮れて夜が明けるのでやめておきますが、アナログ時代では今より圧倒的に事故が多かったんですよ。一概にMAXが悪いとは言えないのです。
機内にも入れます。
2-2配置のファーストクラスが迎えてくれます。中は座れますので休憩にはもってこいです。
そしてぐるんと回って展示場を出ます。
こちら側から見ると、みんな同じ方向を向いていて気持ちがいいですね。
屋内の大部屋で旅客機が展示されているゾーンはほぼこれだけです。あとは色んなテーマごとにお部屋が分かれています。
ボーイング初の工場Red Barn
次はボーイング黎明期へとご案内します。こちら、ちょっとピンボケしちゃったんですけど、Red Barn(レッドバーン)と呼ばれるボーイング初の工場の1つ(Buiding No.105建屋)です。ここからボーイングの歴史が始まりました。
木造の建屋の中で作業をしている様子が展示されています。
僕が興味を持ってしまうのはやはり操縦系統。昔の操縦系統はこんな風になっていた、というのがよくわかります。この時737MAXの事故直後とあって、操縦系統には何故か異常な興味が向いてしまいますね。
こちら昔のボーイングロゴ。そこにいたおじいちゃんスタッフに「これがBoeing初ロゴ?」と聞いてみたんですが、「初めてかどうかはわからないけど古いやつだ」と教えてくれました。
こんなロゴもあります。ロゴの変遷も面白いですね。
2階に上がると少し近代に。Boeing707の原型367-80(ダッシュエイティーと呼ぶ)のモデルが。このダッシュエイティーから生まれた707からボーイングの「7」で挟む現代旅客機の歴史が始まりました。
また、初期の旅客機がこんな風にパネルで紹介されています。写真はハワイを飛行するノースウェストの707です。
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戦争の飛行機たち
航空機の歴史は戦争の歴史でもあります。戦争が飛行機の性能を高め、そしてボーイングなどの航空機製造業の利益を増やし、会社を大きくしてきたと言っても過言ではありません。こちらは第二次世界大戦の飛行機のゾーンです。
General Motorsも飛行機を作っていたんですね。ちょっとこの辺りになると「わからない…」感が強くなります。古すぎて僕らの世代にはあまりグッと来ないです。
でもこれは個人的にグッときますね。LINK社が作った世界初のフライトシミュレータLink Trainerです。遊園地の子供向け乗り物にしか見えませんが、そんなオモチャみたいなものからシミュレータの歴史が始まったかと思うととても感慨深いです。
今は総合航空宇宙メーカーのL-3に合併しL-3 Linkとなり、ついにはThales(タレス)の民間部門も買収して旅客機シミュレータの大手になっています。
続いて第一次大戦の飛行機のゾーンに入りました。もうついていけませんね。なのでこの辺りはちょっと割愛…(汗)。
橋を渡って道路の反対へ
最初に入館したところから道路を挟んで向こう側にも展示エリアがあります。歩道橋で繋がっているので、そこを歩いて行きましょう。歩道橋を入るとまずはSpace Galleryと呼ばれる宇宙館が現れます。
スペースシャトルのFuselage Trainer(胴体訓練装置)があります。一瞬「おっ」って思うんですけど、いわゆるレプリカなので本物のスペースシャトルを見たときのような感動はないです。スミソニアン博物館に展示された本物のスペースシャトルのリアルなダメージ感を知っていると、「ふーん」くらいで通り過ぎちゃうかも知れません。
こちらのソユーズは燃え方が萌えますね。やはり僕は本物志向です。
天井からはスペースシップワンが吊られていました。これから宇宙開発も民間の時代。と言われつつも、やはり民間が宇宙へ飛び立つのは資金的にも技術的にも難しいのかなーと思っています。
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旅客機の王者たち大全
宇宙館から一歩外に出ると、「これぞMuseum Of Flight」、「これが見たかった!」というところに出ます。回り方としては一番最後になっていますから、最後に一気に感動が押し寄せて、脳内がクライマックスを迎えて終了という最高の演出がなされています。まるで映画みたいな終わり方。いやーMuseum of Flightさん、やってくれますねー。こちらがレイアウト。なんて見る必要ありません。目の前の飛行機達を見ましょう。
方向を示すやつが、なんか可愛くて…。
ここに民間機が何個見えますか?全部名前を言えますか?これ、ホント、各世代の旅客機の王者を集めたようなラインナップで抜群に楽しめます。ここは、飛行機マニア、いや、旅客機マニアにとっては「セント(St.)」を付けたくなるような「聖地」です。
ここにあるマニア垂涎の機体は747の初号機、787の試験3号機、707エアフォースワン、ユナイテッド航空の727初号機、737の試作機などでしょうか。これだけの歴史的な航空機が展示されているのはMuseum of Flightしかないと僕は思っています。
上の写真をどこから撮っているかと言うと、コンコルドの上からです。ここにはBritish Airwaysのコンコルドが展示されています。
ちょっと視線を横に向けると旅客機ではりませんが、B-29も置いてあります。やはりB-29はアメリカが誇る爆撃機なんでしょうね。
こちらの地上展示は以下の記事で独立して扱っていますので是非ともご覧下さい。
カフェがまた面白い
館内には軽食が食べられるカフェがあります。カフェWINGという名前なんですが、普通のカフェと思いきやメニューが全部航空系なんですよ。サンドイッチならば、「ライトフライヤー」、「ブラックバード」、「トムキャットツナ」、「P-51ムスタング」など。サラダならば、「セスナチキンシーザー」、「スピリットオブセントルイス」とか、「727ビーガンサラダ」、「スーパーコンステレーション」とか。もう見ていて悩んでしまうくらい。
中はこんな風に結構広いです。休日の超お昼時でしたが楽勝で座れました。博物館自体も全然混んでまいせんのでご安心を。
カフェWINGとあり、天井にはWINGのリブが埋め込まれています。
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悩んだ挙句、僕はB-52ボンバーを選びました。爆撃機は本意じゃないんですが、これ以外食べたいものがなかったんですよね。メニューの名前は魅力的なんですが、食べたいものじゃないとさすがにオーダーできません。
B-52ボンバーはチリドッグ with チェダーチーズ。「これぞボンバー」みたいな感じのが出てきて満足です。
サラダは「スピリットオブセントルイス」を選びました。ボンバーだけじゃ味気ないので、ちょっと洒落た名前のやつを選んでみました。
ボーインググッズが手に入ります
出口(入口)にはお土産屋さんがあります。外から見たところ。
中ももっとたくさん取れば良かったんですが、何となく遠慮しちゃいました。ダサいものから洒落たものまでとにかく色んなボーインググッズが揃っているので楽しめますよ。ヒコーキマニア友達へのお土産は是非ここで選んで帰って下さい。
REMOVE BEFORE FLIGHTって書いたキャミソール。
いや~ん!
でしょ。飛ぶ前にはこれを脱がせてね。なんて言われたら飛びたくなっちゃいますよね。こんなジョークグッズを置けるのもアメリカらしくてよいと思っちゃいます。
死ぬまでに一度は訪れたい場所
駆け足でMuseum of Flightを紹介してきましたが、本当にここは楽しめます。博物館って古い飛行機ばかりで楽しめないところも多いですが、ここは最近の飛行機もたくさん展示されていますし、ボーイングの歴史を学べますので、旅客機ファンであれば絶対にハマります。707や727なんて見たことも乗ったこともないという若い世代の方はわからないかも知れませんが、そういう方々でも747の初号機や787の試験3号機には感動できるでしょう。
冒頭にも同じことを書きましたが、死ぬまでに一度は訪れたい航空博物館があるとすれば、ここMuseum of FlightとワシントンD.C.のスミソニアン博物館じゃないでしょうか?
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